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ブロックチェーンによる民主的意思決定とDeFiガバナンス

2025年03月18日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • インターネット投票の意義と求められる特性
    • なぜインターネット投票が必要か
    • 投票システムに求められる特性
  • MACI(Minimal Anti-Collusion Infrastructure)の仕組み
  • ソフトウェア・ハードウェアへの信頼性と課題
  • インターネット投票による未来
  • DeFiにおける公共財とガバナンス(DeGov)の必要性
  • コイン投票ガバナンスの課題と攻撃リスク
    • 攻撃者がいない状況でも、不平等やインセンティブの不整合が生じるリスク
    • 投票権売買や攻撃者による投票システムの悪用の問題
    • 投票買収があまり起きていない理由
  • ガバナンス・リスクへの代表的な対策
  • 解決策1:ガバナンス範囲の限定
  • 解決策2:コイン以外の基準を用いたガバナンス
  • 解決策3:投票者が結果に責任を負う仕組み
  • 主要DeFiプロトコルのガバナンス事例
    • Uniswap
    • Aave
    • Compound
    • MakerDAO
    • Curve
  • 総論

前提

本レポートは、ブロックチェーンを活用した投票システムとDeFi(分散型金融)のガバナンスに関する現状の課題と展望を整理し、投資家や企業に向けて、その技術的・経済的意義を明らかにすることを目的としています。
ブロックチェーン技術は、改ざん耐性や透明性を持つため、従来の中央集権型システムの問題を解決できると期待されています。特に投票システムにおいては、不正を防ぎ、信頼できる選挙プロセスを構築する技術として注目されています。しかし、ブロックチェーンが万能な解決策であるとは限らず、プライバシーの確保や票の強制排除といった課題を抱えています。このため、ゼロ知識証明(ZK-SNARKs)や秘密計算(MPC)など、他の暗号技術と組み合わせる必要があります。
また、DeFiのガバナンスにおいても、トークン保有者による投票システム(DeGov)が広く採用されていますが、富の集中による投票の不平等性や、投票権の売買といった新たな問題が浮上しています。ブロックチェーンによる投票の利点を活かしつつ、ガバナンスの公正性と持続可能性を確保するための対策が求められています。
本レポートでは、Vitalik Buterinの「Blockchain voting is overrated among uninformed people but underrated among informed people」および「Moving beyond coin voting governance」を軸に、ブロックチェーン投票とDeFiガバナンスの技術的・社会的課題を整理し、解決策を検討していきます。

【関連レポート】

インターネット投票の意義と求められる特性

なぜインターネット投票が必要か

現在の紙による投票システムを永久に続ける場合、数年に一度しか意思決定の機会がないため、迅速で効率的な対応が難しくなります。そのため、インターネットを活用しデジタル化することで、民主的な意思決定プロセスの頻度を高め、効率化を図る必要があります。
投票システムにおいては、不正を排除し、プロセスが公正かつ正しく行われる完全性が極めて重要です。ブロックチェーン技術は、この完全性を担保する可能性を秘めています。しかしながら、ブロックチェーンがそのまま投票システムに適したツールとは限らず、また選挙に用いるソフトウェアやハードウェアの完全な信頼性を保証することが困難という問題もあります。こうした理由により、ブロックチェーンだけではインターネット投票を容易に実現できません。そのため、暗号技術を組み合わせた解決策が求められています。
ここではまず、投票システムに求められる具体的な特性を挙げ、それらがなぜ実現困難であるのかを明らかにします。

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