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Layer 3は本当に必要か?|その存在意義、用途、そして発展余地

2024年07月30日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • 背景
  • L3の用途
  • L3の存在意義
  • L3の将来的な展望
  • 総論

前提

本レポートでは、ブロックチェーンのスケーラビリティを向上させ、多様なアプリケーションの開発を可能にするLayer3ブロックチェーン(以下、L3)について解説します。L3がどのようにしてソリューションを提供するのかを解説し、具体的にどのようなプロジェクトが開発されているのかも紹介します。
本レポートの目的は、L3の可能性と限界を理解することです。L3の導入によるメリットとデメリットを通じて、その必要性を考察します。
L3で解決しようとするアイデアは比較的簡単に思いつき、想像しやすいものです。しかし、Layerを一つ増やすことでブロックチェーンネットワーク全体の複雑さが増し、様々な懸念点が生じることは間違いありません。そこで、本レポートでは、L3が問題をどのように解決し、どのようなトレードオフがあるのかを理解することでL3の必要性について読者が判断できるようになることを目指します。
また、L2についてやL2の周辺知識について知っておきたい方はこちらのレポートも参照ください。
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背景

ブロックチェーン技術が進化してきた歴史をL1、L2の役割を簡単に紹介し、L3の位置付けを示しながら紹介します。

ブロックチェーン技術の概要

ブロックチェーン技術は、分散型の台帳システムであり、安全性と透明性を提供するために設計されています。しかし、広く採用されるにつれてスケーラビリティの問題が顕著になってきました。特に、Ethereumのトランザクション処理能力は約15 TPS(Transactions Per Second)であり 、これがトランザクションの遅延やガス料金の上昇を引き起こし、ユーザー体験を悪化させています。
この問題を解決するために、ブロックチェーンをlayerに垂直に分けて、セキュリティを維持したままスケールさせる方法がとられてきました。それぞれのlayerについて簡単に紹介します。

L1の役割

L1は、ブロックチェーンの基盤となるlayerです。EthereumやBitcoinなどのL 1ブロックチェーンは、トランザクションの検証、スマートコントラクトの実行、セキュリティの維持を担当しています。しかし、L1単体ではスケーラビリティに限界があります。

L2の役割

L2ソリューションは、L1の限界を克服するために開発されました。これらのソリューションは、トランザクションをオフチェーンで処理したり、トランザクションをまとめることで、メインブロックチェーンに定期的に統合します。これにより、トランザクション処理能力を大幅に向上させ、ガス料金を削減します。代表的なL2ソリューションには、以下のものがあります:
  • サイドチェーン: メインチェーンと並行して動作する独立したブロックチェーン。サイドチェーンはメインチェーンと連携して動作し、トランザクションの処理能力を増やすことでメインチェーンの負荷を軽減できます。
  • Validium: ゼロ知識証明を用いてトランザクションの正当性を検証します。トランザクションの検証はオンチェーンで行われますが、トランザクションデータはオフチェーンに保存することで、オンチェーンのデータストレージにかかる負荷を大幅に軽減します
  • ロールアップ: ****トランザクションをバッチ処理し、一度にL 1に送信することで効率化する方法です。L2上の複数のトランザクションが正当なものであると「楽観的」に仮定し、1つのトランザクションにバッチしてL1に送信するOptimistic Rollupと、ゼロ知識証明を用いてトランザクションの正当性をまとめて検証することができるzkRollupの2種類あります。Validiumとは異なり、証明と検証に必要なトランザクションのデータがL1に送信され、オンチェーンで検証されます。データがオンチェーンに保存されるため、データの可用性が確保されます。

L3の位置付け

L3は、さらに高度なスケーリングと機能拡張を提供するlayerです。L2の上に構築され、以下のメリットを提供します。
  • 相互運用性:異なるL2ソリューションやL1とのシームレスな連携を実現
  • 高度なスマートコントラクト:より複雑なロジックを処理できるスマートコントラクトをサポート
  • スケーラビリティのさらなる向上:L2以上のスケーラビリティを提供し、大規模なトランザクション処理を可能に

L3の用途

L3を適用することで、より多くの課題を解決することができそうです。具体的に、L3がどのように使われているのかを見ていきましょう。

1. 1つのアプリケーションのスケーラビリティの向上

アプリケーションに特化して、そのユースケースごとにカスタマイズされた機能を提供するブロックチェーンをL2の上にL3として展開することができます。こうすることで、EVM(Ethereum Virtual Machine)とは異なる方法での計算を行うことができたり、特定のデータフォーマットに最適化されたデータ圧縮などの操作が可能となります。

2. ネットワークのスケーラビリティの向上

本レポートでは、ゼロ知識証明の概念や実際の流れについて解説していません。そのため、「ゼロ知識証明とは何か」や「実装におけるcircuitの役割、制約、実装のルール」を把握したい方は、以下のレポートを参照してください。
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L2がL1のセキュリティを担保しつつスケーラビリティを向上させたのと同様に、L3を導入することでさらにスケールできるのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、L2の上にL2と同じようなL3を重ねても、あまり大きな恩恵を受けることができません。
これを理解するために、zkRollupが何を削減するのかを考えましょう。zkRollupは、トランザクション検証の計算とブロックチェーンに保存するデータ量を減らすことを目的としています。これをzkRollupをさらにzkRollupすることでさらに削減できるのでしょうか?
検証の計算に関しては、zk-SNARKの再帰証明というものを使うことでスケールすることができます。再帰証明をブロックチェーンのstateの検証に応用するイメージを以下の図に示します。
再帰証明とは、zkSNARKで作成したProofをさらに検証するcircuitを構築することで再帰的に証明を生成し、一つの証明にしてしまうというものです。再帰証明を用いることで、ブロックチェーンのstateの移り変わりをまとめて1つのproofにして証明することができます。以下の図では、ブロックチェーンのstateと、正しくstateが移り変わっていることを示すdataを用いてProofを作成しています。Proof_0はstate_0に正しく遷移したことを示し、Proof_1はstate_0 → state_1と正しく遷移したことをProof_0を用いずに証明します。これを再帰的に繰り返すため、Proof_nはstate_nまでの遷移全てが正しく行われたことを証明できます。
また、異なるブロックチェーンであっても再帰証明やHaloの証明集約を用いることで1つの証明にすることができます。これでstateの検証の計算を集約できます。

著者作成


計算を集約することができることが分かりましたが、もう一つのボトルネックとなっているブロックチェーンに保存するデータ量が課題となってきます。証明に必要なデータ量を圧縮するのは難しく、証明するstateの遷移が多ければ多いほど証明に必要なデータも多くなっていきます。証明に必要なデータとは上図のdataで表されているものであり、トランザクションの宛先、署名データ、ガス代などのデータのことを指します。扱うトランザクションやstateが多ければ多いほど証明に必要なデータが多くなっていき、これらのデータをあまり圧縮することができないため、L2の上にL2と同じようなスケーリングソリューションを持つL3を重ねても、あまり大きな恩恵を受けることができません。

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