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Web3の片鱗(3)|あらためてDAOとは_未来の合意形成に特定のインセンティブを持ち込むとは(余談:新たな社会創造に必要な3要素とトークンインセンティブ設計)

2022年06月29日

目次

  • 未来の合意形成に特定のインセンティブを持ち込むとは
  • 混乱が生じるのは2.に市場原理を求めるから
  • 余談その1|それは持続可能ではなく自走可能である
  • 余談その2|新たな社会創造に必要な3要素とトークンインセンティブ設計

未来の合意形成に特定のインセンティブを持ち込むとは

※「Web3の片鱗」シリーズはレポートではなく、Web3界隈の断片的な気づき(結論のない、so,what/だから何)を記したエッセイです。

我々がDAOだと形容しているものは①市場原理で成り立つハイパーストラクチャーとしてのDAOなのか、それとも②民主的な議決を必要とするプロシューマー型DAOなのかという問いが界隈には未だあるように思います。筆者はこのどちらも正しくDAOであるという理解をしていますが、この両者の表面的な特徴を混在させて解釈すると些か歪な形をした①②とも異なる第③のDAOをDAOだと認識してしまう恐れもあるように思います。
今日私たちが②民主的な議決を必要とするDAOとして認識しているものは基本的に以下2点で成り立っています。
  1. スマートコントラクトを用いて資本を管理する(資本調達、資本形成)
  2. その資本の使途をコミュニティが管理している
以上2点を「合意形成」の方法に目を向けて言い換えると以下のようになります。
  1. 過去の事実」の正真性を市場原理を用いてトラストレスに検証し、事実の合意を得る
  2. 未来の未確定の事実」をコミュニティで合意を得て、意思決定を行う
言うまでもなく、ブロックチェーンは1.の過去の事実の正真性を市場原理を用いて(ナッシュ均衡を求めて)トラストレスに検証できるという点で優れているものであり、2.の未来の未確定の事実の正真性を検証するものではありません。
DAOの理想系とはBitcoinである、という主張に筆者は同意しますが、市場原理にもとづく合意形成が適用されるのはCan't be evilを前提とする1.のようなストラクチャーを指した場合であり、2.の場合を指してはいません。Bitcoinの場合は技術や思想に共鳴した有志がボランティアに近い形で2.の意思決定が行われ開発が進められています。

純粋主義がいけないということではありませんが、Bitcoinの原理を持ち込む範囲を誤ると些か歪なDAOを産出するのではないか、そんな話をWeb3の片鱗(3)として記したいと思います。
また余談として「新たな社会創造に必要な3要素とトークンインセンティブ設計」という話を文末に記します。私見に過ぎませんが、DAO構築時のご参考になれば幸いです。

※なお本レポート内でのDAOの分類は「分散型ワーキンググループとしてのDAOと事業体の構造とは」に示された3分類(プロトコル、プロダクト、コミュニティ)とは異なる目線での分類ではありますが、上記レポートの分類は必見かと筆者は思います。本レポートでは主にプロダクト、コミュニティに属するDAOについて触れていきます。
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