Ruler Protocolの概要 借り手が担保の清算を気にせず使用できるレンディングプロトコル
2021年07月11日
目次
- 前提
- Ruler Protocolの概要
- 独自トークンRULERの概要
- 総論
前提
本レポートではEthereumをはじめとしたブロックチェーンで稼働するDeFiのレンディングプロトコルのRuler Protocolの概要について解説します。Ruler Protocolは借り手が担保の清算を気にせず使用できるレンディングプロトコルです。
DeFiにおけるレンディングマーケットはCompoundやAaveに代表される流動性プールを形成するマネーマーケットを基礎とするものが多いです。Ethereum上のスマートコントラクトに流動性プールが存在しており、貸し手はその流動性プールに資金を預けて金利収入を得ることができ、借り手は担保資産を差し入れ金利を支払うことによって流動性プールから借り入れを行うことができます。貸し手と借り手のそれぞれのユーザーが受け渡しする金利は、そのときの流動性プールの需要と供給に応じてアルゴリズムが自動的に決定しています。また、これらのマネーマーケットプロトコルでは、借り手は担保資産を差し入れしており、担保資産の価格が市場で下落し基準値以下になった場合はスマートコントラクトが自動で清算し担保資産の強制没収を行います。また、その際には清算ペナルティも発生します。つまり、スマートコントラクトがマネーマーケットにデポジットされる貸し手と借り手の資金バランスを保ち、流動性プール内の資金量は常に矛盾しない設計になっています。
しかしこのような構造の場合、プール全体で負債を生まないように厳格な担保の清算システムが必要不可欠です。よって、借り手は清算され担保資産に対する借入比率(LTV)をしっかり管理して気を配る必要があります。
Ruler Protocolでは担保が清算されない仕組みを用いてこの煩わしさを解消するレンディングプロトコルとなっています。また、CompoundやAaveなど従来のレンディングプロトコルと比較してより多様なアセットを貸し借りできるレンディングプロトコルであることも特徴です。
本レポートではRuler Protocolの仕組みとガバナンストークンRULERの概要について解説します。
Ruler Protocolの概要
Ruler Protocolが実現するレンディングの特徴
Ruler Protocolは2021年3月にEthereum上でローンチをしたレンディングプロトコルです。6月にはBinance Smart Chain上でも公開されています。
Ruler Protocolは従来のレンディングプロトコルで実現できなかった以下の点を可能にするプロトコルです。
- あらゆるアセットが担保差し入れの対象になる可能性がある
- 事前に決められたレンディング期間内において借り手の担保資産は清算されない
- 金利は借り入れの実行時に決定して、変動することはない
- 借り入れ契約はファンジブルなトークンになり二次流通ができる
Ruler Protocolの特徴は、他のレンディングプロトコルと違い、統一された流動性プールの中で一律に貸借取引を行う当事者が参加したり、一律に金利が決定することはありません。ある期日間におけるローン契約を行った借り手と貸し手のみで金利が形成される仕組みになっています。
Ruler Pairsと呼ばれる概念
Ruler Protocolの仕組みを理解するうえで根幹となるのはRuler Pairsという概念です。実際に借り入れ契約の実行がなされる仕組みの説明の前にRuler Pairsの概念の理解が必要になります。
Ruler Pairsとは、rcToken(The Ruler capital token)とrrToken(The Ruler repayment token)という2つのトークンから成り立ちます。貸し手の債権として機能するのがrcTokenで、借り手の返済義務の証(担保を返して貰う権利)がrrTokenです。これらはファンジブルなERC20トークンです。それぞれのRuler Pairsは以下の4つの要素を関数として持っています。
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