なぜ今、Oasysなのか 新たな体験価値と投資概念をもたらすブロックチェーンゲームインフラ
2024年11月05日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- Oasysとは
- Oasys(レイヤー1)の現状
- データの可用性でユーザーのデジタル資産を守る
- Verseの相互運用性を強化する
- エコシステムの拡張性を最大化する
- 技術ロードマップ
- OASトークンの可能性
- ゲームトークンとOASの価値連動
- BinanceやCoinbaseに未上場であることの影響と可能性
- 主なVerseの現状
- Chain Verse
- TCG Verse
- Saakuru Verse
- SG Verse
- 競合ブロックチェーンとOasysの比較
- Immutable
- Ronin
- Oasysの優位性
- Web3エコシステムにおけるゲーム領域の現状から考えるOasysの展望
- Web3エコシステムにおいてゲーム領域は成長分野
- Web3要素の段階的な導入でゲーム市場の活路を見出すWeb3参入成功事例
- Oasysの展望 消費で終わらないゲームインフラとして独自の価値を確立する
- 総括
前提
本レポートでは、ゲーム向けに特化されたブロックチェーンOasysの現状について考察し、ブロックチェーンゲーム業界のトレンドの中で、なぜ今Oasysに注目すべきなのかを解説します。
既に日本の大手ゲーム開発企業がOasysへ参加し、複数のブロックチェーンゲームがローンチされ、そのエコシステムはOasysというプラットフォームで一体となり急速な成長を遂げています。
一方で、ゲーム人口は世界で数十億人と推定されていますが、ゲームはソーシャルメディアやショート動画などと可処分時間の奪い合いで競争が激しくなっています。その結果、ゲームの新作は売れ行きが悪く、人気トップゲームが10年間変わらないような現状があり、さらにサービス終了とともに消費されるような状況が続いている、といいます。
Web3業界において、ブロックチェーンゲーム(GameFiなど)は注目されつつも、グローバルでの爆発的なマスアダプションには至っていません。この背景には、既存のゲーム市場が飽和状態にあること、そして、汎用ブロックチェーン上のユーザーエクスペリエンスがゲームに特化していないことなど、複数の課題が存在しています。そのため、ブロックチェーンゲームが一般ユーザーに受け入れられるためには、新しい価値観や体験を提供するパラダイムシフトが求められているといえるでしょう。
Oasysは、既存のゲームや汎用ブロックチェーンでは実現が難しい、ゲーム特化のユーザーエクスペリエンスを提供し、ユーザーがゲーム内で得たデジタル資産を長期的に活用できる仕組みを整えている点で、日本のみならずグローバルでも高い評価を得ています。このような体験価値を重視したアプローチにより、従来の消費型エンターテインメントとは異なる魅力を提供しています。
本レポートではブロックチェーンゲームに興味のある読者がOasysエコシステムの現状理解を深めること、ゲーム開発企業がOasysエコシステムに参入するメリットにフォーカスします。
読者は、ブロックチェーンゲーム業界の成長性・投資トレンドなどのマクロ的な視点と今後のOasysの展望を踏まえれば、ゲームをプレイするにもローンチするにもOasysが最適なインフラの筆頭であろうことが理解できるはずです。
【Oasys関連リンク】
- 公式サイト:https://www.oasys.games/
- ホワイトペーパー:https://docs.oasys.games/docs/whitepaper/intro
- エクスプローラー:https://explorer.oasys.games/
- X:https://x.com/oasys_games
- Discord:https://discord.com/invite/oasysgames
レポートサマリー
- 本レポートは、Oasysの強みと成長ポテンシャルを、ブロックチェーン業界のトレンドやゲーム業界の課題を踏まえながら解説し、Oasysが業界のニーズに応えるインフラとして独自の地位を確立する可能性について論じている
- 汎用ブロックチェーンはゲーム用途に最適化されておらず、ゲームごとに特化した開発が難しい。また、成熟したゲーム市場では新作が売れにくく、ユーザーエンゲージメントの維持も難しいため、持続的なビジネスモデルの構築が求められている
- Oasysでは40以上のゲームが稼働し、多くの日本企業や開発者が参画するエコシステムが急速に成長している。今後、Binanceなど主要取引所への上場が期待されており、トークンの流動性と認知度の向上が見込まれる
