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Ethereumの大型アップグレード、Pectraの概要 投資家に与える影響は?

2024年10月01日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • Pectra アップグレードの概要
  • 技術的に影響の大きいEIP
  • 投資家に影響の大きいEIP
  • 総論

前提

本レポートは、ETHをステーキングしている投資家や、ETHホルダーのうち、ETHの価格の動向を予測するためにEthereumの技術動向を把握しておきたいというユーザを対象に、次に予定されている「Pectra」と呼ばれるアップデートの概要を紹介します。加えて、技術的に大きな影響をもたらす変更点と、投資家に与える影響についても考察します。
今回のPectraアップデートは、過去のアップデートと比較しても非常に大規模なものであり、その実装およびテストの負担を軽減するために、2回に分けて行うことが検討されています。当初、アップデートは2025年の第1四半期末に実施予定でしたが、2回に分けられた場合、1回目は第1四半期初め、つまり2月に実施可能とされています。
このような大規模なアップデートの概要を理解することは、Ethereumが今後どのような方向に向かっているのかを知るうえで重要です。また、投資家やETHホルダーにとっては、Ethereumの技術的進化が市場価格やエコシステム全体に与える影響を予測するための手掛かりとなるでしょう。
以前のEthereumアップデートについて知りたい方は以下のレポートを参照してください。

【関連レポート】

Pectra アップグレードの概要

Ethereum Improvement Proposal(EIP)の作成者は主に開発者であり、Ethereumのプロトコルに変更を提案し、議論の上で採用が決定されます。これらの提案が採用されると、ネットワーク全体に実装され、Ethereumクライアントに適用されることになります。ネットワークアップグレードは、こうしたEIPの集合体で構成され、最終的に合意されたものがEthereumネットワーク全体に反映されます。
Pectraアップグレードも同様に、複数のEIPで構成されており、その内容はEthereumのパフォーマンスやセキュリティ、スケーラビリティを大きく向上させることを目的としています。以下に、Pectraに含まれる主なEIPを紹介します。

Pectraに含まれるEIPの一覧

  1. EIP-2537: 楕円曲線の一種である BLS12-381 曲線上での演算を行うプレコンパイルコントラクト
  2. EIP-2935: ブロックハッシュをストレージに保存する
  3. EIP-6110: オンチェーンでのバリデーターデポジット
  4. EIP-7002: 実行レイヤーでのバリデーターデポジットの引き出し
  5. EIP-7251: バリデーターデポジットの上限増加
  6. EIP-7549: Attestationデータから委員会インデックスを移動
  7. EIP-7594: PeerDAS - Peer Data Availability Sampling
  8. EIP-7685: 実行レイヤーにおける汎用的なリクエストの処理
  9. EIP-7702: EOAアカウントにコードを設定する
  10. EIP-7692: EOF v1 を達成するためのEIPのリスト

1. EIP-2537

楕円曲線上での演算はEVMによるオペコードを用いると非常に高コストとなります。このEIPは、BLS12-381という楕円曲線上での演算をプレコンパイルコントラクトで効率的に行う提案です。
バリデーターがブロック提案や認証を行う際、BLS12-381を使用した署名を行います。BLS12-381は集約署名に特化しており、ゼロ知識証明(ZK-SNARKs)でよく使われる楕円曲線であるため、効率的な署名集約とゼロ知識証明の普及を可能にするため、この提案が行われました。

2. EIP-2935

このEIPは、ノードクライアントがブロックハッシュをストレージに保存することで、ステートレスクライアントへの対応を容易にする提案です。
現在、ノードクライアントが最新のブロックハッシュを保持していますが、Verkleによるステートレスクライアントの実装後、ノードがステートを保持しなくなるため、将来的には対応できなくなってしまいます。コントラクトストレージを拡張し、ブロックハッシュをストレージに保存することで、スムーズにステートレスクライアントへ移行する手助けになります。また、ロールアップがブロックハッシュを効率的に問い合わせられるようにすることで恩恵を受けられます。

3. EIP-6110

この提案は、バリデーターデポジットの処理をコンセンサスレイヤーから実行レイヤーに移すものです。
EthereumのコンセンサスにProof of Work(PoW)が使用されていた時代は、デポジットが実行レイヤーで処理され、コンセンサスレイヤーで投票を行ったのち、デポジットが確定されていました。しかし、Proof of Stake(PoS)に移行したことで、もはやコンセンサスレイヤーでの投票は必要なくなり、これを実行レイヤーに戻すことで、デポジット処理の遅延を削減します。この提案により、デポジットの確認時間が約12時間から約13分に短縮されます。

筆者作成



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