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冬の時代の過ごし方 -損失を避け春に利益を上げる過ごし方と相場転換のきっかけを学ぶ-

2022年06月30日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • 相場下落の原因
  • 冬相場をどう過ごすか
  • 相場の転換点
  • 総論

前提

本レポートでは、下落相場に入った暗号資産市場での過ごし方を、2018年から2年続いた冬の経験からひも解き、冬相場が転換するきっかけを考察します。
暗号資産市場は2022年に入ってから暴落しており、2021年のバブル相場やSTEPNをきっかけに参入した方の中には、この相場をどう過ごしていいか分からない方も居ると思います。ただ暗号資産市場の本格的な下落はこれが初めてではなく、何回か冬を経験しています。2018年から2020年にかけては時価総額が850Bドルから100Bドルまで88%下落し、2年ほどこの相場が続きました。

https://www.coingecko.com/ja/global_charts


ただ過去には金融市場も緩和を続けていたのですが、2022年は引き締めに入り外部環境はこの時より悪くなっています。この過去とは環境が違う冬相場をどう過ごせばよいかを、2018年からの冬を乗り越えた信玄氏MaskJiro氏と共にTwitterスペースで議論を行いました。本レポートではその内容をまとめています。
この下落相場が本当に終わるのか、またそれはいつになるのかは誰にも分かりませんが、2018年の冬相場の後にチャンスをつかんだ人も一定数居ます。その知見を特に2020年のバブル相場から参入した人の参考にしていただくため、本レポートは一般公開にしています。

[Exective Summary(ポイント)]
  • 相場の下落は、金融引き締め、Terraの崩壊、レバ運用の崩壊の3段階で起きた
  • 下落相場は自分の得意なところにフォーカスして知識を高める、苦手なことはやらない
  • 相場の回復はタイミングは外部資金の流入を見ておくとよい

【免責事項】
HashHub Researchで配信される全てのレポートは、投資を助言または推奨するものではなく、情報提供と教育のみを目的としています。私たちのサービスを利用したことによる利用者の不利益や投資の損失については一切の責任を負えないことをご了承ください。お客様が本レポートで参照される暗号資産または関連するアセットに関して投資判断を行う場合は、事前にご自身でリサーチ及びデューデリジェンスを実施していただく必要があります。

相場下落の原因

まずは相場が下落した原因を振り返ります。下落は既に起こってしまい、またタイミングの見極めも難しかったために、バブルの恩恵を持ち帰れた人は見た目以上に少ないと思われます。しかし何がきっかけで下落が起きたかを知っておくことで、将来バブルが起きた時にその経験を活かすことができます。
今回の相場の下落には3段階ありました。第1段階は金融引き締めというマクロ環境の変化です。コロナウィルスによる景気の悪化を懸念したFRB(Federal Reserve Board:米連邦準備制度理事会、米国の中央銀行に当たる)が2020年の3月に政策金利を1.75%から0%に引き下げました。企業が資金調達をし景気回復を狙う目的です。
しかしこれだけでは景気対策が足りず、FRBはマネーの供給量を増やす量的緩和を行いました。これは金融機関が保有する米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を月400億ドル購入して、流通するマネーを増やすというものです。日本円にして毎月16兆円もの額になり、2022年度の日本国家予算の約108兆円と比較しても規模の大きさが分かります。
しかしこの金融緩和により、FRBが予想していたよりもインフレ率の指標が上昇し、世論の不満が起きました。そのため2021年11月から、金融緩和を毎月150億ドルずつ(米国債100億ドル、住宅ローン担保証券50億ドル)縮小するテーパリング(先細り)を開始しました。その後に政策金利も段階的に引き上げ、2022年末までに3.4%にする見通しを出しています。大規模な緩和と反対に大規模は引き締めに入っています。
金融緩和の際にはリスク資産である株式や暗号資産が買われる傾向にあり、金融引き締めの際にはその逆になります。金融緩和と引き締めのタイミングは暗号資産市場の値動きと一致しています。緩和の影響で2020年11月初頭に暗号資産の時価総額は最高値をつけ、引き締めが発表された際に下落相場が始まっています。


下落の2つ目の原因はTerra, Lunaの崩壊です。Terraはアルゴリズムステーブルコインとも呼ばれ、発行金額分の担保を持つわけではなく、信用創造によってUST(Terra USD)を1ドルにペグさせ、USTをAnchorというプロトコルにデポジット(預入)する事でAPY20%という魅力的な利回りを提供していました。これにより多額の資金を集めていましたが、USTのデペグから始まる負のスパイラルを止められず、USTとLunaの価格は大きく下落し暗号資産市場全体にも悪影響を及ぼしました。詳細は下記レポートに詳しいです。


