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地方創生×Web3【ユースケース考察編】②|ブロックチェーンベースのガバナンスフレームワークは地方統治方法として有用か

2022年08月09日

目次

  • 4.主要ユースケース②「地方独自の統治システム」|ブロックチェーンベースのガバナンスフレームワークは地方統治方法として有用か
  • 4-1.地域ガバナンスにDAOを持ち込む前に知っておきたいこと|分散化と非中央集権化の違い
  • 4-2.ブロックチェーンベースのガバナンスフレームワーク(DAO)を参加型計画に活用することの有用性
  • 4-3.ブロックチェーンベースのガバナンスフレームワークを地方に活用することの課題
※本レポートは『地方創生×Web3【ユースケース考察編】|Web3ベースの①「通貨/決済システム」』の続編です。「ブロックチェーンベースのガバナンスフレームワークは有用な地方統治方法となるか」、この問いに対する筆者考察を本レポートでは行います。
地方創生の文脈で「地方分権型ガバナンス」や「ローカリズム」という言葉が用いられることがありますが、いわゆる地方分権型ガバナンスと呼ばれているものにも様々な形態があります。例えば地域住民「参加型計画」はその形態の一つですが、昨今話題となるDAOによるボトムアップ計画は地域住民「参加型計画」と親和性があるという言説も見受けられるようになりました。この文脈において各地でブロックチェーンベースの②「地方独自の統治システム」の模索が行われています。
本レポートは主に②「地方独自の統治システム」としてWeb3技術を導入することの有用性と課題について記述していきたいと思います。

【地方創生×Web3シリーズ】

4.主要ユースケース②「地方独自の統治システム」|ブロックチェーンベースのガバナンスフレームワークは地方統治方法として有用か

ブロックチェーンを地方独自の統治システム(地方分権型ガバナンス)のための基盤として活用することを期待した事例は多々あります。しかし①「通貨/決済システム」と比較すると、その有用性は実証されているとは言い難く、あくまで仮説として期待され、現時点でも模索段階に過ぎません。【概要編】で紹介した仮想山古志村のNFTを活用したデジタル住民票はその一形態の試みと言えるでしょう。
まず簡単にガバナンスシステムにブロックチェーン技術を応用することで影響する部分を列挙して整理しておきます。
  1. 意思決定(誰が決断できるか)
  2. 説明責任(利害関係者にプロセスを説明可能か)
  3. インセンティブ(参加を促す仕組み)
透明性、改ざん防止、トラストレスといったブロックチェーンの特性を活かすことで、ガバナンスをよりオープンにし、利害関係者への説明責任を果たすことも可能にしますから、地域住民参加型計画を実現するツールになり得る可能性があります。
つまり、近隣地域の将来の開発に関する意思決定プロセスにおいて市民に力を与えるための手段としてブロックチェーンガバナンスを導入するという考え方で期待されています。
以上の可能性はあくまでもブロックチェーンベースガバナンスの以下3つの機能が働く場合に期待できることです。
  1. 追跡可能性(リソース、コミュニティメンバーの貢献、データ等)
  2. 管理(意思決定と成果の評価)
  3. 交渉(投票メカニズムによる合意形成)
以上の機能が働く状態とは、すなわち取引が明示化(成文化しやすい)されている状態を指します。
逆に言えば、取引が暗黙的(成文化しにくい)な場合にはブロックチェーンベースであろうと上記機能が効果的に働かないために期待できないとも言えます。そして、人間社会は往々にして暗黙的な取引を好み、他者との駆け引き(正直さも欺瞞も含む)の中で競争優位に立てる社会ですから、「取引が明示的でなければならない(オンチェーンか否か)」という前提を理解せずに仕組み化すると期待した成果は得られないでしょう。
次節からはブロックチェーンベースのガバナンスフレームワークを地方に活用することの有用性と課題について考察していきたいと思います。
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