アルゴリズミック・ステーブルコインの動向(1) マルチトークンモデル「Basis Cash」「Empty Set Dollar」の仕組み概説

目次

  • 前提
  • 債権トークンに依存するマルチトークンモデル|Basis Cash、Empty Set Dollar(ESD)
  • 総論

前提

2021年1月時点でのアルゴリズミック・ステーブルコインの動向を二本に分けて概観します。本レポート(1)ではマルチトークンモデルを採用するBasis Cash、Empty Set Dollarを取り扱い、別レポート(2)で、AMMの仕組みを応用したフラクショナル・リザーブモデルを採用するFraxの仕組みを紹介します。
アルゴリズミック・ステーブルコイン、つまり過去に一度終焉を迎えたBasisをはじめとする無担保型、シニョレッジ型ステーブルコイン群のことを指し、現在主流の法定通貨担保型ステーブルコイン(USDTやUSDCなど)や暗号資産担保型ステーブルコイン(DAIやsUSDなど)とは別の性格を持つステーブルコインです。
2020年はこのアルゴリズミック・ステーブルコインの実験が本格的に再開した年でもあり、AmpleforthやLien、Basis Cash、Empty Set Dollar、Reserve、Fraxなどのプロトコルやそれらをフォークしたコピープロジェクトが多く生まれています。現時点では価格安定性のなさ、持続可能性に対する懸念からただの投機対象として見られがちではありますが、執筆時点での法定通貨担保型に対する米国の規制強化の流れ(※関連レポート参照)は、世界に波及する可能性もあり、今後オンチェーン上で成立するステーブルコイン開発がより注目されるのではないかと筆者は考えています。
【関連レポート】
米国やFATFの暗号資産規制および、規制に準ずる暗号資産企業の制裁事例など重要な動向(2021年上半期版)
https://hashhub-research.com/articles/2021-01-06-key-trends-in-the-us-and-fatf-crypto-asset-regulations
またその上で現在オンチェーン資産の主流である過剰担保を前提とした暗号資産担保型は、決して資本効率の良いものではありません。アルゴリズミック・ステーブルコインの必要性は、より資本効率を高めたモデルを求める声に答えるもの(または個人がシニョレッジ収益を得るための手段として)であり、現在課題視されている価格安定性と持続可能性を解消しようとするプロジェクトがいくつか出てきています。
この手のプロジェクトでおそらく最も単純な仕組みを持つのがAmpleforthであり、AMPLという単一のトークンだけで1ドルへの再帰性を図るシングルトークンモデルです。アルゴリズミック・ステーブルコインプロジェクトは無担保を基本に米ドル価格への連動を目指すため、どのプロジェクトも共通して投機的な性質を帯び、集団心理に左右されながら価格が変動します。特にAMPLのようなシングルトークンモデルはこの集団心理の影響をダイナミックに反映するため、現在の市場規模ではボラティリティが高くなりステーブルコインとしての安定性に欠けています。(下図参照)
【関連レポート】
Ampleforth(AMPL)の概要 その仕組みや周辺アプリケーションの解説
https://hashhub-research.com/articles/2020-08-09-ampleforth-overview
参照:https://www.coingecko.com/ja/%E3%82%B3%E3%82%A4%E3%83%B3/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%B9

AMPLに関しては過去のレポートを参照いただき、本レポートではAMPLとは異なるマルチトークンモデルを採用するBasis Cash、Empty Set Dollarの仕組みを概観します。

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