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地方創生×Web3【ユースケース考察編】①|Web3ベース「通貨/決済システム」の有用性と課題

2022年08月06日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • 1.BCによる地域活性化の前に「ブロックチェーンはどのような場合に有効であり、どのような場合に有効ではないのか」をまず理解しよう
  • 2.ブロックチェーンベースの地域活性化事例
  • 3.主要ユースケース①「通貨/決済システム」

前提

本レポートでは地方創生×Web3の主要ユースケースを考察します。なお、【概要編】として地方創生×Web3の概要解説と筆者考察を以下のレポートで別途行っています。関心のある方はそちらもご参考いただければと思います。
【地方創生×Web3シリーズ】

【要旨】

今回の【ユースケース考察編】の要旨は以下の通りです。
  1. BCによる地域活性化の前に「ブロックチェーンはどのような場合に有効であり、どのような場合に有効ではないのか」を整理します
  2. ブロックチェーンベースの地方活性化主要ユースケースの概説|①「通貨/決済システム」と②「地方統治システム」
  3. ①「通貨/決済システム」の事例
  4. ②「地方統治システム」の考察|ブロックチェーンベースのガバナンスフレームワークの有用性と課題の整理 ※4は別レポート

1.BCによる地域活性化の前に「ブロックチェーンはどのような場合に有効であり、どのような場合に有効ではないのか」をまず理解しよう

Web3という言葉の定義は執筆時点では曖昧であり、俗に使われる意味合いも時と場合によって区々(まちまち)であるため、本レポートでは「ブロックチェーン(BC)を活用した」という狭義の意味合いで用いることとします。
本節では具体的なユースケース解説に入る前にブロックチェーンを地方創生、地方活性化に活用する以前に抑えておくべき前提知識「ブロックチェーンはどのような場合に有効であり、どのような場合に有効ではないのか」を整理します。
過去執筆物からブロックチェーンの有効性を確認するポイントを解説した箇所を以下抜粋して示します。2020年当時の執筆ですから少し情報が古い部分もありますが、BCを活かせる有効な課題か否かを見極める上では現在でも通用するポイントです。

①仲介者を減らす必要性

ブロックチェーンをベースとした適切な解決策として、取引プロセスにおける仲介者の削減をあげる事ができます。ご注意いただきたいのは、時として仲介者と連携した方がビジネスが効率的に機能する場合もあるということです。

公認会計士による認証や公共機関による監査などを含んだ認証機関やサプライチェーン上の倉庫、小売業者などのように、業務プロセスから削減しない方が効率的である場合もあります。重要なことはプロセスにおける仲介者の削除ではなく、負が生じるプロセスのみを削「減」するということです。

②複数の利害関係者が存在していること

ブロックチェーンソリューションは、透明性、監査可能性という性質を有するため複数の利害関係者が存在するプロセスフローで信頼の源泉として機能し、ワークフローの簡素化を期待することができます。逆に言えば少数の主体のみが存在する場合は、信頼できる第三者や法を信頼の源泉とし、レガシーシステムによるソリューションを実装する方が効率的である場合もあります。(執筆時点での実装コストやランニングコストを踏まえると小規模での運用は多くの場合で適切な手段とは言えません)

③デジタルネイティブな資産

取り扱う資産をデジタル形式でうまく表現することができるか否かは重要なポイントです。デジタル表現できるのであればブロックチェーンで適切に管理することは可能ですが、取り扱う資産が物理的な表現しかできないのであれば、ブロックチェーンで管理することはできません。

例えば小麦から小麦粉、パンへの移行をブロックチェーンで適切に管理するのは難しいと言えます。しかし、一方でそのような物理的な資産であったとしても請求書などの形で表現しても問題がでない場合は、管理することも可能になります。

またブロックチェーンはデジタルデータに不変性を与える、つまりその状態を不可逆的に表現することができます。そのため権利証明などに適したソリューションであるとも言えます。しかし、その証明の対象自体が恒久的な性質を有していない場合はブロックチェーンのみで適切に管理することはできません。

極端な事例ではありますが、紛争地にある土地などの権利はブロックチェーンで強制することは難しいのではないかと考えられます。執筆時点ではブロックチェーンは法律ではありませんし、武力を有したツールでもありません。そのため、国際的な紛争問題で失った土地の権利を主張できるような力を当然持っていません。そのため、このような恒久的な性質を有さない事例の場合は、信頼できる認証機関の存在が別途必要であろうと考えられます。

④書き込みアクセスを共有する必要性

ブロックチェーンは複数の主体が個々に情報をサイロで処理することで生じるワークフローの非効率性を解消するのに適したソリューションです。つまりは複数の主体に書き込みアクセスを共有する必要がない場合はブロックチェーンではなく、インスタンスをリアルタイムに読み込むだけのセントラルリポジトリ(データが収められたデータベース)を用いる方が適していると言えます。

⑤取引量が少ないこと

今後の技術的な進展が関与することではありますが、執筆時点でのパブリックブロックチェーン(例:Ethereum およそ15TPS)の処理能力はレガシーシステムと比較するとその能力では見劣りすることは明らかです。コンソーシアム型のブロックチェーンはパブリックブロックチェーンよりも多くの情報を処理することができますがそれでもVisaなどの処理能力(平均1700TPS、理論的には24000TPS可能とも言われている)には及ばないため、保存する情報はブロックチェーンを利用する必要があるものに絞り、かつ取引量が多くない場合にブロックチェーンは有効な手段として考えられます。

⑥非取引データ(プライベートな情報など)は保存しない

ブロックチェーンは⑤で示したようにレガシーなデータベースの代替になるようなものではないため、プライベートな情報(KYC)などの非取引な性質をもつ情報を保存する場合にはDLT(分散型台帳)の処理能力及び代替手段を考慮する必要はあります。本戦略レポートではあくまでもコンソーシアム間で更新する必要のある共有データ(取引データ)のみを保存する場合に適していると記載されていますが、この点はITインフラが整備されているインド特有の背景を考慮する必要はあります。2009年より「政府が取り組んでいる」デジタルIDプロジェクト「Aadhaar」を活用したeKYCのベータ版がすでに導入されており、プライベート情報を管理するためにわざわざ新たにブロックチェーンを導入する切実な理由がないためと考えられます。

⑦信頼できる第三者への依存

複数の主体が関与するワークフローでは、業務の複雑性を避けるために規制当局や認証機関など信頼できる第三者をプロジェクトに含めることが必要になる場合もあります。例えば品質監査などでは量の確認作業は自動化はできますが、質の確認作業の自動化は現時点での技術では対応することができません。またその認証を受ける際には認証機関の存在は必要とされます。

参考:インド政府シンクタンクが示す 国家のブロックチェーン戦略の概要・考察
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