- Oasysは共通データ規格やAPIの標準化、Verse間の相互運用性を強化し、異なるゲーム間でシームレスにデジタル資産を活用できるインフラを構築する予定。また、Arbitrum Orbitの統合やDeFi機能の強化により、エコシステム内での資産運用が可能になり、ユーザーのデジタル資産の有効活用がさらに促進される
- Web2ユーザーが自然にWeb3要素に触れ、エンゲージメントが高まるアプローチが、ゲームの収益化にとって重要な鍵となり得る可能性がある。『Champions Tactics』や『De:Lithe Last Memories』では、NFTやトークンを通じて資産性を提供し、ユーザーに自然なWeb3体験に触れさせることで、成熟したゲーム市場において新たな収益モデルを模索し活路を見出している。Oasysは、このようなアプローチに適したインフラを提供しており、今後も多くのブロックチェーンゲームがOasysで展開されることが期待されている
Oasysとは
なお、Oasysの基本的な概要については、以下の関連レポートで詳細に解説しています。今回は、より踏み込んだエコシステムの現状と展望を解説しますので、併せてご覧いただくことでより理解が深まるでしょう。
今回のレポートを読み進める上で必要な用語について、以下に簡潔に整理しておきます。
Oasys 基本用語
- Oasys:EVM互換性のあるゲーム特化のProof of Stake(PoS)を採用したレイヤー1ブロックチェーン。バンダイナムコ、セガ、スクウェア・エニックスなど大手ゲーム開発企業がエコシステムに参加する。2層目として各ブロックチェーンゲームが稼働するVerseレイヤーのHubとなる存在で、ゲーム体験を最適化するためのデータの安全性と強固なセキュリティを担う。
- Verse:各ゲーム開発企業などのサードパーティが、ゲームを開発するOasysをレイヤー1とするレイヤー2。ゲームに必要な高速処理、ガスレス体験、各ゲームに特化した独自のトークノミクスに対応できる柔軟性を備える。
- OASトークン:Oasysエコシステムの基軸通貨。Oasys上でのガス手数料、Verse開発時のデポジット、ガバナンス、ステーキング報酬などの役割を持つ。
Oasys(レイヤー1)の現状
本節では、なぜOasysがゲームに特化したユーザーエクスペリエンスを提供することができるのかといった背景とロードマップを解説します。
執筆現在のOasysのバリデーター参画企業の現状は、以下のとおりです。
Oasysのローンチから執筆現在までの合計ユニークアクティブウォレット、合計トランザクション数、OASトークンの時価総額の推移は、以下のとおりです(DappRadarより引用)。
Oasysのローンチから執筆現在までの合計ユニークアクティブウォレット、合計トランザクション数、OASトークンの時価総額の推移は、以下のとおりです(DappRadarより引用)。
- 合計ユニークアクティブウォレット数:4,100万
- 合計トランザクション数:1.86億
OASトークンの時価総額の推移
データの可用性でユーザーのデジタル資産を守る
Oasysのデータの可用性は、ブロックチェーンゲームがもたらすデジタル資産の概念を最大限に活かす取り組みです。
Oasysは、各Verseのゲームデータを記録し、参加するバリデーターがデータの可用性を検証する役割を担います。セキュリティの安全性に特化しており、Verseごとに記録されるデータの保存先なのです。
従来のゲームでは、開発が中断されたりサービスが終了すると、ユーザーが獲得したアイテムが失われるリスクがあります。ブロックチェーンゲームでは、アイテムがデジタル資産としてブロックチェーンに記録されるため、資産が消失する心配はありませんが、活用する場がなければその価値を十分に発揮できないと感じるユーザーもいるでしょう。
Oasysは、Verseのゲームで得たデジタル資産をOasys(レイヤー1)に同期し、異なるゲーム間での活用を可能にするインフラを実現しようとしています。これにより、ゲーム開発者は相互運用を前提にした設計を行いやすく、ユーザーは複数のゲームで同じデジタル資産を活用できるため、途切れないゲーム体験を享受できる場が広がると考えられます。
これは、ゲームのために時間や資金を投資したゲーマーを最も重要な存在として守るための必要不可欠な技術なのです。
これは、ゲームのために時間や資金を投資したゲーマーを最も重要な存在として守るための必要不可欠な技術なのです。
Verseの相互運用性を強化する
