Libraブロックチェーンに付随するLibra Investment Tokenを投資対象として考察する

目次

  • 前提
  • Libra Investment TokenとMKRトークンモデルに違いの整理
  • Libra Investment Tokenの保有者のインセンティブ
  • Libra Investment Tokenの利回りを検討する
  • ノード運営参加者の視線。a16zやUnion Square Venturesなど
  • 総論

前提

本レポートでは、Libraブロックチェーンに付随するLibra Investment Tokenを投資対象として考察をします。
Libraに関しての前提として下記のレポートを既に配信しています。
*レポート:Facebookがイニシアチブを取る独自通貨およびブロックチェーンであるLibraの基本的要件の概観
https://hashhub-research.com/articles/2019-06-27-libra-overview
*レポート:Libraに関する技術的観点で知っておくべきポイント。データ構造・コンセンサスアルゴリズム・パーミションレス化など
https://hashhub-research.com/articles/2019-06-27-libra-overview-points
*レポート:グローバル企業vs国家という観点でFacebookがイニシアチブをとる暗号通貨Libraを考察する
https://hashhub-research.com/articles/2019-06-27-global-company-vs-state
同トークンモデルについては上記のレポート中で触れているように、ノード運用者はミニマムで$10Mの出資と引き換えにLibra Investment Tokenを受け取ります。
Libra Investment Tokenの保有者は、Libra Reserveの運用利回りを得ることが出来ます。
利回りで得た資金を元にLibra Associationが運営され、その残余資金でLibra Investment Tokenの所有者への支払いが行われるとという順序です。
本レポートでは、Libra Investment Tokenのトークンモデル、投資対象としての同トークンを考えます。
なお、Libraは将来パーミションレスに移行をする予定であるとされており、その時にLibra Investment Tokenのトークンモデルも変容することが予想されますが、それについては一切考慮されていません。

Libra Investment TokenとMKRトークンモデルに違いの整理

Libra ReserveのトークンモデルとMakerDAOのMKRトークンモデルは似ています。
いずれのプロジェクトも、LibraCoinとDAIというStablecoinのようなアセットがあり、ガバナンス及び金利収集のためのトークンとしてLibra Investment TokenとMKRがそれぞれ存在するデュアルトークンモデルです。
なおLibra Coinについてはドルと連動している物ではなくStablecoinとは言い難いですが、比較対象としてちょうど良いため用いています。
Libra Investment TokenとMKRの両モデルにはいくつか違いがあり、下記のように整理できます。

Libra Investment Token

  • 担保アセット:法定通貨や国債をはじめとするアセットのバスケット
  • ガバナンスへの参加:トークンの保有量に限らず1%以上の議決権を得ることは出来ない
  • 金利を支払う主体:担保資産を預託する銀行や国債であれば発行国政府
  • 金利決定方法:担保資産の運用金利
  • 金利の受け取り方:トークンホルダーに配当を行う直接的手法

MKR(MakerDAO)

  • 担保アセット:ETH。今後その他の暗号通貨も担保に含まれる
  • ガバナンスへの参加:1トークン=1票
  • 金利を支払う主体:DAIを生成するCDP開設者
  • 金利決定方法:トークンホルダーによるガバナンスで決定
  • 金利の受け取り方:バーンを行いトークンの希少性を高める手法で間接的
この点を踏まえた上でMKRと似たような手法でトークンの評価を算定することが出来るでしょう。
*レポート:MakerDAOのガバナンストークンであるMKRを投資対象として検討する。将来価値を考えるために見るべき指標、考え方
https://hashhub-research.com/articles/2019-03-07-mkr-analysis

