2025年4月、合成資産プラットフォームSynthetixが発行する暗号資産担保型ステーブルコイン「sUSD」が大幅にドルペグを外れる事態が発生しました。過去にも小規模なペグ乖離は散発的に起こっていましたが、今回は最大で16％超もドル価格（1USD）を下回る深刻さとなり、20日以上にわたり乖離が回復しませんでした。

 sUSDはメイン担保のSNX（Synthetixトークン）価値を根拠に発行される仕組みを持ち、「過剰担保モデル」の下で高い安定性を目指してきました。しかし2025年1月に行われた大規模なプロトコル変更（SIP-420）によって、個別ステーカーが自身の債務ポジションを買い戻すインセンティブが消失し、ペグ維持の自己調整機能が働きにくくなっていたことがデペグの大きな要因とされています。

 市場環境としては、暗号資産市場全体が低迷し、SNX価格も長期下落基調にあり、ステーブルコインへの警戒感が高まる中でsUSDが売り込まれる悪循環も生じました。結果として大半の投資家や流動性プロバイダーがsUSDから他の安定資産へ資金を逃がし、sUSD価格は4月上旬にかけて0.83ドル台まで急落しました。

以下では、当時のデペグ現象を①構造的要因、②市場要因、③対応策や投資家への含意の三つの観点から詳しく掘り下げます。

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