ステーブルコインのホワイトラベルビジネス(Stablecoin as a Service)、PaxosとEthenaの比較
2025年10月06日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- ホワイトラベル型ステーブルコインとは
- Paxosのホワイトラベル型ステーブルコイン・ビジネスモデル
- PYUSDの収益規模
- Ethenaのホワイトラベル型ステーブルコイン・ビジネスモデル
- 収益規模の推定
- ホワイトラベル型ステーブルコインの実装比較
- Paxos 型と Ethena 型の違い
- 総括
ステーブルコインは、暗号資産業界でも今や市場規模も決して無視できない水準に達しています。2025年時点では、世界のステーブルコインの総発行量(時価総額)はおおよそ3,000億ドル前後にのぼり、現在のところはUSDTやUSDCがその大半を占めています。
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しかし、目下では「ステーブルコインの2強時代が終わるのでは」という言説も見受けられます。その要旨としては、発行コストの低下・利回り競争・規制変化と銀行参入という潮流があるというものです。
しかし、目下では「ステーブルコインの2強時代が終わるのでは」という言説も見受けられます。その要旨としては、発行コストの低下・利回り競争・規制変化と銀行参入という潮流があるというものです。
このような拡大のなかで、法人やプラットフォーム運営者の間で「自前でステーブルコインを展開したい」というニーズが高まりつつあります。ただ、自らステーブルコインを設計・運用するには、担保構造、償還性・流動性設計、規制対応、内部統制、透明性確保など、ハードルが非常に高いのが実情です。
そこで注目されているのが、ホワイトラベル型ステーブルコインという手法です。いわゆる、Stablecoin as a Service(SCaaS)です(SCaaSは定義が曖昧なため、本レポートでは、ホワイトラベル型ステーブルコインで統一)。
専門のステーブルコイン発行基盤が裏側を担保・運用・監査・開示などを請け負い、各企業・チェーン・プラットフォームは自社ブランドでステーブルコインを展開できるようになります。
すでにPaxosは、PayPalとの提携でPYUSDを実運用に乗せ、他方でDeFi起点の発行モデルを展開する Ethena は、USDe(合成型ドル)と USDtb(トークン化T-Bill型)のハイブリッド設計を白ラベルで提供する戦略を打ち出しています。このようなモデルは、単なる利回り設計だけでなく、エコシステムへの経済性導入という視座を提供します。
つまり、ホワイトラベル型ステーブルコインは、企業やチェーン運営者にとって、「自前で設計・運用せずにブランド付きのステーブルコインを持つ」道を開く選択肢であるという点で、今後大きく注目を浴びるのではないかという仮説があります。その背景には、規制環境の整備と法人側のステーブルコイン需要の高まりという二つの外部要因があります。
本レポートでは、代表的なホワイトラベル型ステーブルコインのモデルを展開するPaxosと、新興でありながらも存在感を増すEthenaのモデルを比較します。
ホワイトラベル型ステーブルコインとは
ステーブルコインの発行モデルは大きく二つに分けられます。
ひとつは、CircleのUSDCやTetherのUSDTのように発行体が自らブランドを冠して直接発行するモデルです。もうひとつが近年注目されているホワイトラベル型であり、これは「裏側の発行・担保・監査・償還などを専門の事業者が担い、企業やプラットフォームは自社ブランド名でステーブルコインを発行できる」仕組みを指します。
Paxosはこの分野の先行事例です。ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の認可を受けた信託会社として、準備資産の分別管理、月次のアテステーション、1:1の償還義務を伴う体制を公表しています。
この枠組みを利用し、PayPalは2023年に自社ブランドのドル建てステーブルコイン「PayPal USD(PYUSD)」を発行しました。ここで重要なのは、PayPal自身が準備資産を直接保有・管理するわけではなく、Paxosが発行体として法的責任を担い、PayPalは自社のユーザーベースに対して独自ブランドのステーブルを提供しているという役割分担です。
関連レポート:PYUSD|PayPalのステーブルコイン戦略とその影響
このようにホワイトラベル型ステーブルコインとは、「ブランド」と「基盤運営」の役割を切り分け、法人やチェーン運営者が独自の経済圏を築けるようにする仕組みと整理できます。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。