Bankless DAOのビジネスモデル考察|中央集権型メディアがDAOを並走させる利点とは何か

目次

  • 前提
  • Bankless LLCの概要と既存ビジネスモデル
  • Bankless DAOの概要
  • 中央集権モデルのメディアがDAOを並走させる利点|ビジネスモデルの考察
  • 総論

前提

本レポートでは中央集権型メディアであるBankless LLCと、それと共存する形で展開されるBanklessDAOを概観します。
前半ではBankless LLCの既存事業内容を概観し、後半は2021年に誕生したBankless DAOを並走させたモデルを概観および考察します。
DAOの基礎的な解説は以下のレポートで行っています。

Bankless LLCの概要と既存ビジネスモデル

Bankless LLCはRyan Sean Adams氏David Hoffman氏が率いるDeFiなどのパブリックブロックチェーン上の金融領域を軸にした中央集権型のコンテンツプロバイダーです。両者ともに同業界では影響力を持つ人物であり、Ryan Sean Adams氏はMythos Capitalの創設者でもあり、David Hoffman氏は不動産トークンプラットフォームRealTのChief Of Operationsを担っていたことでも有名です。
Banklessはその名が示すように、既存金融(銀行など)ではなくバンクレスな金融システム、言い換えると草の根的に構築される金融システムに焦点をあてたコンテンツを提供しています。筆者が認識する限りでは2018年末あたりから自営で活動開始しており、2020年9月に有限責任会社としてUS Virginia州でBankless,LLCとして法人登録し、その後2021年5月25日(DAO設立後)にUS Washington州に外国籍の有限責任会社Bankless LLCを登録しています。
Banklessが提示する価値観は執筆時点での暗号資産領域においてはある程度一般化しつつある概念とも言えますが、社会全般から見ればまだまだニッチでとてもディープな世界観を共有する組織であることには違いありません。
このようなニッチな市場でどのようにBankless LLCが事業を展開していたのか、簡単に以下紹介します。
Bankless LLCが提供しているコンテンツは大きく以下3つの媒体を介して提供されています。
  1. テキストコンテンツ(Bankless Newsletter)
  2. 音声コンテンツ(Podcast)
  3. 動画コンテンツ(Youtube)
テキストコンテンツは毎週5本配信しており、毎週メルマガ形式で配信され、そのサブスク登録を通じて無料、有料顧客とのつながりを強めています。音声コンテンツと動画コンテンツは共にテキストコンテンツの補助的な立ち位置です。
2021年5月時点(DAO設立時点)での規模はテキストコンテンツの購読者が40,000人、音声コンテンツは月400,000ダウンロード、動画コンテンツの登録者数は46,000人です。コンテンツは無料コンテンツと有料コンテンツ(プレミアムメンバー月額$22)で構成されるサブスクリプションモデルで収益を生んでおり、財務状況は非公開ですが営利組織として従業員、請負業者を抱えながらも収益化はできていると記載されています。

どのような課題が考えられるか?

2018年2019年当時のパブリックブロックチェーン上の主要金融システムは数えるほどしかなく、かつ新しいものが出てきたとしても少人数で主要なものは網羅できる領域であったと言えます。当時からDeFiの発展に期待を寄せていた人々はコンポーザビリティ、マネーレゴというDeFiに与えられた概念がこれまでになく速い速度で金融システムを進化させるだろうと予測していた人々は少なくなかったと筆者は感じています。
この予測は2020年のCompoundによるガバナンストークンのユースケース発明が最終的な後押しとなり、それを皮切りにして急激にDeFiプロトコル開発が進み、多くのコピーキャットを生みながら今日のようなエコシステムにまで拡大していきました。
この結果、Bankless(中央集権型)の調査リソースの成長に対して、対象とするエコシステム(分散型)の成長スピードが構造上はやくなってしまうため、業界の全体像を掴むことが困難になってきた可能性は考えられるでしょう。
この問題を解消するには選択と集中を行い調査範囲を絞る、または業界に精通したライターを新しく雇う、となりますが、対象エコシステムが草の根的に関係し合いながら増殖するネットワーク、つまり点の繋がりが重要性を持つため、点に集中することは難しく柔軟な対応を迫られます。また未だニッチな市場であるためライターを新規で育成するなどしなければ人的リソースの調達も難しいと言えます。
この他現状のコンテンツ提供によるサブスクリプション収益から事業をスケールさせることの難しさもあったと考えられます。Bankless LLCはコンテンツを提供することでさまざまなDeFiプロジェクトと関係を構築しているものの、その恩恵を直接受けるものではありません。2021年2月にはBankless BED Index(執筆時点ではDAOとして作成中です)をIndexcoopコミュニティに提案して、DeFiプロダクトから手数料収入を得るモデルの模索もなされており、パブリックブロックチェーンを用いた収益機会の探索はなされていました。外部コミュニティ依存ではなく、自社独自でそれを行うにしても人的リソースが足りないという問題はあったとも考えられます。
これらの課題を大まかにまとめて解釈すると「事業をスケールさせるための人的リソースが不足している」と言えます。
これらの問題を解消し得る可能性があるのは組織をインターネットスケールのDAOに拡張して、コミュニティをリソース源とする方法でしょう。しかし中央集権型モデルから分散モデルに移行するにも、「意思決定方法の問題」「フリーライダー問題」「分散性の度合いに関する問題」「DAOのセキュリティ問題」「規制リスクの問題」などDAOモデルを採用するには乗り越えなければならない明らかな課題もありますので、必ずしも分散モデルが最良の選択肢であるとは現状言えません。DAOと中央集権型組織の違いは下記のレポートで解説してます。

Bankless DAOの概要

【Bankless DAO基本情報】
Website:https://www.bankless.community/
Discord(コミュニティチャット):https://discord.com/invite/bjPz2w9Zts
ガバナンス:https://snapshot.org/#/banklessvault.eth
Medium(ブログ):https://medium.com/bankless-dao
News letter:https://banklessdao.substack.com/
Twitter:https://twitter.com/banklessDAO
Github:https://github.com/BanklessDAO
Bankless DAOは2021年5月に設立されたDAOであり、Bankless LLCはコミュニティの1ノードという立ち位置でDAOに関与しています。つまり、Bankless LLCは残したまま、Bankless DAOを並走させるモデルを採用しています。

DAOは何もないところ(アイデアはある)からDAOを設立するモデルもあれば、すでに事業化している中央集権型組織が法人を解体してDAO化するものもありますが、Banklessはこの両者とも異なる並存モデルを採用しています。
なぜ中央集権組織とDAOを並走させているのか、その利点とは何か」という問いを最後に回収することを目的に以下Bankless DAOを概観していきます。
本節ではまずBANK tokenを解説し、その後Bankless LLCの立ち位置を理解する目的でBANK Tokenのディストリビューションや発行スケジュールの管理方法について解説します。

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