特集記事「Web3とロイヤルティマーケティング」|スターバックスのNFT活用事例は企業がNFTを活用するスタンダードなアプローチになるか
2022年09月26日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 既存ブランドが取り組んできたWeb3ベースの施策振り返り
- 既存事業の強化、ロイヤルティプログラムの拡張を目的としたStarbucks Odysseyの登場
- NFT(スタンプ)はポイントのようでポイントではない|購入履歴ベースから体験ベースのロイヤルティへ
- パブリックブロックチェーンベースのUXリサーチは従来のそれを大きく変える
- 余談:既存ブランドが行うWeb3ベースの施策はロイヤルティマーケティングなのか、それともイノベーション思考が生んだ新規事業なのか
- そもそもマーケティング4.0とは
- 「ロイヤルティ」と「イノベーション」のジレンマ
今回の特集記事ではWeb3界隈におけるロイヤルティマーケティングをテーマに筆者考察を行います。
※なお、本特集記事で記載するロイヤルティとは特定の権利者へ支払う対価の意のRoyaltyではなく、顧客や消費者が特定のブランドに対して抱くLoyalty(愛着、忠誠)の意です。
【主な対象読者】
- 新規事業、または既存事業の延長線上にWeb3(主にNFT)を見据える事業者(クリエイターも含む)。
- Web3におけるブランドとコミュニティの関係性、ユーザー体験のあり様に関心のある方
【要旨】
- 2021年夏から末にかけて展開されたブランド企業が発行したNFTの主な特徴をおさらい
- スターバックスが発表した「Starbucks Odyssey」はサイドプロジェクトではなく、既存事業を強化する「ロイヤルティプログラム」
- スターバックスが計画しているロイヤルティマーケティングは従来のそれと何か変わったのか、それとも何も変わっていないのか
- パブリックブロックチェーンを活用したUXリサーチはそれ以前のUXリサーチを変える可能性がある
- 余談:ロイヤルティマーケティングのジレンマ(イノベーション)
既存ブランドが取り組んできたWeb3ベースの施策振り返り
ここ数年、企業によるスマートコントラクトやNFTを用いたビジネスや商品・サービス販売、新たな顧客体験の模索が続けられています。
昨年2021年夏はコカ・コーラ、バドワイザーなどがNFTを発行するなど初期のNFT活用事例が話題となりました。
これら初期の活用事例は既存ブランドがNFTという話題のツールを用いて一過性の認知を獲得したに過ぎませんでしたが、2021年末あたりからは少し様子が変わりはじめ、Web3ネイティブのコミュニティと大手ブランドがコラボレーションする事例が現れてきました。
関連レポート②:NFT(Non-Fungible-Token)の動向 22年1月
例えば、ナイキ、ティファニー、アディダス等々の大手ブランド企業がWeb3界隈で実施した事例(関連レポート②参考)はいずれも「企業とコミュニティの関係性」を模索するものとも言え、「インターネットコミュニティ」という名の消費体験を意識的に取り込むモデルと言えます。
ナイキ、ティファニー、アディダス等々の取り組みはNFTを通じて新しいオーディエンスや新しいユーザー体験への道を切り開いたとも言えます。言い換えるならば「新しいペルソナの特定」と仮想空間(またはメタバース)という名のフロンティア探索「サイドプロジェクト」です。
言うまでもなくこれらはイノベーション思考に基づいた新規市場開拓であり、既存ブランドを新たな市場へ拡張するような戦略であると言えます。
とは言え、イノベーションとは「新たな顧客獲得、市場開拓」だけを意味するものではなく、既存顧客を対象にした既存事業の強化もまたイノベーションの一種です。今回は主に後者の事例について概説していきます。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。