Morpho:パーミッションレスVaultとキュレーターの役割の考察
2025年01月23日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- Morphoの概要
- パーミッションレスなVaultによる柔軟なリスクマネジメントを可能にする
- Vaultのリスクプロファイル・リワードを見る
- Morphoのリスク分析
- 不良債権リスク
- 金利モデルのリスク
- オラクルリスク
- ERC-4626 Vaultのスリッページと価格変動リスク
- Morphoの監査状況
- AaveやCompoundにないリスクエクスポージャーとキュレーターの存在を考察
- 総括
本レポートでは、Ethereum、レイヤー2のBaseに展開されているDeFiレンディングプロトコルであるMorphoを概観し、筆者の考察を行います。
Morphoは、ローンチ当初はピア・ツー・ピア(P2P)のレンディングプロトコルとして公開され、AaveやCompoundをベースレイヤーとし、より有利な金利での貸し借りを可能にする点を訴求したプロトコルでした。現在ではこのプロトコルはMorpho Optimizerという名称となっており、メインプロトコルではなくなっています。詳細は以下のレポートをご覧ください。
現在は、ERC-20トークンをVault(ERC-4626準拠)ごとに管理し、過剰担保レンディングを可能にする分散型プロトコルが主要とされています。CoinbaseがBase上のMorphoを利用したBTC担保ローンを提供したことでも話題となったプロトコルです。
DeFiLlamaによれば、TVLは380億ドル(旧プロトコルを含む)を超えており、ガバナンストークンMORPHOの価格も、TVLと相関する形で堅調に推移しています。
https://defillama.com/protocol/morpho?tokenPrice=true
特にリブランド後のプロダクト「Morpho (Blue)」のTVLは約340億ドルに達しており、これがMorpho全体の成長ドライバーになっていると考えられます。
https://defillama.com/protocol/morpho-blue#information
本レポートでは、Morphoの概要や投資家視点で必要なプロトコルの仕組みを解説するとともに、リスクについて検討します。また、MorphoにおけるVaultのキュレーター(もしくはオーナー)という存在が持つ意義や、インセンティブのあり方について考察します。
特にリブランド後のプロダクト「Morpho (Blue)」のTVLは約340億ドルに達しており、これがMorpho全体の成長ドライバーになっていると考えられます。
本レポートでは、Morphoの概要や投資家視点で必要なプロトコルの仕組みを解説するとともに、リスクについて検討します。また、MorphoにおけるVaultのキュレーター(もしくはオーナー)という存在が持つ意義や、インセンティブのあり方について考察します。
読者は本レポートを読むことで、Morphoが成長してきた背景の仕組みや、DeFi投資としての利用価値、リスクについて理解を深めることができます。
参考文献・リンク
- 公式サイト:https://morpho.org/
- 公式ドキュメント:https://docs.morpho.org/
- Github:https://github.com/morpho-org
- Audit:https://docs.morpho.org/security-reviews/
- ホワイトペーパー:Morpho Blue Whitepaper (October 2023)
Morphoの概要
基本的にはレンディングのDeFiプロトコルと機能は同じですが、以下の観点でMorphoは特徴のあるアプローチを行っています。
ここでは、主要な機能であるVaultにのみフォーカスして解説します。
パーミッションレスなVaultによる柔軟なリスクマネジメントを可能にする
従来のレンディングプロトコルでは、ガバナンストークンのホルダーがDAOのリスクマネジメントに参加するメカニズムとなっており、DAOの決定によりリスティングするトークンやプロトコルのパラメーターの調整を行うのが一般的です。
しかし、このようなアプローチでは、リスクプロファイルに柔軟性をもたせることが難しく、リストされるトークン数にも限界があります。
そこで、Morphoは、許可不要(パーミッションレス)なVault(市場)を作成できるようにし、リスクマネジメントとそれに参加する選択をユーザー自身に委ねるように設計されています。
https://docs.morpho.org/morpho/concepts/externalized-risk-management
このVaultを作成する存在をキュレーター(Vaultの作成者はオーナー)と呼び、Morpho Vaultsプロトコルに複数のVaultが存在することになります。資金の貸し手は、これらのVaultのリスクプロファイルとリターンを理解して資金を供給する余地が与えられ、リスクマネジメント(どのようなリスクをとるか、その代わりにリターンを得るか)はキュレーターに委任できます。
このVaultを作成する存在をキュレーター(Vaultの作成者はオーナー)と呼び、Morpho Vaultsプロトコルに複数のVaultが存在することになります。資金の貸し手は、これらのVaultのリスクプロファイルとリターンを理解して資金を供給する余地が与えられ、リスクマネジメント(どのようなリスクをとるか、その代わりにリターンを得るか)はキュレーターに委任できます。
つまり、キュレーターは、どのトークンを採用するか、Morphoプロトコル(上図でいう最下層)市場にどのように割り当てるのか、LTV(ローントゥバリュー)、オラクル、金利モデルをユーザーの代わりに評価・マネジメントする権限を持ち、キュレーターが適切な市場を選択してVaultが公開されることになります。
このキュレーターは、DAOや他のDeFiプロトコル、機関投資家、個人投資家などあらゆるエンティティが想定されており、パーミッションレスです。
このキュレーターは、DAOや他のDeFiプロトコル、機関投資家、個人投資家などあらゆるエンティティが想定されており、パーミッションレスです。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。