ステーブルコインは「一社」か「連合」か——140社の「Open USD」がCircleに挑む構図

2026年07月09日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

「大企業が束になった新ステーブルコイン」の既視感

ステーブルコイン(以下SC)は、いまや大企業が束になって発行を狙う対象になりました。この流れ自体は、多くの読者にとって驚きではないはずです。国際決済銀行(BIS)が年次報告で「健全な貨幣の3つの条件」を掲げ、民間SCと銀行の預金トークンの位置づけを論じたのが今週のこと。米国のGENIUS法や欧州のMiCAを経て、制度の側がSCを前提に語るのは、もはや珍しくありません。今週のBIS報告も、その流れの最新の一つです。
そこに登場したのが「Open USD(OUSD)」でした。運営はBridge共同創業者でCoinbase出身のZach Abrams氏が率いる新会社Open Standard。Visa、Mastercard、American Express、Stripe、BlackRock、BNY、Standard Chartered、Coinbase、Google——公表された参加企業は140社を超えるとされ、決済・銀行・カード・資産運用の大手が横並びで名を連ねました。「大企業が束になれば、信頼あるドル建てSCができる」。そう見えた発表でした。実際、発表の日にはUSDCを発行するCircleの株価が下落しています(CoinDesk)。単一の発行体が担ってきたドル建てSC市場に、連合という対抗馬が現れた——市場はそう受け止めた、と報じられています。

名前を出された側が「聞いていない」

ところが発表直後、名前を出された側から否定が相次ぎます。The Blockの報道によれば、サムスン電子は「正式な協議はなかった」と述べ、韓国のDunamu(Upbit運営)・新韓金融グループ・Kbankは「参加意向を打診され『検討する』と答えただけ」と回答。ある企業は「うまくいけば検討する程度の返答をしただけなのに、メンバー扱いされて困惑した」と証言しています。業界関係者のGabor Gurbacs氏も、リストに載った複数社(一部は同氏が関わるOpenAssetsの顧客)に尋ねたところ、いずれも「署名も同意もしていない」「あるのは話し合いだけで、契約はない」と答えた、とXで述べています。連合を掲げた出だしから、参加社の足並みをそろえる難しさがのぞいた形です。
そして肝心の設計は、ほとんど開示されていません。ガバナンスの検証記事が突いているのは、法的な発行体は誰か、準備金は誰が管理するのか、カストディアンは、取締役会や議決権の配分はどうなっているのか——事業の根幹がいずれも「collaborative(協調的な運営)」「partner-led board(パートナー主導の理事会)」といった、耳あたりはよいが中身の見えない言葉のまま、ということです。140社という数字だけが先に走り、中身は後回しになっています。
この構図には既視感があります。2019年のLibraです。Visa・Mastercard・Stripeという同じ顔ぶれが28社の設立メンバーに名を連ね、華々しく発表されたものの、規制圧力を受けて主要企業は発表から3か月半で離脱を始めます(2019年10月4日にPayPal、その1週間後にVisa・Mastercard・eBay・Stripeらが連鎖脱退)。計画はDiemと名を変え、2022年に資産を売却して消滅しました同じ企業が、再びコンソーシアムの目玉として並んでいるのです。
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