ユーロ建てステーブルコインの実需を解剖する――3つの主役の住み分けと日本円ステーブルコインへの教訓(ローカル通貨建てシリーズ・EUR編 後編)
2026年06月18日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
前編では、ユーロ建てステーブルコインが5年かけて一度衰退し、MiCAを境に主役を丸ごと入れ替えながら約$650M規模まで復興してきた歴史を辿りました。総額はピーク(2022年2月の$721M)の9割水準まで戻ったものの、それを構成する銘柄はEURT・EURA・SEURからEURC・EURCV・EURIへと、ほぼ完全に入れ替わっています。
ただし、そこまでで分かるのは「銘柄が入れ替わった」ことまでです。入れ替わった新しい主役たちは、それぞれ何のために、どこで、誰に使われているのか――累計時価総額の大小だけでは、その実需は見えてきません。本稿(後編)は、取引出来高・ホルダー分布・DeFi/CEX統合の3軸で踏み込み、現役3銘柄がまったく異なる用途へ住み分けていく姿を解剖し、最後にそこから日本円ステーブルコインへ引き出せる教訓を整理します。
取引出来高で見る三極化
まず、24時間の取引出来高をCEX/DEX別に見てみます(図表1)。
現役の主役3銘柄(EURC・EURCV・EURI)は、出来高の向かう先がそれぞれまったく違います。
- EURC(Circle、$29.6M/日):DEX 72% / CEX 28%。DEX側の中心はBaseチェーン上のAerodrome SlipStream(24h $14.9M)、CEX側はCoinbase Exchange($5.3M)が主軸
- EURCV(SG-FORGE、$10.2M/日):CEX 98% / DEX 2%。CEXのほぼすべてがBullish単独で$10.0M。Coinbase・Binance・Krakenといったリテール大手CEXには載らず、機関グレード取引所での流動性が市場の大半を占める
- EURI(Banking Circle、$7.1M/日):CEX 99.9% / DEX 0.1%。CEXの内訳はWhiteBIT $5.1M + Binance $1.9M + BingX $83K。DeFiにはほぼ統合されていない
EURCがDEX主体、EURCVがBullish単独主体、EURIがBinance生態系主体――同じ「MiCA準拠の現役EURステーブルコイン」でも、流動性が向かう先がここまで異なります。時価総額ではEURC($428M)がEURCV($92M)・EURI($58M)を大きく上回りますが、それ以上に流通の"性格"が三者三様に分かれている、というのが2026年現在のEUR市場の特徴です。
一方、かつての主役だったEURT・EURA・SEURは、いまや24h出来高が $23K〜$87 まで縮み、残った取引もほぼ100%がDEX(CurveやUniswapの特定プール)に集中しています。実需としての出来高はほぼ消え、Curveに沈殿した「動かない流動性」だけが残っています。
なお、ここで見ているのは特定日(2026年6月1日)の24h出来高で、金額自体も大きくないため、日次のぶれは小さくありません。正確な比率というより、銘柄ごとの「癖」――流動性がどの市場へ向かう傾向があるか――を読む参考値として扱うのが適切です。次節以降では、この癖がホルダー分布やDeFi統合の実態と一致するかを、銘柄ごとに確かめていきます。
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