論考・非中央集権は必ずしも重要ではない ブロックチェーンプロジェクトの便益について考える
2021年06月16日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- Haseeb氏によるWhy Decentralization Isn't as Important as You Think(非中央集権は皆が思うほど重要ではない)
- 非中央集権以外のブロックチェーンプロジェクトの便益について
- 総論
前提
本レポートでは筆者による論考としてブロックチェーンプロジェクトの便益の観点として、非中央集権は必ずしも重要ではない という主張を述べます。
著名クリプトファンドのDragonfly CapitalのHaseeb氏は、「Why Decentralization Isn't as Important as You Think
(非中央集権は皆が思うほど重要ではない)」というブログを公開しました。同記事ではタイトルの通り非中央集権に拘りすぎて失敗するプロジェクトに対して警告を発しています。筆者も基本的に同内容はには同意をしています。
本レポートの前半ではこの内容を解説して、後半では筆者により非中央集権は必ずしも重要視しないブロックチェーンプロジェクトはなんの観点で便益を提供するだろうかという論考を展開します。
Haseeb氏によるWhy Decentralization Isn't as Important as You Think(非中央集権は皆が思うほど重要ではない)
Haseeb氏によるWhy Decentralization Isn't as Important as You Think(非中央集権は皆が思うほど重要ではない)
『Why Decentralization Isn't as Important as You Think』の内容を解説します。要点を抽出したものであるため詳しくは原文をお読みください。
Web 2.0では、検索の93%がGoogleで行われ、ブラウザの64%がChromeを使用し、ソーシャル広告費の79%がFacebookに支払われています。一握りの企業がサイバースペースを効果的にコントロールしています。Web3.0の提唱者たちは、パブリックブロックチェーンがこの傾向を逆転させるきっかけになると考えています。ユーザーの手に力を取り戻しgoogleやFacebookにとって変わるオープンなプラットフォームになると未来予想をしています。このストーリーは、Economist、WSJ、Gartnerをはじめとする媒体を通しても語られています。
しかし、氏はこのような非中央集権の理想主義は間違っている場合が多いと言います。最も非中央集権(単一の人間や組織、あるいは少数の人間や組織が結託してプロジェクトを停止させたり検閲したりできない状態とする)なプロジェクトはBitcoinです。Bitcoinがなぜ非中央集権であるかはその必要性があったからであるといいます。サトシナカモトにとってBitcoinというインターネットマネー・P2P決済システムを非中央集権でない形でつくるという選択肢はありませんでした。Bitcoin以前のP2Pのデジタル通貨の試み、例えばDigiCash、E-gold、Liberty Reserveなど多くは政府による検閲で失敗しているからです。Bitcoinは非中央集権になることそれ自体が強い価値でプロダクトマーケットフィットを実現しています。
一方で他の多くのプロジェクトは非中央集権という要素が強烈にプロダクトマーケットフィットに影響するとは限りません。
Web3.0の提唱者はTwitterのAPIについての事例をよく引用します。TwitterはもともとオープンなAPIを持っていたのですが、それを閉鎖したことで、それをベースに構築していた起業家たちはビジネスが成り立たなくなってしまいました。起業家や開発者は、誰かに所有されているAPIを使いたくなく、だからこそweb3が将来的に勝つのだと述べています。
しかしこの主張は一部欠陥を含んでいます。開発者は『非中央集権・分散化』こそが目的ではなく、リスクに関心があります。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。