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GENIUS法時代の勝者を探る:StablecoinX Inc.とENA投資戦略

2025年07月23日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • StablecoinXの事業戦略とEthena財団がもつ拒否権
  • 総括
    • ENAの投資価値について:GENIUS法における戦略的ポジションの可能性とは
新たに設立された企業、StablecoinX Inc.が、特別目的買収会社(SPAC)であるTLGY Acquisition Corp.との合併を通じてNasdaqグローバルマーケットへの上場を目指し、同時にEthenaプロトコルのガバナンストークンであるENAを取得するための約3億6,000万ドルの大規模な資金調達(PIPEファイナンス)を実施するという計画が発表されました。
本件における主要な関係者は以下の通りです。

  • StablecoinX Inc.: 本取引のために新設された、デラウェア州法人。その中核事業は、EthenaプロトコルのガバナンストークンであるENAを財務資産として購入し、永久に保有すること、そして同プロトコルのためのインフラストラクチャおよびステーキングサービスを運営することです。  
  • TLGY Acquisition Corp. (OTC: TLGYF): StablecoinXとの事業統合を目的として設立された特別目的買収会社(SPAC)。ケイマン諸島法人であり、公開市場へのアクセスを提供する「器」としての役割を担います。  
  • Ethena Foundation: ステーブルコインUSDeを発行するEthenaプロトコルのガバナンスを担い、その分散化と長期的な発展を保護することを任務とする財団(非営利とみられるが法人形態は未開示)。本取引全体を主導し、Class B 株により議決権の過半を保持し、主要事項に実質的な決定権を持つ、事実上の主役です。
    関連レポート:Ethena/USDeの概要 合成ステーブルコインの急性成長要因と潜在リスク

この取引の核心は、StablecoinXが調達した資金を用いてEthena財団からENAトークンを大量に購入し、そのENAを売却することなくバランスシート上で永久に保有し続けるという点にあります。
この戦略は、企業の財務資産としてビットコインを大量に蓄積するStrategy社(旧MicroStrategy社)のモデルを彷彿とさせますが、その支配構造と資産の性質において根本的な違いを内包しています。

本レポートでは、この複雑な金融スキーム、前例のないガバナンス構造、およびENAの財務戦略について内容を理解し、今後の展望を考察します。

SPAC合併の枠組み

StablecoinXのNasdaq上場を実現するための一連のプロセス、すなわちSPAC合併、PIPEファイナンス、特異な資金還流という流れになっています。
この構造は、DeFiプロトコルが伝統資本市場のツールをいかにして自らの目的のために活用しようとしているかを示す、重要なケーススタディとなります。
TLGY Acquisition Corp. と StablecoinX Assets Inc. が合併し、商号をStablecoinX Inc.に改称する典型的な SPAC 取引の流れとなっています。

PIPEファイナンス:3億6,000万ドルの資金調達

SPAC合併を支える資金調達の核となるのが、PIPE(Private Investment in Public Equity)と呼ばれる、特定の投資家グループを対象とした私募増資です。
調達総額は約3億6,000万ドルにのぼり、その内訳は現金約2億6,000万ドルと、割引価格で提供される約1億ドル相当のENAトークンで構成されています。
Ethena財団自身が6,000万ドル相当のENAを現物出資するのに加え、暗号資産分野で世界的に名高いベンチャーキャピタルが多数参加しています。具体的には、Dragonfly、Ribbit Capital、Pantera Capital、Galaxy Digital、Haun Ventures、Polychain Capital、Wintermuteといった、業界のトップティア投資家たちが名を連ねています。

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