Verseでは、テーマごとに複数のブロックチェーンゲームが開発されます。Oasysでは現在12ものVerseが存在しており、それらをクロスチェーンでシームレスに相互運用できるようにすることで、ブロックチェーンゲームならではの体験を強化しようとしています。
共通のデータ規格を採用しAPIを標準化することで、異なるVerse間であってもゲーム内で獲得したデジタル資産を移転することが容易となります。
共通のデータ規格を採用しAPIを標準化することで、異なるVerse間であってもゲーム内で獲得したデジタル資産を移転することが容易となります。
エコシステムの拡張性を最大化する
Verseは、ブロックチェーンゲーム開発企業や、サードパーティとして個人が独自に立ち上げる必要があります。Verseの立ち上げを促進するためには、技術的なサポートが不可欠です。
Oasysでは、ゲーム開発者が、コンテンツの開発に集中しより迅速にVerseを立ち上げられるような開発者キット(Oasys VDK)を提供します。企業や開発チームは、事前に設定されたツールからVerseを立ち上げることができるため、技術的・人的なリソースを大幅に削減することが可能となります。
さらに、Oasysは、Arbitrum Foundationと提携し、レイヤー2の作成ツールであるArbitrum Orbitを統合しました。これにより、Arbitrum Orbitを使用してVerseの立ち上げが可能となります。
ArbitrumはDeFiが成熟している流動性豊富なエコシステムであり、今後OasysとArbitrumの提携により、Verseの流動性向上の可能性が開かれることになります。
技術ロードマップ
Oasysは、既存のエコシステムの安定性と拡張性に重点をおきながら、新たに参加するユーザー、ゲーム開発企業をサポートしていく技術ロードマップを策定しています。
2024年7月に発表されたロードマップの予定は以下のとおりです。
短期(1年以内)
- 共通のデータ規格とAPIを標準化
- 標準化規格のデジタル資産を現行のゲームに適用しユースケースを作る
- Oasys VDKの提供
中期(2〜3年)
- Verseにあるデジタル資産をレイヤー1へ同期する機能の実装
- Verse間での相互運用性の実現
- ゲーム開発者が自律的に独自のニーズを満たすことができる開発ツールの提供
Oasysエコシステムにおけるゲームのユーザーエクスペリエンスを最適化するためには、ウォレットやDeFiプロトコルなどとのパートナーシップ連携の強化も必要です。短期的には、Verseを立ち上げる容易な環境を作り、中期的には作り上げた土台をさらに発展させていく予定です。
Oasysバリデータへの参加、およびVerseの立ち上げ、ゲームの展開についてはこちらのフォームよりコンタクトを取ることができます。
OASトークンの可能性
OASは、Oasysエコシステムの基軸通貨であり、エコシステム全体の成長と密接に関わっています。本節では、OASがどのようにしてOasysエコシステム内のゲームトークンの価値と連動しているのか、そのメカニズムについて詳しく解説します。
また、OASが現在主要取引所であるBinanceやCoinbaseに上場していないという状況を踏まえ、このことがトークンの評価にどのように影響を与えているかについても考察します。
ゲームトークンとOASの価値連動
Oasysは、ゲーム開発者がプロジェクト用に独自のゲームトークンを発行できる環境を提供しています。これらのゲームトークンは、プレイヤー間での取引やゲーム内での使用を通じて価値を獲得します。
ゲームトークンがエコシステム内で広く使用され、その利用価値が蓄積されることで、Oasysエコシステム全体の経済基盤が強化されるように連動します。このプロセスが、OASの価値を支える役割を果たすことができます。
この結果、Oasysエコシステム内でのゲームトークンや資産の蓄積が進むにつれて、OASの価値が安定し、さらにその成長を支える基盤が強化されるメカニズムが働くようになっています。
BinanceやCoinbaseに未上場であることの影響と可能性
OASは、執筆現在では世界的に大きな影響力を持つ暗号資産取引所のBinanceやCoinbaseに上場していません。これは流動性の制約となっていることを意味し、過小評価の要因の一つと考えられます。
しかし、OASは世界的にも有力な韓国の暗号資産取引所Upbitに上場しており、日本国内でも複数の暗号資産取引所に上場しています。OASはUpbit上場時には、OASは前日比44%上昇したことからも、BinanceやCoinbaseへの上場が実現すれば大きな流動性がOASにもたらされることになり、さらなる価格上昇の可能性を見込むことができるはずです。
主なVerseの現状