3つ目の原因はレンディング企業であるCelciusの引き出し停止と、暗号資産系のベンチャーキャピタルであるThree Arrows Capitalの清算の噂です。Celciusはアグレッシブな運用で高い利回りを提供する大手のレンディングサービスで、ICOで集めた50億円をわずか1年で1,000億円規模まで成長させました。
そのCelciusがTerraによる損失を受け、またETHのステーキングサービスであるStake Houndが38,178ETH(当時の7,500万ドル相当)の秘密鍵を紛失した中にCelciusの資産があったという2つの噂の後に、Celciusが顧客の資産引き出しを停止しました。
またThree Arrows Capitalも2022年2月にLUNAに2億ドル以上を投資した結果無価値になり、その結果15,250BTCと3.5億USDC、合計で6.5億ドル約884億円の仮想通貨ローンが返金できていない債務超過に陥っています。
この3段階でクリプト冬の時代が始まりました。これを覚えておくことで、もし次のバブル市場が起きた際に、資産を退避させる嗅覚を身に着ける事ができるかもしれません。
ちなみに2018年の冬相場も、コインチェック社のXEM流出から始まりました。また冬相場の特徴として、市場への資金流入が無いにもかかわらず、一部のお金のにおいがするプロジェクトに多額の資金が集まることが挙げられます。例えばTitan、Terra、STEPNなどです。

冬相場をどう過ごすか

ここからは冬相場の過ごし方をいくつか項目を挙げながら、その具体例について掘り下げていきます。

自分の得意な事に注力する

冬相場は資産を保有しているだけで損失が重なるため、その損失を取り返そうと自分の慣れない手法に手を出すことがあります。また冬相場の特徴として、相場のボラティリティが無くなる点があります。するとトレードのチャンスが少なくなり、TwitterやSNSで一部の上手い人の利益が目立ちます。ここでトレードがうまくないのにトレードに手を出すと、冬の間に損失を拡大させることになりやすいです。歴戦の強者に対して、違う戦い方をしてみようと拾った「ひのきの棒」で勝てるわけがありません。
トレードが得意でないなら手を出さない、また自分の得意なことに注力するのが良いです。その分野や稼ぎ方、楽しみ方は2018年の冬の時代より多種多様で、NFTやDeFiの中でもかなり細かく分類できます。過去にNFTが主流でないときにSuperRareでXCOPYを買った人もいるでしょうし、DeFiやNFTのbotが得意な人もいるでしょう。自分が今までに成功した事例を思い返し、得意なことに注力するのが良いと思われます。
また、草コインと呼ばれる時価総額が低いトークンの取引が苦手であれば、次のSolanaやAvalancheを夢見て投資するのはお勧めできません。2018年の冬相場でも数々のイーサキラー銘柄が出てきましたが、そのほとんどが残っていません。また時価総額が低い銘柄は悪意のあるインフルエンサーにより煽られ、一時的にPump(値上がり)された後にDump(値下がり)される事も多いです。Youtube, Line, Tiktokなどの初心者の目につきやすいSNSではこの傾向がみられるため注意が必要です。この業界ではTwitter, Discord, Telegramで情報を集めるのが一般的です。
あなたが見つけた銘柄は将来の有望銘柄に見えるかもしれませんが、それはほぼ間違いなく幻想です。初心者に低総額銘柄の目利きは不可能で、インフルエンサーでも確率の非常に低いギャンブル要素である事を覚えておいてください。

違和感を大事にする

自分の感じるちょっとした違和感を大事にしましょう。それはトークン、NFT、コミュニティの全てに対して当てはまります。例えばTerraはAnchorにデポジットしておくことで、安定的にAPY20%が得られました。クリプトにおいては普通に思えますが、冬の第1段階が進んだ中で各種DeFiプロトコルと比較すると、やはり高すぎる水準ではありました。
そこに違和感を感じたなら、どういう仕組みになっているかを理解して裏取りをするのが重要です。裏を取った上で、インフルエンサーの言いなりではなく、自分の頭で考えます。最初は自分の頭で考えるのが難しいかもしれませんが、最初は人の意見をきっかけにして違和感から考える練習を繰り返すことで、自分の考えができてきます。
これが「誰々が言っているから正しいだろう」と、お気に入りのインフルエンサーの言いなりになると、段々と違和感が感じ取れなくなります。もし裏取りの方法が分からないならコミュニティなど周りに聞くのも有効です。最初はとても勇気がいりますが、案外親切に教えてもらえます。

