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BlackRockのBUIDLの概要、オンチェーントークンファンドがもたらす影響と今後の展望を考察

2024年10月06日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 導入
  • BUIDLの概要
    • BUIDLの法的根拠と位置づけ
  • なぜ、オンチェーントークンファンドなのか?
    • BUIDLの現状
    • 今後の採用予定
  • BUIDLが市場へもたらす影響、今後の展望の考察
    • 市場へもたらす影響
    • 今後の展望
  • 総括

導入

2024年3月、世界最大の資産運用会社であるBlackRockは、資産のオンチェーントークン化プラットフォームであるSecuritizeを通じて、Ethereum上でオンチェーントークンファンドBUIDL(BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund)を立ち上げました。BUIDLは、投資家にオンチェーン上での米国ドルの利回りを提供します。
BUIDLへの、投資資産は現金や米国債などに投資され、発生した配当を毎月新しいBUIDLトークンとして投資家のウォレットに直接支払います。このようなファンドは、暗号資産市場では、RWA(Real World Assets)としてカテゴライズされ、rwa.xyzによれば2023年のおよそ50億ドルから2024年9月の執筆現在では120億ドル以上に成長しており(ステーブルコインは除く)、近年急速に市場規模(扱う資産総額)が拡大している分野です。

https://app.rwa.xyz/


RWA市場は、法定通貨建てステーブルコインをはじめ、米国債券、プライベートクレジット、コモディティ、株式など様々な領域が存在します。RWAのトークン化の利点には、
  • 流動性の向上:不動産や美術品などの現実資産の流動性が乏しい問題をトークンによる小口化をすることで流動性を高めることができる
  • 投資機会へのアクセシビリティの向上:オンチェーンのパーミッションレス性を活かして参入障壁を下げ、これまで富裕層や機関投資家に限定されていた資産クラスにも幅広い投資家がアクセスできるようにする
  • 透明性と検証可能性の担保:パブリックブロックチェーンによってセキュリティを実現する分散台帳技術によって、誰もが公開された情報を検証可能で、改ざん困難な取引履歴を共有することができる
  • 効率性とコストメリット:スマートコントラクトを使用して、仲介業者の必要性とそれに付随するコストを削減し、資産管理を様々な側面で自動化する
があり、伝統金融にブロックチェーンを活用する動きが見られます。また、暗号資産市場のベアマーケット時には、米国債券の利回りにオンチェーンでアクセスできるようになったことで、DeFi(Decentralized Finance)の領域での収益機会としても認知が広がり普及しました。

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RWAは、上記のような利点を活かし、パブリックブロックチェーンの性質を活かした商品を展開できるものとして、今後より一層市場が拡大する可能性があります。
中でもBUIDLは、オンチェーントークンファンドとして現時点で最も急速に成長しており、暗号資産市場へ大手投資会社が参入したことで注目度が高いです。
本レポートでは、BUIDLの概要を解説し、その存在が市場にどのような影響をもたらす可能性があるのか、今後の展望について考察します。

BUIDLの概要

BUIDLは、Ethereum上でトークン1つあたり1ドルの価値を有するステーブルコインであり、毎日発生する配当金を新たなBUIDLトークンとして投資家のウォレットに送られます。
ファンドは総資産の100%を、プライマリー市場とセカンダリー市場の両方で、購入決済から 3 か月以内に満期を迎える現金、米国財務省短期証券、債券、またはその他の債務に投資します。最低投資額は500万ドルで、ファンドの年間手数料は0.5%です。
米国債利回りの参考は以下になります。

参考:https://www.bloomberg.co.jp/markets/rates-bonds/government-bonds/us


ファンドマネージャーは、BlackRockファイナンシャルマネジメント社であり、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンがファンドの資産の保管人および管理者とされています。Securitizeは、トークンファンドへの申し込み、償還、利回りのオンチェーンでの分配を実施するプラットフォームとして活用されています。

https://securitize.io/for-business


参考:https://securitize.io/learn/how-it-works
BlackRockは、Securitizeに戦略的投資を行っており、この投資の一環としてBrackRockの戦略的エコシステムパートナーシップのグローバルヘッドであるジョセフ・チャルム氏が、Securitizeの取締役に任命されています。
競合には、Franklin Templetonのオンチェーン米政府マネー・ファンドFOBXXやOndoの米ドル・イールドUSDYがあり、これらも預け入れ資産が増加傾向にあります。

https://app.rwa.xyz/treasuries

BUIDLの法的根拠と位置づけ

British Virgin Islands(BVI)法に基づいて設立されたプロフェッショナルファンドです。2010年の証券投資事業法(SIBA)に基づき、プロフェッショナル投資家(高度な投資知識や資産を持つ投資家)に対してのみ発行されます。一般の投資家は想定されてません。
また、BUIDLは1933年証券法(Securities Act of 1933)Rule506(C)および1940年投資会社法(Investment Company Act of 1940)Section 3(c)(7に基づき、米国のSECに登録されておらず、登録要件の適用免除がない限り、米国で提供・販売することはできず、取引所にも上場されません。
一般に、Rule 506(c)やSection 3(c)(7)に基づいて運営されるファンドは、特に富裕層や機関投資家を対象とし、オルタナティブ投資として活用されることが想定されています。

参考
しかしながら、実態としては伝統金融の機関投資家というよりも、ブロックチェーンベースのDeFiプロトコルでの活用が進んでいるように見えます。


なぜ、オンチェーントークンファンドなのか?

BUIDLは、ERC-20の規格で作成されます。このため、発行、償還、配当はスマートコントラクトによって自動化され、24時間365日実行することが可能です。以下は、BUIDLのホワイトリストされたアドレスに、BUIDLの運用益の配当が自動分配されている様子です。

https://etherscan.io/tx/0xfffc4b60ce49e0e83a76874090f58942752134e8d8e34c17032658e36092fd76


また、以下のトランザクションは、Ondo FinanceのOUSGトークンを最終的にUSDCに交換するために、BUIDLを一時的に交換している様子です。最終的に約1000万ドルが交換されています。

https://etherscan.io/tx/0x94b1cf7cec8e8943f263778081bdb10245766cd0f924097a481c55fc43abfd60/advanced


伝統金融では、利回りを計算し配当を実行する、換金するにしても相当のシステムや日数などのコストが掛かりますが、パブリックブロックチェーンを活用すれば一つのトランザクションで24時間365日実行でき、トランザクションは誰でも確認することができるようになっています。
このように、オンチェーンで検証でき、自動執行されるというのは革新的です。一方で取引が公開されてしまうようなデメリットはあります。

BUIDLの現状

BUIDLは主に機関投資家を想定されたトークンであり、その採用はリテールの投資家ではなく、DeFiプロトコルでの準備資産やトレジャリーの投資先として採用が進んでいます。
現在ではおよそ5億2,000万ドルが投資されており、ホルダーは23アドレスです。2024年7月18日現在、すべての手数料を差し引いた利回りは約4.88%とされます。

https://app.rwa.xyz/assets/BUIDL


投資金額の停滞要因としては、他の新興トークン化ファンドが増加したこと、BUIDLを採用するDeFiプロトコルが相場の影響で低調にあり、あまり積極的な採用が進んでいないことがあると思われます。

https://app.rwa.xyz/treasuries


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