OasysのVerseには、現在40を超えるゲームタイトルがローンチされており、その中には日本で人気のあるIPとのコラボレーションによって実現されたゲームもあります。
Oasysでは、Verseごとの経済圏で複数のゲームが展開されています。ここでは、各Verseのエクスプローラーを参照し累計ウォレットアドレス数(アカウント数)が多い上位3つのVerseと、最も期待されている最新のVerseを取り上げ、それぞれの現状と人気ゲームの概要を解説します。
Chain Verse
Chain Verseは、ゲーム開発を行うChainGuardiansが展開したVerseです。このVerseでは累計300万を超えるアカウントが参加しており、Verseの中でも最もユーザー数が多いVerseです。中でもChain Arenaが人気です。
Chain Arenaは、Web3対応の放置系RPGゲームです。プレイヤーがアクティブでなくても進行する仕組みを採用しつつ、RPG要素を組み合わせています。ゲーム報酬として獲得できるアイテムやキャラクターをNFTとして取引できます。
直近1ヶ月ではユニークアクティブウォレット数は3万を超えており、2024年8月よりアクティビティが上昇傾向にあるゲームです。
TCG Verse
TCG Verseは、トレーディングカードゲームが主軸のVerseで、カードゲームやカジュアルゲームが複数展開されています。累計250万以上のアカウントが参加しています。
直近1ヶ月間のユニークアクティブウォレット数は5万を超えるほど急成長しており、シンプルなゲーム体験とバリデーター報酬(CryptoGames社運営)を原資にするサステナブルな仕組みが人気の理由です。
参照:OasChoice
Saakuru Verse
Saakuru Verseは、Web2からWeb3への橋渡しをコンセプトに、コンシューマーゲーム向けに展開されているVerseです。SDKやAPIを含む開発ツールが提供されており、既に開発しているゲームにWeb3機能を組み込むデベロッパー向けに特化したサービスを備えています。このVerseでは、累計100万アカウント以上が参加しています。
特に人気なゲームは、GOGAと呼ばれる教育用のPlay to Earnゲームです。英語を楽しく学べるAI、ブロックチェーンを活用したプラットフォームというコンセプトで、学習を通じてトークンを獲得できる設計です。
直近1ヶ月間では3.4万を超えるユニークアクティブウォレット数を誇り、ゲームと教育という分野にブロックチェーンという文脈を掛け合わせ、トークンエコノミーによってユーザーのリテンション維持やマーケティングに活用するアプローチを確立しようとしています。
参照:GOGA
SG Verse
SG Verseは、double jump.tokyo社がAltlayerの正式取扱パートナーとして開発し、ゲーム体験に不可欠な性能を揃えたVerseです。SG Verseは、現在最も期待されているVerseとなるため、ここではその概要と展開される注目のゲームについて解説します。
SG Verseでは、SG Coin(SGC)というエコシステムトークンが利用されます。SGCは、SG Verseに展開される複数のゲームで利用可能で多様なユースケースに支えられ、ゲーム内通貨の購入や将来的に実装されるゲーム内コンテンツで利用できるトークンです。ローンチに向けて、トークン発行が期待されるため、エアドロップに対して注目度が高まっているといえます。
SG Verseにローンチされる最も注目すべきゲームタイトルは、「魁 三国志大戦 -Battle of Three Kingdoms-」です。本作は、三国志大戦シリーズ生みの親である西山泰弘氏がプロジェクトに参画し、三国志大戦のゲームを活かしつつ、ブロックチェーンゲームとして昇華させゲームとしての面白さをより一層引き出す体験が提供されます。
ゲーム大手企業のセガ社よりIP利用許諾を受けて開発されたこともあり、三国志対戦ファンにとっては見逃せないタイトルといえるでしょう。
既にXのフォロワー数は3万人を超え、Telegramチャンネルには月間14万人以上が参加しています。また、2024年10月10日から事前登録イベントを開始し、11月3日時点では累計ユーザー数は15.8万、平均デイリーアクティブユーザー数は1.6万を超えている人気タイトルです。事前登録イベントのミニゲームで遊ぶことで、ユーザーはBravery Points(BP)を獲得することができ、ローンチ後にSGCトークンに変換されて受け取ることができます。
