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Abstractの概要 コンシューマー特化のレイヤー2、Pudgy Penguinsを擁するIgloo社の挑戦

2024年10月23日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • Abstractの概要
    • Testnet
  • Abstractの狙い、エコシステムの方向性
  • Panoramic Governance (PG) とは
    • シーケンサー手数料の分配
    • ガバナンス参加者によるトークン発行先の投票
  • 考察:あくまで想定ユーザーがいるかどうか、強力な競合はBase
    • 強力な競合Base
  • 総括

前提

本レポートでは、コンシューマー向けのEthereumレイヤー2であるAbstractの概要を解説します。
Abstractは、NFTブルーチップであるPudgy Penguinsの親会社であるIgloo Inc.が、2024年6月にWeb3クリエイター特化のプラットフォームFrameを買収したことで、オンチェーン文化の発展とコミュニティ構築をするためのネットワークとして立ち上げられました。
この立ち上げの背景には、ピーター・ティールのファウンダーズファンドが資金調達ラウンドをリードし、1100万ドルの資金調達が行われています。
オンチェーンで一般のユーザーができる体験やその価値は、未だ浸透しているとはいい難い状況です。主な課題としては、ユーザーエクスペリエンスやオンチェーンならではの価値を感じることができるアプリケーションの不足が挙げられます。
Abstractは、そのようなハードルを乗り越えて、クリエイターを中心にコンシューマー向けに特化したエコシステム構築を目指しています。執筆現在では、テストネットが稼働しています。本レポートでは、Abstractの概要を解説し、エコシステムの狙いを考察します。
なお、Web3エコシステムにおいてのコンシューマー向けのアプローチは今回から始まったものではありません。以下の関連レポートでは、コンシューマー向けをキーワードにアクセラレーションに参加したプロジェクトを紹介しています。本レポートと併せてお読みいただくことで、この領域に対してより理解が深められるはずです。

Abstract関連リンク

Abstractの概要

Abstractは、Ethereumのレイヤー2ブロックチェーンです。コンシューマー向けのアプリケーションに必要な処理性能を意識した技術を採用しています。
特徴的なのは、ZK Stackと呼ばれるロールアップ作成ツールを使用しているzk rollup(zkEVM)という点です。zk rollupはレイヤー2で実行されたトランザクションの結果から履歴の証明を作成し、これをEthereumに記録することでスケーリングを実現します。
EVM互換性があり、Ethereumで構築されたスマートコントラクトは、ほとんどAbstractでも稼働する事が可能で、最小限の変更でアプリケーションをAbstractに展開することができます。

Testnet

Property Description
| Name  | Abstract Testnet
| Description  | The public testnet for Abstract.
| Chain ID  | 11124
| RPC URL  | https://api.testnet.abs.xyz
| RPC URL (Websocket)  | ws://api.testnet.abs.xyz/ws
| Explorer  | https://explorer.testnet.abs.xyz
| Verify URL  | https://api-explorer-verify.testnet.abs.xyz/contract_verification
| Currency Symbol  | ETH
ドキュメントより引用

