自分は何を書いてきたのか——補助線で解剖する九本の原稿
2026年10月02日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 告白
- 一つ目の補助線——図面
- 二つ目の補助線——宿題
- 三つ目の補助線——他人の手
- 三本の交点
- メモが一つある
- 判定——革命ではなく、実験として
- 目録
- 余談——人間は意味を求めてしまう
- 参考文献
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連載「今更聞けないWeb3」第10回・最終回
告白
最終回を書く朝、机に向かって、いつも通りに詰まった。
分からないのはWeb3ではなかった。この連載が何だったのかが、分からなかった。
九本の原稿を並べた。それで答えが出るだろうと思っていた。出そうになるたびに、止まった。
「再配置の話だ」と言いかけて止まる。九本のうち何本かは、再配置では説明できない。金の延べ棒は何も再配置していない。掘り出せる金属を信じる古い癖を、そのまま持ってきただけだ。
「不在の話だ」と言いかけて止まる。神官のいない神殿、ゴルフ場のない会員権、責任者のいない学級会、保証人のいない契約、御神体のいない祭り。「のいない」が五回出てくる。だが、Bitcoinが入らない。ステーブルコインはドルを消すどころか張り付いた。RWAは追い出したはずの現実を担保として連れ戻した。
「取りこぼしが形を決めた話だ」と言いかけて止まる。これは最終回の発見ではない。第7回に、もっと下手な言い方で自分が書いている。
毎回ここで詰まる。
同じ場所で、毎回。
三度当てて、三度合わなかった。だから、総括は諦める。
代わりに、第1回でやったことをもう一度やる。
第1回では、Bitcoinを解剖するために三本の補助線を引いた。国家通貨、ゴールド、Ethereum。対象そのものを覗き込むのではなく、別の三つに当てて、輪郭だけを出した。あのときは、そうしないと何も言えなかった。
最終回の対象は、九本の原稿だ。同じやり方でやる。
補助線を三本引く。図面。宿題。他人の手。どれも自分の内面ではなく、公開されている記録だ。何を思っていたかは書かない。何を書いたかと、そのあと何をしたかだけを照合する。
新しい巨人も呼ばない。この九本で一度でも机に座った者だけで終える。
本稿は解説ではない。解題だ。
一つ目の補助線——図面
宣言と実績を照合する。第1回で、図を二枚出した。
一枚目は、暗号資産と伝統資産の7分類表だ。出すときに断り書きをつけた。筆者が勝手に七つに分けただけのもので、公式分類でも定説でもない。とりあえずの地図として置いておく、と。
二枚目は、機能の多寡と価値の源泉の2軸マップだ。こちらには断り書きをつけなかった。逆に、こう書いた。この図は連載の縦糸として使い続けるつもりだ、次回のEthereumの回でも引き戻す、と。
つまり、片方は言い訳つきで、片方は約束つきで置かれた。
実績はこうだ。7分類表は、第2回でETHの行へ進む足場になった。第3回では表そのものが問いになり、ステーブルコインは法定通貨の行に入る、という答えまで出た。第4回で再掲されたときには、もう「NFTはやはり扱いに困る」と書かれている。第5回は図を出さず、本文で「書き加えるのは容易ではない」と言うだけになった。第6回で、消えた。
2軸マップは、第2回で約束通り引き戻された。それで終わりだった。以後、一度も出ていない。
約束した図が一回で終わり、断りを入れた図が四回働いた。
この一本目の補助線が写しているのは、図の出来ではない。宣言の強さと、その後の実績が、逆を向いていたということだ。強く約束したものほど、守らなかった。断ってから置いたものだけが、摩耗するまで働いた。
図は忘れた。問いだけ残った。
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