現在、ミニゲームのストーリー1では、クエストやタスクを通じてBPを獲得してお城をレベルアップさせることでBP報酬をアップさせることが可能です。メインゲームに向けて、武将の書簡アイテムを入手して強力な武将カードを手に入れる準備を進めながら、BPを獲得していくのがストーリー1の基本戦略となります。なお、ブラウザでのプレイだけでなく、Telegram Mini-Appからも遊ぶことができます。
ストーリーは、3つのフェーズが予定されているため、事前に参加しておくことでより効率よくBPを獲得できます。三国志大戦に興味があるユーザーや、SGCトークンのエアドロップに注目しているユーザーは、早期に参加しておくことで有利にゲームを楽しむことができるでしょう。
以上のように、各Verseでは異なるエコシステムが存在し、そのレパートリーも様々です。ユーザーは、好きなVerseのテーマに沿ってゲームを選びプレイすることも可能ですし、開発者はテーマに合わせてゲーム開発を行うことができます。また、自らVerseを立ち上げることも可能です。
Verseにどのようなゲームが存在するのか探索したい場合は、Oasys Naviを利用すると良いでしょう。さらに、Oasys上の各ゲームやDappsが開催している最新のキャンペーン情報は、VersePortから確認できます。
競合ブロックチェーンとOasysの比較
本節では、Oasysの最も有力な競合にあたるブロックチェーンゲームプラットフォームであるImmutable、Roninを取り上げ、Oasysと比較します。
Immutable
Immutable Xは、EVM互換性がなくEthereumの一般的なスマートコントラクトが直接利用できませんが、Immutable独自のSDKを用いてゲーム開発が可能です。それでも技術的ハードルがあったため、EVM対応でスマートコントラクトが利用できるImmutable zkEVMが開発されました。
Immutable公式サイトによれば、執筆現在で300以上のゲームが展開されています。また、DappRadarによれば、執筆現在の合計ユニークアクティブウォレット数は、およそ200万です。
Ronin
Roninは、Axie Infinityを手掛けたSky Mavisが開発したEVM互換のあるブロックチェーンゲーム向けプラットフォームです。Roninブリッジが2022年に当時700億円以上のハッキング被害を受けた後、セキュリティアップデートを行い、引き続きブロックチェーンゲームのプラットフォームとして稼働しています。
現在は、Ronin zkEVMを開発しておりテストネットが稼働しています。将来的にゲームごとに独自のチェーンをRonin上に展開できるようにする予定です。執筆現在では、Roninエコシステムには15のゲーム(ローンチ前を含めると20程度)が存在しており、Axie Infinity、Pixelsなどのゲームタイトルを中心に利用されています。
また、DappRadarによれば、執筆現在の合計ユニークアクティブウォレット数はおよそ4.3億です。
Oasysの優位性
Immutableはゲームコンテンツ数、Roninはユニークアクティブウォレット数という点で有力なプラットフォームである一方、Oasysにはこれらに劣らない強みとポテンシャルを備えている点を考察します。
Immutableではゲームに特化させた独自チェーンが作れない
Immutableは、Immutable XとImmutable zkEVMの2つの環境を提供していますが、完全にゲーム独自のブロックチェーンを作成する機能は提供していません。スマートコントラクトは自由にカスタマイズできますが、Immutableのプラットフォームの環境に合わせた制約に従う必要があり、特定のゲームエコシステムに独自にフィットさせた柔軟性を実現するのは難しい可能性があります。
Oasysでは、ゲーム開発者が既にテーマごとに存在するVerse上で開発したり、自社で開発するゲームに合わせた独自のVerseを開発することが可能です。ゲームに特化した独自の経済圏やメカニズムを深く反映出来るという点で優れているといえるでしょう。
また、Verseが相互に連携できるようになれば、Verseごとに作られたエコシステムが接続され、プレイヤーがデジタル資産を柔軟に移動させることができ、プレイヤー体験の一貫性と多様性を両立させることができるポテンシャルがあります。
Roninでは少数のゲームにユーザーが集中しており後発が不利
Roninでは、主にAxie InfinityやPixelsがアクティブユーザーの中心になっています。新しいゲームも増加していますが、ゲーム数が相対的に少ないことを考えると強力な人気を誇るゲームがある一方で後発のゲームにとってはユーザーを獲得するのが難しい構造にあると考えられます。
