USDCxとは何か ―xReserveが実現する、一般的なブリッジでは満たしにくい機関向けUSDC展開方法
2025年12月17日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- はじめに
- USDCxって何?
- USDCとUSDCxの違い──なぜブリッジでは足りないのか
- Deposit to Remoteでは何が起きているのか
- Withdrawは「1回で終わる送金」ではない
- 総括:xReserveとUSDCxが示しているもの
はじめに
xReserveは、見た目だけを見ると「USDCを別のチェーンで使えるようにする仕組み」≒「ブリッジコントラクト」のようにも見える。
実際、利用者の体感としてはそう見えても不思議ではない。
ただし、xReserveの設計思想や実際の挙動を追っていくと、一般的に想像される第三者運営のロック&ミント型のクロスチェーンブリッジとは、かなり発想が違うことが分かる。
xReserveが向き合っているのは、送金の速さや手数料の安さといった分かりやすい指標というよりも、発行体責任、監査可能性、規制対応といった、機関向け金融基盤を前提にした場合に避けて通れない、より現実的で重たい要件になる。
このレポートでは、xReserveとUSDCxが「何をしているように見えるか」ではなく、「何を重視して設計されているのか」という観点から、その仕組みを整理していく。まずはUSDCxとxReserveの考え方を整理し、なぜ「ブリッジと似て見えて別物なのか」を押さえる。そのあとで、実際のトランザクションを見ながら、この仕組みがオンチェーン上でどう動いているのかを順に追っていく。
本稿を通じて、読者は「USDCを別チェーンで使える」という表面的な理解にとどまらず、
- そのUSDCがどの主体の責任のもとで有効とされているのか、
- 状態の変化が誰によって、どのように証明されているのか、
- なぜこの構造が機関向けの実務や規制環境と親和的に設計されているのか、
といった点を、オンチェーンの動きと結びつけて捉える手がかりになるはずである。xReserveやUSDCxを「新しいブリッジの一種」としてではなく、発行体責任を前提にUSDCを複数の実行環境へ展開するための公式インフラとして捉え直す。そのための視点を、このレポートで共有したい。
※補足(読み飛ばしOK):ここから少しだけ「Etherscanでの見え方」の話をする。仕組みの結論(=発行体責任でUSDCxが成立する)は変わらないが、オンチェーン観測を誤解しないための注意点だけ先に置いておく。
xReserve関連コントラクト群は、入口(ユーザーが触るアドレス)と中身(実際の処理)が別になっている。そのため、Etherscanで入口を見てもロジックが見えにくく、「実装側のABI」が別に案内される。また、状態(残高や設定値など)も、Etherscanの画面だけでは全体が見えない作りになっている。
本稿ではこの点を踏まえ、Etherscan上で観測できる「入口としての挙動」と、実装コードから読み取れる「意図された制約・責任設計」を切り分けて整理する。
USDCxって何?
USDCxは、USDCのコピーでも、第三者が勝手にラップして作った代替トークンでもない。
少し噛み砕いて表現すると、USDCxは、USDCを“別のルールで使うための公式な姿”だと考えると分かりやすい。
USDCxが生まれるまでの流れは、次のように整理できる。
まず、Ethereum上のUSDCがxReserveというCircle公式の仕組みに入る。ここで起きているのは、USDCが別チェーンへワープしたという話ではない。大事なのは「Ethereum上で二重に使えない状態に切り替わった」ことで、その状態変更をあとで証明できる形にする。
見た目としては、USDCが特定のアドレス(nullアドレス)へ送られ、「バーン」に見える動きが入るが、これは「誰かの資産を勝手に消した」という意味ではなく、USDCxを出すために必要な“状態の確定”として使われている。
次に、その拘束が事実であることを、Circle自身がattestation(署名付きの証明)として発行する。この証明は、「確かにこのUSDCは公式に拘束されている」「裏付けとして使ってよい」ということを示すものになる。
そして、このattestationを根拠として、Canton(金融機関向け許可制・規制対応型DLT)やAleo(プライバシーを標準搭載したゼロ知識証明ベースDLT)といったリモートチェーンで、新しくUSDC-backedstablecoinがミントされる。これがUSDCx。
ここで重要なのは、attestationが単なる「メッセージ」ではなく、
- どのUSDCが
- いつ
- どの公式フローで拘束されたか
を、発行体自身が署名付きで確定させる、再検証可能な事実になっている点にある。
これによりUSDCxは、「このトークンはどこから来たのか」「なぜこの残高が正当なのか」を、ブリッジ運営者ではなくUSDC発行体の責任で説明できる構造を持つ。これは監査や規制対応の文脈では、技術的な利便性以上に決定的な意味を持つ。
USDCとUSDCxの違い──なぜブリッジでは足りないのか
USDCは、どのチェーンにあっても基本的に同じ性質を持つ、汎用的なドル表現として設計されている。
誰が、どこで、どう使っても、“同じ性質を目指している”USDC。
一方でUSDCxは、「どの環境で」「どのルールのもとで」「どの主体が使うのか」が、最初から決められている。
これはUSDCの価値を削っているわけではなく、むしろ、実務や規制の前提に合わせて、USDCの使われ方を整理し直しているだけだと言える。
ここで重要なのは、なぜ普通のクロスチェーンブリッジでは、この整理ができないのかという点になる。
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