USDDの概要およびリスク分析
2022年07月05日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- USDDの概要
- アルゴリズムステーブルコインとは
- USTの先行事例
- TRON DAO Reserveについて
- USDDを運用する上でのリスク
- ペッグ外れのリスク
- レンディング市場にてUSDDが1ドルの固定価格で参照されている
- KAVAの事例
- 総論
USDDの概要
アルゴリズムステーブルコインとは
Decentralized USD(USDD)とは2022年の5月に発行されたアルゴリズムステーブルコインの一種であり、TRON DAO Reserveによって発行・管理されています。HashHub Resaerchを長らく購読している読者様にとっては聞き慣れた用語だとは思いますが、再度アルゴリズムステーブルコインの仕組みを簡単に解説します。
仕組み
アルゴリズムステーブルコインは、基本的に無担保で1ドルにペッグすることを目的としたステーブルコインです。今回の例では、USDDを発行する際にはアルトコインのTron(TRX)を1ドル分用意し焼却(Burn)させることによって、1 USDDを鋳造(Mint)させることが出来ます。反対に1 USDDを焼却(Burn)させることによって、1ドル相当のTRXを償還(Redeem)させることが出来ます。このアルゴリズムステーブルコインが1ドルにペッグさせる仕組みとして裁定取引者の存在が鍵となります。以下、1 USDDが1ドルを下回る/上回る際にどのようにしてペッグを維持させるか説明します。
- 1 USDD < 1ドルのとき(例: 1 USDD = 0.9ドルの時)
裁定取引者が1 USDDを市場で0.9ドルで調達し、1ドル相当のTRXを入手して市場で売却することによってディスカウント分の利益を得ることができます。
- 1 USDD > 1ドルのとき(例: 1 USDD = 1.1ドルの時)
裁定取引者が1ドル相当のTRXを市場で調達し、1 USDDを生成して市場で1.1ドルで売却することによってプレミアム分の利益を得ることができます。
上記の流れでアルゴリズムステーブルコインが1ドルにペッグされる仕組みを説明しましたが、この仕組みにも問題点があります。それは、アルゴリズムステーブルコインが1ドルに対して下方乖離している場合に償還されるアルトコインが、ハイパーインフレーション化する問題があります。それは実際にUSTというアルゴリズムステーブルコインにおいて発生しました。
USTの先行事例
上述の通り、アルゴリズムステーブルコインが1ドルに対して下方乖離している場合に償還されるアルトコインが、ハイパーインフレーション化する問題を指摘しました。2022年の5月に市場を席巻していたアルゴリズムステーブルコインのUSTとLUNAが大崩壊したように、一度市場が混乱し取り付け騒ぎが起きると償還されたアルトコイン(この場合はLUNA)が売却され、LUNAの価格も崩壊し、それらの影響で更にUSTが下方乖離していくデススパイラル状態に陥りました。特定の中央集権組織に管理されないことを意図したアルゴリズムステーブルコインの取り組みは興味深いものの、このような脆弱性も実態として存在します。
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