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Monadの概要:EVM互換のスケーラビリティを再定義する新世代のレイヤー1ブロックチェーン

2024年09月06日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • なぜEVM互換のあるハイパフォーマンスレイヤー1、なぜMonadに注目するのか?
  • Monadの概要
  • Monadのエコシステムの概要
  • 総括

前提

2024年の現在、SolanaSuiAptosなどの高スループットを誇るレイヤー1ブロックチェーンに注目が集まり、DeFiLamaによればTVLは増加傾向にあります。これらのチェーンは、高速なトランザクション処理能力を特徴としており、独自の技術アプローチを採用していますが、Ethereum Virtual Machine(EVM)との互換性を持たない点が特徴です。
このため、これらのチェーンは独自のエコシステムを構築することが可能ですが、その反面としてEthereumエコシステムのリソースを直接利用するのが困難です。
MonadはEVM互換性を持ち、高いスケーラビリティと性能を提供する新しいレイヤー1ブロックチェーンとしてこの領域に参入しようとしています。執筆現在では、devnetが稼働しています。
Monadは、2024年までの資金調達ラウンドで2.25億ドルの資金調達しています。投資家には、リードとしてParadigm、その他にGSR VenturesElectric CapitalCoinbase Venturesが含まれます。また、HsakaやAnsemといったエンジェル投資家も資金提供に参加しています。
本レポートでは、Monadがなぜ注目する理由があるのか、どのようにハイパフォーマンスを実現するか、開発者エコシステムを醸成する現状を解説します。
読者は、今後Monadエコシステムへ参加する、あるいは投資を検討するうえで基礎的な情報を網羅することができます。

Monadの基本情報リンク

なぜEVM互換のあるハイパフォーマンスレイヤー1、なぜMonadに注目するのか?

そもそもEVM互換のブロックチェーンが注目される理由は、Ethereumのエコシステムが提供する豊富なツールと開発者コミュニティにあります。EthereumはDeFiやNFTエコシステムの基盤として広く採用されており、将来的に1億人以上のユーザーとトランザクションへとさらに増加するポテンシャルがあります。
しかし、レイヤー2を含め現状のスループットではこの需要に対応しきれず、今よりも遥かに効率的でスケーラブルなインフラが求められます。
CoinGeckoによるまとめによれば、SolanaやSuiなどの高性能ブロックチェーンは現実のトランザクション速度においても非常に優れており、エコシステムも活発です。特にSolanaは1,053.65 TPSという高いパフォーマンスを記録しています。

https://www.coingecko.com/research/publications/fastest-blockchains を参考に筆者作成


しかし、これでもSolanaの理論的な最大速度である65,000 TPSのわずか1.6%に過ぎません。あくまで理論値ですが、Monadの10,000 TPSは、これらのブロックチェーンと比較しても極めて高いスループットを持つ可能性があり、優れたユーザー体験とアプリケーション開発環境に対応することができます。
なお、TPSは、各ブロックチェーンエクスプローラーとDune Analyticsから公開されているデータを使用して計算されていますが参考値であり、一時的な状況をまとめたに過ぎません。
EVM互換のハイパフォーマンスブロックチェーンが登場することで、既存のEthereumエコシステムを活用しながらも、さらなるスケーラビリティとユーザー体験の向上を目指す新しい選択肢が提供されることになります。
これは、既存のEVM互換のあるBSCやAvalancheなどのレイヤー1ブロックチェーンに対して、強力な競合となるポテンシャルがあることを意味します。この意味で、Monadは新たな強力な競合インフラとして注目に値すると考えられます。

