search-icon
academy-icon

Self-Sovereign Student IDはデジタル学生証の利便性向上に貢献するのか

2020年08月25日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • Self-Sovereign Student IDは既存デジタル学生証と如何に異なるか
  • SSIベースの学生証に期待される6つの有用性
    • 1.アイデンティティとアクセス
    • 2.実績、スキル、能力の管理
    • 3.教育の新たなデジタル体験
    • 4.教育機関を越えた活用
    • 5.学校と生徒間のP2Pコミュニケーション
    • 6.詐欺とフィッシングの防止
  • 総論

前提

本レポートでは、デジタル学生証にSSIの概念を加えたSelf-Sovereign Student ID(セルフソブリン学生証)を概説し、既存デジタル学生証との相違点、またその可能性(新たな利便性を提供できるのか等)について考察を行います。
デジタル学生証とは、従来の物理的なカード形式の学生証ではなく、スマートフォンなどで提示できるデジタル表現の学生証のことです。なぜデジタル学生証を必要とするのかという点ですが、これは物理カードを発行する手間やコストの軽減、学生が卒業、退学した場合などの学生証の無効化などをデジタル上で一括操作できる点が採用する大学側の大きな利点になるからだと言えます。
デジタル学生証の初期の動向として、特定の大学などが自校の学生向けアプリを開発して提供する事例などはありましたが、大きく普及するようなものではありませんでした。普及しなかった理由はいくつか考えられるでしょうが、主に学校自体がベンダーとなるため利用可能な施設やシステムが極端に限定されてしまい利便性に乏しかったからだと筆者は捉えています。
しかし、2017年に株式会社ジェイ・エス・エスが「がプリ!」と呼ばれるクラウドベースのデジタル学生証アプリを提供開始したことで一定の認知を獲得するようになりました。執筆時点でおよそ100校近くが採用しています。このようなクラウドベースのデジタル学生証は、単に学生証の運用管理を容易にするだけでなく、「学校と学生間のメッセージ機能」「授業登録」「出席登録」「時間割の確認」「QRコードを用いた施設利用」「災害発生時の安否確認」など、学生証にその他機能を付随させて利便性向上を計っている点が特徴と言えるでしょう。このデジタル学生証の動向を海外に目を向けると、2019年末にAppleがiPhoneやApple Watchを用いた非接触型の学生IDソリューションを発表しています。こちらは学食などで利用できる決済機能なども内蔵しています。
とは言え、このようなデジタル学生証の普及は世界的にみても、まだまだ一般的なものとは言えません。本レポートでは、学生証を対象にSSIを導入することの如何を考察しますが、これは社員証やマイナンバーのような政府発行の個人を特定するデジタル証明書などにも関連する事例でもあります。このような個人のデジタル証明書と付随する機能という側面から、SSIの概念、特にVerifiable Credentials(VC)導入により期待できることを考察します。
【関連レポート】
自己主権型アイデンティティ(SSI/DID)の基本コンポーネント、及びその標準化に向けた取り組み一覧
https://hashhub-research.com/articles/2020-05-31-ssi-and-did-component
Verifiable Credentials(VC)の基礎知識、及び期待される経済効果
https://hashhub-research.com/articles/2020-08-20-verifiable-credentials
このレポートは有料会員限定です。
HushHubリサーチの紹介 >
法人向けプラン >

※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。