Oasysは、各Verseを中心としてゲーム経済圏を形成しており、新規参入のゲームであってもVerseがテーマごとにあるため潜在的なユーザーにもアプローチしやすい環境が整っています。
Ronin zkEVMでは、ゲームごとに独自のブロックチェーンを立ち上げることができるようになりますが、開発は発展途上であり、Oasysは先行してこのようなエコシステムを成長させる準備が整っているといえます。
Web3エコシステムにおけるゲーム領域の現状から考えるOasysの展望
本節では、Web3エコシステムにおいて、ゲーム領域はどれくらいの成長を見せているのか、その中でOasysがどのようにして強みを活かすのかという展望を考察します。
Web3エコシステムにおいてゲーム領域は成長分野
この成長トレンドの背景には、従来型のゲーム企業がブロックチェーンをインフラとして採用した体験を提供し、収益性やユーザーエンゲージメントの向上に成功している事例の増加があると考えられます。例えば、ゲーム開発大手のUbisoftが同社初のブロックチェーンゲームに参入した事例などが挙げられます。
Web3要素の段階的な導入でゲーム市場の活路を見出すWeb3参入成功事例
Champions Tactics
2024年10月にHome VerseでローンチしたChampions Tacticsでは、ゲームローンチに先立ち、2023年12月にゲーム内キャラクターをミントできる権利となるNFTコレクションを9,999体限定で無料で発行できるように公開しました。
この結果、無料で発行されたNFTコレクションにも関わらず、執筆現在では0.03ETH(約1.2万円)で取引され、総取引量は3,300ETH(約13.4億円)を超える規模にまで成長しました。このコレクションには、二次流通の販売者が取引ごとに最大5%のクリエイター収益(NFTコレクション作成者への収益)が設定されています。NFT取引は、クリエイター収益をゼロにするマーケットプレイスもありますが、コレクション次第では有望な収益源になる可能性を秘めています。
さらに注目すべきなのは、この成功がNFTの価格や取引量の上昇だけでなく、ユーザーエンゲージメントの質的な変化をもたらしている可能性です。トークン保有者は、ゲームをより楽しむ体験だけでなく、アイテムの価値を高めてトレードしたり収集する体験をも楽しむことができます。これによって、ゲームに対する積極的な関与が促され、従来のユーザーと比べて高いロイヤリティを持つユーザー層が形成されている可能性があります。
De:Lithe Last Memories
また、2024年7月に行われたNFTパブリックセールで「NFTランド」220区画と「NFTドール」1,000体が即完売したローグライクアクションRPG『De:Lithe Last Memories』の事例は、いわゆるWeb2ユーザーをWeb2.5ユーザー(NFTやマーケットプレイスなどのWeb3要素に触れたユーザー)へと段階的に引き上げ、さらにWeb3ユーザーに転換することが収益化の鍵となる可能性を示唆しています。
『De:Lithe Last Memories』では、ゲームの爽快感や戦略性といった魅力に加え、ゲーム内課金と資産性を持つNFTアイテムの収集がリンクしており、プレイヤーは「楽しむために課金し、得たアイテムに将来の価値を見出す」という循環が形成されています。これにより、プレイヤーは単なる消費を超えて、アイテムに所有感を持ち、さらなる強化や希少アイテム獲得を目指して追加課金を行うという流れが生まれています。
このように、Web2ユーザーがゲームの進行とともにWeb3要素に自然と触れる機会を提供することで、プレイヤーはアイテムに対する所有感や愛着が生まれ、その結果として課金率やエンゲージメントの向上が見込めるのでしょう。実際に『De:Lithe Last Memories』は、NFTを活用した新たな収益モデルが話題となり、事前登録の段階で70万人以上が参加し、現在は人気タイトルとして成長しています。これは、ユーザーの段階的なWeb3への移行が高いコミットメントを引き出し、収益向上に貢献する可能性を示す事例といえるでしょう。
このように、以前から質の高いゲームを提供する企業が、ブロックチェーンを活用することで新たなユーザー体験を提供し、飽和状態にあるゲーム市場の活路を見出し始めています。
この成功事例は、ブロックチェーンをインフラとして採用することが単なる一時的なトレンドではなく、ゲーム業界における収益的な成長戦略として認識されつつあることを示唆し、今後さらに多くのゲーム企業がブロックチェーンをインフラとして活用する動きが加速する変化の兆しなのだと考えられます。
また、Telegramで遊べるTap To Earnが流行するなど、新しいプラットフォームが台頭しており、今後より一層競争が激しくなると共にユーザー数の増加が予想されます。