Libra Investment Tokenの保有者のインセンティブ

Libra Reserveの資金は低ボラティリティアセットに投資がされ、これはLibra Investment Tokenの所有者へ還元されます。
Libra Coinはユーザーの法定通貨での購入によって生成されることから、Libra Reserveの資金とLibra Coinの供給量は比例します。
ユーザーがLibra Coinを生成しても、それと同時にLibra Investment Tokenは新たに生成されるわけではなく、Libra Investment Tokenの一口あたりの期待利回りが上昇するだけです。
つまりLibra Investment Tokenの保有者にとって、ユーザーがどれだけLibra Coinを購入し、Libra Reserveの資金量が増えることおよび、Libra Coinのマネタリーベースを上げることが出来るかが重要なポイントになります。
今回ノード運営に参加している事業者は最低$10Mを投資しており、その投資のリターンはどれだけLibra Coinが流通するかによって決まり、より流通させるインセンティブを持たされていると言えます。
なおガバナンスの観点では上述したようにトークン保有量に限らず、議決権は1%以上を保持出来ないため、議決権としてのトークン価値よりインカムゲインの観点でトークン価値を分析するほうが適切であると筆者は考えています。

Libra Investment Tokenの利回りを検討する

Libra Investment Tokenの目安利回りを考えましょう。
同じくバスケット通貨であるIMFのSDRは、国際通貨基金(IMF)は、執筆時点で1.05%ほどの年間金利で構成されています。
これと似たような資産に運用するであろうことからLibra Investment Tokenでの金利も同程度に収束するのではないかと予測できます。
担保資産は米国債など高い利回りを期待できるアセットのみに投資をすればより高い利回りを期待できるはずですが、地理的に分散したアセットに投資をすることも担保資産の条件であるので、恐らく1%台になるでしょう。
つまり$1Billion(約1100億円)の運用金額あればおおよそ$10M(約11億円)の利回り、$10Billion(約1兆円)の運用金額があれば$100M(約110億円)の運用利回りが発生します。
これまでのStablecoinは暗号通貨取引の媒介であることが主なユースケースでした。
これに対して、Libra Coinは現実世界で使用されることを目指しており、ノード参加の条件には月間2000万ユーザーにアクセスできる事業者でなければいけないということも含まれています。
このことから大きいアダプションを目指していることは間違いありません。
執筆時点で最も流通しているStablecoinのTetherの供給量は$3.5Billion(約3800億円)、次に流通しているUSDCoinは$350Million程度です。
これを前提にシミュレーションとして、仮にLibra Coinが今のTetherの10倍程度の規模まで流通したとしましょう。
つまり$35Billion(約3.8兆円)程度です。
このときリザーブ資産を1%で運用をすると、$350Mの収入があります。
Libra Investment Tokenの保有者が100で全保有者が同量のトークンを保有していた場合、それぞれ$3.5Millionの収入を得れます。(Libra Associationの運営費は考慮されていません。)
各ノードの出資金額は$10Millionで固定であるとした場合、この場合、年間利回りは約30%です。
Libra Investment Tokenを100以上の新規発行、希薄化をすることなく、これだけLibra Coinが流通する場合、Libra Investment Tokenへの投資としても各事業者は成功であると言えるでしょう。

ノード運営参加者の視線。a16zやUnion Square Venturesなど

Libraのノードの初期参加者には、シリコンバレーのトップファンドであるa16zやUnion Square Venturesも参加しています。
彼らもLibra Investment Tokenを保有していますが、本レポートの最後に彼らの視点を紹介します。
a16zでは、インターネットが成長しコミュニケーションやオンデマンドで食事などが簡単に注文出来るようになりましたが、internet of valueは未だ実現していないことに触れています。
同プロジェクトについて技術的な観点、金融的観点、ガバナンスの観点で未だ不明な点があるとしながらも、コントリビュートをするつもりであるという旨のブログが綴られています。
Union Square Venturesは、Libraが暗号通貨・暗号資産市場をメインストリームに持ち込むきっかけとなるポテンシャルがあることを評価しています。
巨大なユーザーベースのアプリケーションで担保資産によってハックされている暗号通貨を使用できることはユーザーに受け入れられやすいはずであるとしています。
Libraによって、ペイメント、デジタルアイデンティティも変容し、ユーザーがプライバシーやデータをコントロールできるようになる可能性もあるだろうとしています。

総論

本レポートでは、Libraブロックチェーンに付随するLibra Investment Tokenを投資対象として考察しました。
同トークンは、しばらく二次流通市場では流通していないものの、再販制限期間を過ぎればSecurityTokenの二次流通市場で売買されることもあるでしょう。
また売買や投資自体には関心がない方からも、この規模のプロジェクトのトークンモデルは高い関心が集まることは間違いありません。

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