Abstractの狙い、エコシステムの方向性

Abstractが考えるWeb3コンシューマー市場とは、ブロックチェーンを活用したアプリケーションが、日常生活で個人ユーザーにとって利用されるシーンを指しています。
これが普及するプロセスについては、3つの段階があるとしています。
  • フェーズ1:娯楽支出:最初の5000万人のユーザーは、ゲームやソーシャルプラットフォーム、トレーディング、カジノ、デジタルコレクティブルなど、余暇を楽しむためのアプリケーションを中心。これらのアプリは、既存のWeb2の課題である高額な手数料や地理的な制限、検閲リスクを解決し、急速な普及を目指す。
  • フェーズ2:必需的支出:DeFi(分散型金融)、デジタルメディア、決済システムなど、生活の中で必要不可欠な分野に暗号資産が組み込まれ、利用が拡大する。ここでは、ユーザー数は2億5000万人に達することが目指す。
  • フェーズ3:基本的支出:最終的には、オンラインバンキング、クレジット、保険、投票など、生活のあらゆる面がオンチェーンで実現される世界を実現する。
しかし、フェーズ1までしか進んでおらず、普及は進んでいないとしています。この理由としては、汎用的なブロックチェーンが普及してきたことで、一般のブロックチェーンがアダプションに向けて十分に特化していないことにあるとされています。より焦点を絞り、コンシューマー向けの体験を最優先に構築することで、最終的なブレークスルーを目指すべきだと主張しています。
暗号資産でコンシューマー市場を狙う理由は、ブロックチェーンをなぜ活用するのかという話に近いです。決済手数料を大幅に削減できる、地理的制約や母国の技術的遅れによって銀行システムにアクセスできないユーザー向けにミニ金融サービスを提供する、一部のサービスプロバイダーによる集権的な利用制限や検閲のリスクを排除する、といった効果です。
フェーズ1に適しているのは、ゲームやカジノといった余暇を楽しむものであり、以下のような例が挙げられています。
  1. OpenSea - Digital collectibles
  2. Topshot - Digital collectibles
  3. Polymarket - Betting
  4. pump.fun - Social and tokenized culture
  5. Uniswap - Trading
  6. Rollbit - Casino
  7. Pudgy Penguins - Digital collectibles
  8. Friendtech - Social
  9. StepN - Social
  10. Axie - Gaming
最終的には、暗号資産で遊べるデジタル遊園地(インターネットのディズニーランド)のような構想にも言及しており、特化したアプローチで消費者体験を重視したアプローチで大量のユーザーをオンボーディングする狙いがあるようです。

https://abs.xyz/blog/articles/what-is-consumer-crypto


参考:What Is Consumer Crypto?

Panoramic Governance (PG) とは

レイヤー 2 ブロックチェーン内でのガバナンス参加とプロトコルの成長の両方を奨励するために設計されたAbstractが提案するガバナンスメカニズムです。
ブロックチェーンに関わるすべての関係者 (ユーザー、プロトコル、チェーン オペレーター) に適切なインセンティブが与えられるよう設計されています。
PG には相互に依存する 2 つのシステムがあります。1 つは、ネットワークに積極的に参加し、ガバナンスに投票する参加者にシーケンサー料金を分配するシステムで、もう 1 つは、ガバナンス参加者がブロックチェーン上で動作するプロトコルにトークン発行を割り当てることができるようにするシステムです。

シーケンサー手数料の分配

アクティブなガバナンス トークン保有者はシーケンサー料金の受取人となり、有意義な参加を奨励することができます。ネットワークは、アクティブ参加しきい値 (APT) と呼ばれるヒューリスティックを作成することで、「アクティブな」参加者を定義します。



このヒューリスティックは、特定のしきい値を超えるトランザクションの数、送信されたトランザクションの合計値、またはネットワークが選択したその他の基準などの要素に基づくとされます。

ガバナンス参加者によるトークン発行先の投票

Curve Financeのゲージメカニズムと似た仕組みです。ネットワークはトークンの一部をさまざまなプロトコルに分配して、その成長をサポートします。
ガバナンス参加者は各エポックで投票し、これらの排出が各プロトコルにどのように割り当てられるかを決定します。成功したプロトコルはより大きなガバナンスステークを獲得し、その結果、生成されたシーケンサー料金のより大きなシェアを獲得します。

新しいプロトコルは、ガバナンス参加者へのインセンティブとして独自報奨金トークンを提供し、より多くの排出量をプロトコルに割り当てるよう促すことで、成長を加速することができます。
PGは、Abstractを積極的に利用するユーザーに報いる報酬を与えるとともに、Abstractに展開されるアプリケーションが発展することができるサイクルを実現しようとする設計です。レイヤー2のシーケンサー(ブロック作成と順序付けを行うエンティティ)に利益が独占されず、利用者に還元する仕組みは他のチェーンでも成功事例がなく挑戦的な試みと思われます。

考察:あくまで想定ユーザーがいるかどうか、強力な競合はBase

ここまでのAbstractをまとめると以下のようになります。

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