Monadの概要

Monadの技術的特徴は、大きくConsensusとExecutionの特性に分けられます。また、共有メモリプールやノード要件などについても触れておきます。

Consensusの特性

  1. MonadBFT
  2. Deferred Execution
  3. Carriage Cost と Reserve Balance
  4. 共有メモリプール

1.MonadBFT

MonadBFTは、Monadブロックチェーンのために特別に設計されたビザンチンフォールトトレランス(BFT)コンセンサスメカニズムであり、HotStuffプロトコルをベースに改良されています。
まず、従来のHotStuffプロトコルは、分散ネットワークで合意を形成するためのBFTアルゴリズムです。このアルゴリズムでは、ネットワーク上のノードが一定数の投票に基づいてブロックの追加を合意します。HotStuffは通常3つのフェーズを通じて合意に達します。
  • 1フェーズでリーダーノードが新しいブロックを提案する
  • 2フェーズでバリデータノードがその提案に対して賛成票を投じる
  • 3フェーズで合意が正式に形成される
この3フェーズのプロセスは、合意形成のために各ノードが頻繁に通信を行う必要があり、通信オーバーヘッドが増大することで通信低下させる原因となり得ます。
MonadBFTはこのような課題を解消するため、合意形成のプロセスを2フェーズに短縮しました。MonadBFTでは、リーダーノードが新しいブロックを提案した後、すぐにバリデータノードがその提案に対して賛成票を投じる手法を採用しています。この手法により、合意に達するためのフェーズが1つ削減されるため、ネットワーク上で必要な通信回数が減少し、通信オーバーヘッドが削減されます。結果として、トランザクション承認の速度が向上し、ネットワーク全体のパフォーマンスが向上します。
以下の図は、HotstaffとMonadBFTのフェーズ比較です。

https://x.com/contributedao/status/1746066093947732058/photo/1


さらに、MonadBFTは、リーダーノードがタイムアウトする場合の処理も強化されています。タイムアウトとは、リーダーノードが提案したブロックがオフラインなどの何らかの理由で一定時間内に承認されない場合を指します。このような状況が発生すると、バリデータノードは「タイムアウト証明(Timeout Certificate)」を生成し、次のラウンドに進みます。
このタイムアウト証明は、バリデータがリーダーからの提案を受け取らなかったことを証明し、これによって次のリーダーノードが選ばれ、次の合意形成プロセスが迅速に開始されます。これにより、ネットワークは不具合が発生しても迅速に対応でき、全体の安定性が保たれます。

2.Deferred Execution

Deferred Executionは、コンセンサスと実行のプロセスを分離する手法であり、トランザクションのスループットを最大化します。ノードがトランザクションの順序について合意に達した後、実行は後で行われます。これにより、ブロック生成とトランザクション実行を並行して行うことができ、スループットが向上し、リソース使用の効率も高まります。

3.Carriage Cost と Reserve Balance

Monadでは、キャリッジコスト(ネットワーク上でトランザクションを運ぶためのコスト)を導入し、それをリザーブバランスで管理する仕組みを持っています。この仕組みの導入にはいくつかの意図があります。
まず、キャリッジコストを導入する主な目的は、ネットワーク上のスパム攻撃や不要なトランザクションの送信を防ぐことです。
また、リザーブバランスの管理により、ネットワークの安定性と効率性が向上します。各アカウントにはリザーブバランスが設定されており、これはそのアカウントが持つ「トランザクションのキャリッジコストを支払うための予算」として機能します。リザーブバランスが不足しているアカウントは、新しいトランザクションを送信する前にリザーブバランスを補充する必要があります。
これらの仕組みにより、アカウントがネットワークリソースを過度に使用することを防ぎ、ネットワーク全体のリソース使用が最適化され、トランザクションの優先順位付けなどの公平性が保たれます。

4.共有メモリプール

Monadは共有メモリプールを採用しており、各バリデータノードのメモリプールに保管されている未処理のユーザートランザクションを共有しています。トランザクションはエラーレートコーディングされ、ブロードキャストツリーを介して他のバリデータノードに効率的に伝達されます。これにより、トランザクションの伝播が高速化され、全てのノードが同じ情報を持つことでコンセンサス形成の効率が向上します。

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