Tetherの米国戦略を読み解く:「USAT」は“USDCを倒すため”ではないと考える理由

2025年09月18日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 概要
    • Tetherの発表と人事
  • Tetherの米国戦略を読み解く
    • 狙いは“規制ヘッジ”と“米国での席の確保”
    • “USDC対抗”としての差別化は薄い
    • 最大の制約は“流動性の自動移転が起きない”こと
    • 誰に刺さるのか——想定ターゲットは“米国の機関・大企業”
  • 総括
世界最大のステーブルコイン発行体であるTetherが、米国市場向けの新トークン「USAT」の計画を明らかにしました。米国外で圧倒的なシェアを誇るUSDTに加え、米国の新たな包括法(GENIUS法)に準拠した“オンショア版”を併走させることになります。
加えて、トランプ政権下の暗号資産政策に関与したBo Hines氏が、米国展開を主導する人事が相次いで報じられました。
本レポートでは、今回の発表経緯とその背景をみながら、今後テザーのUS戦略を考察します。

概要

2025年7月、米連邦法としてGENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)が成立・署名され、ステーブルコインの発行枠組み・準備資産・開示・監督が連邦レベルで制度化されました。連邦議会サイトで公開され、ホワイトハウスもファクトシートを公表しています。

Tetherの発表と人事

Tetherは米国市場向けの新しい米ドル連動型ステーブルコイン「USAT」の計画を公表し、Anchorage Digital Bankを発行体、Cantor Fitzgeraldを準備資産のカストディとする設計が主要メディアで報じられました。
Bo Hines氏がこの米国展開を主導(一部メディアは「米国法人CEO」と表現)するとも伝えられています。併せて、Tether公式は8月19日付でHines氏を“米国戦略の戦略アドバイザー”に任命したと発表しています。
Tether unveils USAT stablecoin to boost US market presence

USATは米国内居住者・事業者をターゲットに、GENIUS法準拠の「オンショア」運用をうたう一方、USDTは海外発行体として継続する二層構造です。ニューヨークでの記者発表では、年内〜2025年末のローンチ目標、本部機能をノースカロライナ州シャーロットに置く旨、利回り提供の予定は現時点でないことなどが語られています。
補足:本稿執筆時点で、Tetherの公式ニュースルームではHines氏のアドバイザー任命は一次情報として確認できますが、USATのホワイトペーパーや条項類の詳細は未掲出です(会見報道が主)。

Tetherの米国戦略を読み解く

狙いは“規制ヘッジ”と“米国での席の確保”

USDTはグローバルに巨大な流動性を持ちますが、米国内ではKYC/AML、制裁対応、移転制御などオンショア特有の要請が強まります。
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