ユーロ建てステーブルコインの5年史――規制が主役を丸ごと入れ替えた(ローカル通貨建てSCシリーズ・EUR編 前編)
2026年06月09日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
ユーロ建てステーブルコインの市場規模は、2026年5月29日時点で約$650M。もっとも、これに近い水準には4年以上前にも到達しており、2022年2月に$721Mのピークを付けたのち、市場は一度大きく縮小しています。
「ピーク水準に近づいてきた」と言えば聞こえはよい、のですが、その間にユーロ建てステーブルコイン市場で何が起きたかを並べてみると、景色はずいぶん違って見えてきます。当時の上位3銘柄はEURT(Tether Euro)、EURA、EURS(STASIS Euro)。いまの上位3銘柄はEURC(Circle)、EURCV(Société Générale)、EURI(Banking Circle)。一銘柄も重なっていません。
つまりユーロ建てステーブルコイン市場は、2022年のピークから2024年にかけて一度大きく縮み、2024年末以降に新しいプレイヤーへ完全に主役を入れ替えながら復活してきた、という歴史を持っています。ドルという基軸通貨を離れた「ローカル通貨建て」ステーブルコインのなかで、ユーロ建ては規模が最も大きく、しかもMiCAという本格的な規制を最初にくぐり抜け、衰退から復興までの一周をひと通り見せた代表的な事例です。
日本でも2025年10月のJPYC発行を皮切りに、2026年には信託型の円ステーブルコインが控えており、JPYステーブルコインはいままさに立ち上がりつつあります。先行するユーロの5年は、その近未来を読むうえでの数少ない実例になります。
本稿(EUR編・前編)はその5年の歴史を辿り、なぜ・どのように主役が入れ替わったのかを整理します。続く後編では、入れ替わった新しい主役たちが実際にどこで・誰に・どう使われているのかを解剖し、そこから日本円ステーブルコインへの示唆を引き出します。
日本でも2025年10月のJPYC発行を皮切りに、2026年には信託型の円ステーブルコインが控えており、JPYステーブルコインはいままさに立ち上がりつつあります。先行するユーロの5年は、その近未来を読むうえでの数少ない実例になります。
本稿(EUR編・前編)はその5年の歴史を辿り、なぜ・どのように主役が入れ替わったのかを整理します。続く後編では、入れ替わった新しい主役たちが実際にどこで・誰に・どう使われているのかを解剖し、そこから日本円ステーブルコインへの示唆を引き出します。
5年間の歴史を1枚で見る
まず全景を1枚のチャートで押さえておきます(図表1)。
赤色は2021〜2022年のピーク期に主役だった旧プレイヤー(過去Top3:EURT・EURA・SEUR)、青色はMiCA以降に台頭した新プレイヤー(現在Top3:EURC・EURCV・EURI)。各カテゴリ内で1位は塗りつぶし、2位・3位はハッチで識別しています。グレーはそれら以外の「その他」(EURS、AEUR、EURE 等を含む)です。
2021年中盤から赤の山が急速に立ち上がり、2022年2月に約$721M規模でピークを打って、その後3年かけて萎んでいきます。2024年6月のMiCA EMT条項の適用開始を底に、2024年後半から青の山が立ち上がり始め、2025〜2026年に一気に厚みを増します。赤の山から青の山へ――主役の世代交代が、ほぼまるごとオーバーラップなしに起きていることがよく分かります。
では、この主役交代はなぜ、どのように起きたのか。5年間を4つのフェーズに分けて辿ります。
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