モジュール化の推進と高度なDAO統治|OpenLaw TributeDAOフレームワークの概要と考察【前編】
2021年07月27日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- Tribute DAOの概要
- TributeDAOの構造|DAOが形成するヒエラルキー型組織
- コアコントラクト・レイヤー
- アダプター・レイヤー
- 【考察】「単一トークン統治」と「発展途上DAO」の懸念|DAOが生み出すヒエラルキー型(またはティール型)組織の必要性
- 総論
前提
本レポートではDAO構築をサポートするOpenLaw Tribute DAOフレームワークの概説、及び考察を行います。
TributeDAOフレームワークの提供価値を端的に言い表すと「DAO構築の簡素化」です。
既存のDAOは個別の環境要因に応じて最適化しながら構築されている場合が多く、加えて現状のDAOモデルには顕在化した課題も潜在的な課題も両方存在するため、これが正解というモデルが存在しているわけではありません。そのため状況に応じたDAOのアップグレードは必要であり、その意味で執筆時点のDAO構築はハードルが高く、現状は個人、小規模コミュニティレベルで作成することはできても、個別最適化は実質困難な組織形態だと言えます。
既存のDAOは個別の環境要因に応じて最適化しながら構築されている場合が多く、加えて現状のDAOモデルには顕在化した課題も潜在的な課題も両方存在するため、これが正解というモデルが存在しているわけではありません。そのため状況に応じたDAOのアップグレードは必要であり、その意味で執筆時点のDAO構築はハードルが高く、現状は個人、小規模コミュニティレベルで作成することはできても、個別最適化は実質困難な組織形態だと言えます。
この課題解消を目的にOpenLawチームが開発したのがTributeDAOフレームワークであり、DAOを構成するコンポーネントをモジュール化することで構築の簡素化と環境要因に応じた拡張性を持たせる工夫を施しています。
本レポートではTribute DAOフレームワークを概説し、そこから垣間見えるTribute DAOの価値について筆者考察を加えます。また本レポートを【前編】とし、OpenLaw TributeDAOフレームワークの概要と考察【後編】ではTribute DAOフレームワークを用いたDAO事業モデルの優位性、現状のDAOとティール組織を比較して、その如何を考察します。
なおOpenLawチームはこれまでにInvestment DAOであるThe LAO、それに続くFlamingo、Neptune、MUSE0、AlienDAOをサポートし、加えてGrant DAOであるMolochDAO v2のスマートコントラクト開発をサポートしています。今回のTributeDAOフレームワークはこれまでの経験を踏まえたものであり、特にMolochDAO v2開発から得た知見を踏襲しています。MolochはDAOの中では古く、DAO運営のノウハウ、特に不特定多数の参加者をどのように民主的な共同体として運営するか(市場原理だけで動く部分とは区別される)というノウハウを蓄積してきたモデルでもあります。
DAOの基本的な解説は以下のレポートで行っています。特にDAOと言っても「民主的な議論を必要とする部分」と「市場原理でのみ動かせる部分」を区別して理解することが重要だと筆者は認識しています。Tribute DAOはこの意味では前者の仕組みを改善するソリューションと言えます。
【DAO基礎レポート】
【OpenLaw関連レポート】
- ブロックチェーンで法律契約の作成や実行ができるOpenLaw
- OpenLaw概観、スマートコントラクトによるプログラマブルな法的契約書作成ツール
- 自律分散型ベンチャーキャピタルファンドThe LAO概観
- DAOを構築するMoloch DAO クラウドファンディング的なDAOプロトコルの概要・仕組み
Tribute DAOの概要
【基本情報】
Website:https://tributedao.com/
Twitter(OpenLaw):https://twitter.com/OpenLawOfficial
Github:https://github.com/search?q=org%3Aopenlawteam+tribute-ui+OR+tribute-contracts+in%3Aname&type=repositories
Website:https://tributedao.com/
Twitter(OpenLaw):https://twitter.com/OpenLawOfficial
Github:https://github.com/search?q=org%3Aopenlawteam+tribute-ui+OR+tribute-contracts+in%3Aname&type=repositories
※執筆時点(2021年7月20日)でTribute DAOフレームワークを用いることはできますが、開発途上でもあり、コードの正式監査は行われていません。
OpenLawチームが提供するTributeDAOフレームワークは前提で説明したようにDAO構築をサポートするツールです。まずOpenLawチームがDAOのどのような点を課題だと認識しているかを整理して彼らの目的を理解します。
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モジュール性の欠如
前提で概説したように、現在のDAOを構成する各コンポーネントをモジュールとして扱っているわけではないので、柔軟性に欠け、環境要因に応じた最適化が難しいという課題があります。
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高コスト
主にオンチェーン投票時のコスト高の問題です。オフチェーン処理とレイヤー1でのオンチェーン処理を併用するのに加えて、レイヤー2等による低コスト化が期待されます。
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単一トークンによるDAO統治
DAO形態はさまざまな利害関係者が参加するためガバナンスは複雑化する傾向にありますが、現状は単一トークンでエコシステムや統治範囲を統制しようとしている状態であり、幾分無理がある仕組みです。ここに対して複数トークンを発行できるのであればヒエラルキーを作ることにはなりますが、チームやサブグループのようにレイヤーを分けて管理することができるようになり、より高度な統治方法を採用することができるようになります。この点の考察を本レポート内で後述します。
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NFTサポートの欠如
NFTサポートが欠如しているため、NFTプロジェクトそのものをDAOにすることが困難です。NFTとは何か、はデジタルオブジェクトそのものの特性とは一旦切り離して理解した方が良いと筆者は考えていますが、少なくともデジタルオブジェクトを一意性のあるものとして識別し、ノンファンジブルなものとして扱える点に特異性があると言えます。応用範囲はさまざまあるかと思いますが、仮にIPをNFTとして表現し、それをDAOで管理することができるならば、新たな価値提供も可能になるのではないかとも思います。この点については機会があればまた別レポートで考察をまとめるかもしれません。
Tribute DAOは「Moloch v2のDAO統治方法」「モジュラーアーキテクチャ≒拡張性」「DAO関連のコスト削減(Optimistic Rollupの利用)」をバランスさせることで上述のいくつかの課題を解消することに焦点を当てたプロジェクトです。大まかに言えば、その結果として以下の3点を実現するDAOツールだと言えます。
- カスタマイズ可能
- アップグレード可能
- 低コストの実現
UXは個別にパッケージ化(オープンソース)されているため、チームのニーズに合わせて変更でき、その他すでにあるDAOツール群、例えばSnapshot(オフチェーン投票システム)、Collabland(ソーシャルメディアでDAO参加者を識別し対話するbotシステム)なども統合可能です。
次節ではTributeDAOフレームワークの大枠を理解するためにその構造について解説します。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。