はじめてのDAO【前編】|基本概念とその歴史と現状

目次

  • 前提
  • 1.DAOとは何か
  • 2.DAOの歴史と現状|その歴史からその特徴と必要性を読み解く
  • 総論

前提

「はじめてのDAO【前編】【後編】シリーズ」ではDAO(自律分散型組織)をこれから学びはじめたい方、ある程度知っているけれど大まかな全体像や役割を理解したい方、どうやってつくるのかを知りたい方を対象に「1.DAOとは何か」「2.DAOの歴史と現状」「3.DAOの類型」「4.DAOの作り方」を順に解説します。
今回のはじめてのDAO【前編】では「1.DAOとは何か」「2.DAOの歴史と現状」を解説し、DAOという概念を大まかにつかんで頂くことを目的にしています。別途レポートする【後編】は「3.DAOの類型」「4.DAOの作り方」を解説し、DAOの概念がどのような形で具現化されているのかを知る応用篇となります。
本レポートはDAOを知ってもらうための基礎講座シリーズとして無料公開しています。HashHub Researchを無料会員登録いただければ全文ご覧いただけます。
またDAOは発展途上の概念ですので、本レポート内容は不定期にはなりますがアップデートしていく予定です。

1.DAOとは何か

DAOとはDecentralized Autonomous Organizationの略称であり、邦訳では自律分散型組織と呼ばれます。DAOの読み方は「ダオ」が一般的ですが、「ディー・エー・オー」とアルファベットをそのまま発音する場合もあります。
自律分散型組織とあるようにDAOは複数の主体が「分散的」に関与しながら「自律的」に機能する「組織」です。
少し掴みづらいかと思いますので、とりあえず枝葉の特徴は横に置いて既存の概念を引用してDAOを理解しましょう。DAOというのは大まかにいえば既存の「組織」の延長線上にあるものです。ですので、まず組織とは何か、何のために組織化するのかという前提となる考えを最初に説明します。
組織化の目的には諸説ありますが、その目的の一つに市場における取引コストの削減が挙げられます。ここでいう取引コストとは以下のものを含みます。
  • 取引相手を見つけるコスト
  • 交渉コスト
  • 合意形成し履行するコスト
異なる当事者を市場に集めてこれらの取引を行うことは、時として複雑化や不確実性を招くため効率的ではありません。このことからも市場における信頼されていない当事者間の取引コストは増加すると考えられるため、組織化による取引コスト削減がなされます。そしてこの取り引きコストの削減は詰まるところ「契約」によってなされるものです。
つまり、組織とはこれらのコストを削減することを目的とした「契約の集合体」であるということが言えます。
DAOもまた組織ですから、その延長線上で捉えると同じように「契約の集合体」であると言えます。そして既存の組織との大きな違いはこの「契約」が紙とペンとハンコでなされるものではなく、より簡素化された「スマートコントラクト」を契約方法として採用している点にあります。
ですので、最もピュアなDAOとは「スマートコントラクトの集合体」と言い換えることができます。
※スマートコントラクトは大まかに表現すると、ブロックチェーン上で契約を自動的に実行する仕組みのことです。詳しくはこちらを参考ください。
DAOは「スマートコントラクトの集合体」であることを本節では示しました。次節ではこのような仕組みを持つDAOにどのような特徴があり、どのような必要性が見出されたのかを解説します。
【まとめ】
  • 最もピュアなDAOとはスマートコントラクトの集合体である
【より深くDAOとは何かを学びたい方向けコンテンツ】

【コラム①】「スマートコントラクトの集合体」と「従来の組織形態」の主な違い

「スマートコントラクトの集合体」としてのDAOと「従来の組織形態」の違いはいくつか挙げられますが、大きな違いは財務状況の表現方法にあります。
従来の組織形態、例えば上場企業(株式会社)の財務状況は、年一回の有価証券報告書、3ヶ月ごとの四半期報告書という形で開示された情報を通じて私たち一般人でも閲覧することができます。非上場企業には決算書等の開示義務が課されていない場合が多いですが、資金調達をする場合などには投資家から開示を求められることもあります。
一方のDAOの財務状況はパブリックブロックチェーン上のトランザクション履歴がそれに該当し、こちらもまた私たち一般人でも閲覧することができます。
非上場企業の場合を除いて比較すると、ともに一般人が財務状況を確認できるという点では違いがありません。
ただし、上場企業の財務報告書がある時点でのスナップショットであるのに対して、DAOの場合は財務状況が(ほぼ)リアルタイムにブロックチェーン上に反映されていることは特筆できる点です。
加えて、それぞれの財務データが何を持ってその真正性を担保しているのかも大きな違いの一つです。
上場企業が開示する財務報告書は自己申告であり、その真正性は独立した監査法人の信頼性に依存します。一方のDAOはスマートコントラクトを通じてオンチェーンでトランザクションを起こしますので、それを反映したトランザクション履歴の真正性は該当するブロックチェーンの信頼性に依存しています。
  • 株式会社の財務諸表|自己申告+独立監査法人
  • DAOの財務データ|パブリックブロックチェーン
この点だけを見ると「信用コスト」の発生源が異なるということがわかります。言い換えると検証先の違いです。株式会社が「独立監査法人の信頼性」を検証先としているのに対して、DAOは「パブリックブロックチェーンの信頼性」を検証先にしています。コストの如何もありますが、重要なのはその検証先の信頼性が影響する範囲の違いにあります。DAOは基盤となる「オープンソース」のブロックチェーンとスマートコントラクトの信用を借用することになるので、例えスタートアップであったとしても「グローバル」に資金調達できる可能性があり、故に「草の根的なインターネットコミュニティ形成」が行いやすいという特徴があります。ただし「ブロックチェーン=トラストレス」は「ブロックチェーンは信用を必要としない」を意味するわけではないことには注意が必要です。
これらの点を踏まえて、DAOは従来の組織形態と比較して「透明性が高い」組織形態と表現されます。
とはいえ、パブリックブロックチェーン上のトランザクション履歴は何かしらの形に加工し直さないと財務状況を読み取りづらい部分もありますので、この点の表現方法の工夫は今後必要になるでしょう。この点でDeFi Protocol DAOであるYearnが2021年Q1の四半期報告書を作成して開示したことは興味深い事例と言えます。
これ以外にもDAOと従来組織形態の違いはありますが、この点は【コラム③】何がDAOの解釈を困難にさせているのかで改めて後述します。

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