さらに、2024年Q3のブロックチェーンゲーム・メタバース分野への投資は、個別のゲームよりもゲームプラットフォームやインフラへの投資が全体の約8割を占め、インフラ整備が重要視されている傾向が見られます。
今後は、多くのユーザーを惹きつけるゲームコンテンツと、それらを柔軟に設計できるインフラがより一層求められるようになるでしょう。
Oasysの展望 消費で終わらないゲームインフラとして独自の価値を確立する
Oasysは、ゲームに特化したブロックチェーンとして、Verse間の相互運用性を将来的に強化し、インフラレベルでのシームレスなユーザーエクスペリエンスを提供する強みがあります。これにより、ユーザー数が増加しインフラ整備が重視される現在のブロックチェーンゲーム業界のトレンドにも適応しやすく、長期的に高まると予想されるゲーム特化のインフラ需要に応えることができます。
近年、ブロックチェーンゲームではトークンを利用したアテンション獲得がトレンドになっていますが、その多くは持続可能性に課題があります。例えば、Tap To Earnのようなモデルでは、ユーザーが時間と労力をかけても一時的な報酬を得る構造になりやすく、本来のゲームプレイの楽しさが失われ、デジタル資産の価値も損なわれる傾向にあります。そのため、長期的な価値を提供し、単なる消費に終わらないゲーム体験が今後ますます求められるのではないかと考えられます。
Oasysは、大手日本企業がバリデーターとして参加し、セキュリティと持続性に対する信頼性が高いプラットフォームです。これにより、エコシステムの成長を支えながら、ゲーム内で獲得したデジタル資産を保持・活用できる仕組みを整えています。こうした仕組みによって、新たな価値体験が実現され、従来の短期的な消費型エンターテインメントとは異なり、ユーザーに長期的な資産価値を提供します。この価値は、特にWeb3のゲームユーザー層に対してゲーム本来の魅力を引き出し、ユーザーのロイヤリティ向上にも寄与するでしょう。
ブロックチェーンゲームは、世界的にWeb3エコシステムでも成長分野です。このようなトレンドの中、Oasysはゲーム特化のブロックチェーンインフラとして、従来型のゲーム開発企業がWeb3へ初参入する事例を支え、Champions Tacticsのような成功事例を作り出しました。DappRadarによれば、OasysとVerseを含めた直近1ヶ月間では、ユニークアクティブウォレット数は15万、トランザクション数は300万を超えるアクティビティとなっています。
また、注目すべきゲームコンテンツである「魁 三国志大戦 -Battle of Three Kingdoms-」では、SG Verseのトークン発行への期待と大型IPとのコラボレーションだけに、より多くのユーザーにリーチできる可能性があるでしょう。既に20以上のゲームタイトルが今後Oasysで展開される予定です。
さらに、OasysはゲームコンテンツだけでなくDeFiの強化も図ってます。2024年9月にはレンディングプロトコルであるPalmy Financeをローンチし、OASなどを利用した安定した金利収入を得る機会を作りました。OasysのDEXであるTealSwapには、Arbitrum Orbit統合によってArbitrumエコシステ厶からの流動性が入り込む余地を期待できますし、DeFiトレーダーとゲームプレイヤーのためのDeFi Verseにも流動性がより一層生まれる可能性があります。このように、ユーザーがデジタル資産から生み出した利益をブロックチェーン上で有効活用できる環境をエコシステムとして強化しています。
これに加えて、世界的な影響力のあるBinanceなどの大型取引所にOASが未上場であることを考えれば、今後の上場による世界からの認知度と流動性の向上をさらに期待することができるでしょう。
したがって、Oasysは日本のみならずグローバルでも支持を集め、ブロックチェーンゲーム業界において、強固な独自の立ち位置を確立していく可能性があると考えられます。
総括
本レポートでは、Oasysの現状を考察し、ブロックチェーンゲーム業界のトレンドの中で、Oasysに注目すべき理由を解説しました。
いわゆるマスアダプションに向けた切り口は複数あると思われますが、ゲームはその最も有力な選択肢の一つです。そのフェーズの最適なインフラの筆頭として、Oasysにより一層の注目が集まるはずです。
以下のリンクより、Oasysの動向をフォローして、エコシステムに参加することができます。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。