知識をつける

バブルの時に利益を上げるのは、流れに逆らわなければそう難しくありません。難しいのはそこから「いつ抜けるか」で、バブルの恩恵を持ち帰れた人は見た目ほど多くないと思われます。ここで大事なのは、次回のバブルがあった際に恩恵を持ち帰れるように知識をつけておくことです。事前に準備してバブル相場に乗るのか、またそこから降りられるのかは準備の有無で全く異なります。
次回のバブルがあるとして、その準備として下記のレポートは参考になります。

また、今回のバブル相場でクリプト市場に入ってきた人も多いでしょう。Axie Infinityではユーザーの50%、STEPNでは30%が初めてクリプトに触れるユーザーだったと言われています。Pancake Swapで初めてDeFiに触れたユーザーも多いでしょう。ウォレットを作ってSolanaやBSCを触るのは労力がかかる事で、それは間違いなく血肉になっています(ただアプリ内ウォレットは秘密鍵を運営に預けているものもあり、注意が必要です)。
新規ユーザーもバブルが終わったからと言って退場するのではなく、ここから知識をつける事で次のバブルをつかむことができます。
2020年の国内取引所の稼働口座数が約260万件で、年齢層は30代を中心とした20代から40代が中心でした。今回のバブルで人口は大きく増え、NFTの影響もあり年齢層も下がっていると思われます。

https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/themes/jvcea/images/pdf/tokei_20211119.pdf

コミュニティの良しあしの見分け方

また、これから知識をつけるため、また界隈に入ったばかりでコミュニティに属する人もいると思います。ただコミュニティには詐欺的なものもあるため注意が必要です。その良し悪しを見分けるポイントを列挙します。
オープンな場所はクローズな場所より安全です。クローズで優良なコミュニティもありますが、最初にどこかのコミュニティに入るならオープンな場所の方が安全です。クローズで、且つ管理者やコアメンバーによって言論統制(発言が消されたりbanされる事が多い)されている場所は危険です。
またやり取りが双方向である方が望ましく、一方通行は望ましくありません。誰かが一方的に情報提供をするだけだと、信者化し判断力が失われがちです。双方向で色んな人が議論の種や質問をもってきて、それを有志とやりとりしているコミュニティは健全です。
何のためのコミュニティかという点も重要です。プロダクトが目的なのか、それともそのコミュニティに居るインフルエンサーが目的なのか、インフルエンサーが目的だとその人に依存する事になるためリスクがあります。そのプロダクトが目的で集まるコミュニティの方が健全なことが多いです。

相場の転換点

ではこの冬相場が転換するのか、するとしたらどこがポイントになるのかという疑問があります。その判断基準としては、外部の資金流入が一つのポイントになります。市場からは資金が抜けていますが、2021年には250億ドル(約34兆円)ものVCの投資がありました。

https://www.cnbc.com/2022/02/02/crypto-start-ups-raised-huge-venture-funding-rounds-in-january.html#:~:text=Crypto%20and%20blockchain%20start%2Dups,in%20bitcoin%20and%20other%20tokens.

この規模の資金流入がある、または2020年のPaypalの時のように、大手企業の大規模な投資は1つのポイントになると思われます。
またリーマンショックを振り返ると、復帰のきっかけは外部資金による救済でした。今回の下げ相場のきっかけとなったCelciusについては、ゴールドマンサックスが20億ドルの資金を集め買収を検討しているという情報があり、同業のBlockFiはFTXが株式の購入を検討しています。
ただ外部環境の悪化は変わっておらず、マイナーの損益ラインはまだ下回っていないために利益確定の売り圧があり、下落相場の終焉は遠そうです。
この相場の中でも、次世代の基盤になりえる様々な技術を、第三者且つ複数の組織による競争しているプロジェクトは重要です。これに対して特定の財団が競争圧力も無く開発しているものは、中々開発が進まずロードマップの遅延を繰り返す可能性があります。

総論

本レポートでは2018年の冬相場の経験から、冬相場でどう行動すべきかと、相場転換のきっかけについて述べました。
何が下落のきっかけだったかを認識しておくこと、自分の得意なことに注力し知識をつける事、違和感を大事にし冬に起こる詐欺を避ける事、外部の資金流入をウォッチして相場の転換点を見ておくことで、冬が終わった後に実りのある春を迎えられます。ただその実りがどの程度になるかはこれからの過ごし方次第です。
損失を出して悲しみの中退場するのではなく、投資面以外でも非常に面白いクリプトの世界を引き続き楽しんでもらえることを願っています。またHashHubリサーチで無料で読めるFreeユーザー向け記事は50本以上あり、それを読むだけでも知識の助けになると思います。

※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。

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