「NFT-Fiは金融プリミティブになり得るか?」特集|4月22日~5月12日の期間限定レポート

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  • より多くの人に暗号資産・ブロックチェーンの知見を届けるために
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より多くの人に暗号資産・ブロックチェーンの知見を届けるために

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「NFT-Fiは金融プリミティブになり得るか?」特集|4月22日~5月12日の期間限定レポート

4月22日~5月12日の期間限定レポートでは「NFT-Fiは金融プリミティブになり得るか?」をテーマに特集します。
NFT-Fi、つまり「コレクションとしてのNFT」ではなく「金融商品としてのNFT」が謳われ始めて久しく経ちますが、2022年4月現在本格的なNFT-Fiの時代は未だ到来してはいません。
しかしながら、その実現を期待する声も少なくはなく、それを実現しようとするプロジェクトも少しづつ増えてきていることから、「NFT-Fiは将来の金融プリミティブになる」と豪語する声も少なからずあります。果たして本当にそうなのでしょうか?

今回の期間限定記事ではこのNFT-Fiの現状と期待、そしてその課題を理解し、NFT-Fiは未来の金融プリミティブになる得るのか、それとも一時的な流行りものとして終わるものなのか、この点に対する考えを深めることを目的に特集します。

NFT-Fiの現状と期待

まずNFT-Fiと呼ばれているものを軽く整理します。
NFT-Fiの型は一つではなく、NFTをFTに細分化して交換価値を向上させるもの、NFTのレンタルを可能にするもの、NFTを担保に資金を貸し出すNFTレンディングなどさまざまあります。
いずれのNFT-Fiもコレクションとして保有しているだけのNFTから運用益を得たいというニーズに応えることを主な目的としており、特に高額NFT保有者ほどにそのニーズは強いのではないかと感じています。

また別視点では、これまでのNFT界隈の盛り上がりは新たな参入者の存在(新たな資金流入)ありきの投機熱による盛り上がりであったことは否めず、新規参入者数の頭打ちが界隈をネガティブに転じさせるきっかけになる懸念もあります。執筆時点のNFT界隈は部分的に盛り上がりを見せてはいますが、既存ユーザーの資金があるところから別のところへと偏って流れている、つまり目立つプロジェクトの市場価格は上がっているが、目立たなくなったプロジェクトの市場価値が相対的に下がる傾向にあり、界隈全体として見ると若干雲行きが怪しくなっているように筆者は感じています。実際、DappRaderの2022年Q1報告書ではアクティブウォレット数の増減が少ないことが示されており、閉じた経済圏の中で注意を引き合うだけのゲームになってしまっているようにも思えます。このような背景からキャピタルゲインだけを期待して成り立つ投機家中心のNFT市場構造からの脱却も求められており、新たなユーザー層の金銭的な参加障壁を和らげる可能性のあるNFT-Fiに注目が集まっているという側面もあります。
参照:https://www.coingecko.com/en/coins/jpeg-d
上画像はNFTレンディングプロトコルJPEG’dのガバナンストークン$JEPGの市場価格推移を示したチャートです。
JPEG’dは2022年2月下旬に行われた寄付イベントという名の資金調達を通じて寄付者に$JPEGトークンを配布しました。当時はテストネット運用のみで、トークン配布後にメインネット上に少しづつユースケースを作り、需要を生み出していますが、執筆時点でもNFTレンディング機能は実装されていません。
どのようなプロトコルになるのか昨年時点でも概説はされており、大雑把に言えばNFT担保型ステーブルコインになることがわかっています。つまりMakerDAOに類似したレンディングプロトコルです。
詳しくは以下の期間限定無料公開レポート①をご参考ください。
期間限定無料公開レポート①:JPEG’d|CDPをマージしたNFTレンディングプロトコルの概要
執筆時点でJPEG/ETH LPトークンによるファーミング、JPEGのステーキングが実装されてはいるもののレンディング機能はなく、本質的需要によって価値づけられているわけではありません。上のチャートを見る限りは市場価格はポジティブではありますが、少なくとも上記のインセンティブだけではなく、将来的な需要予測に基づく投機的価値で上昇している可能性もあると筆者は邪推しています。つまり、NFTレンディングが十分な市場として成り立つことを前提にした期待であるため、もしその前提が幻想に終わった場合にはネガティブに転じる可能性もあるでしょう。

NFTレンディングの担保となり得るNFTとは?

NFT-Fiが将来の金融プリミティブになり得るのか、それともただの流行りものとして終わるのか。
この点に関する筆者の意見を整理していきます。
まず大前提として「NFTレンディングの担保となるNFTは市場全体の一部に限定される」と考えています。
よりはっきり言えば、金融商品になり得るNFTは基本的に没個性的なNFTから生じる可能性が高く、the NFTとして認知されがちな個性的なNFT群、アーティストによる一点物のNFT群からは生まれにくいと筆者は予想しています。
没個性的なNFTとは何かというと、例えばある規則に準じて10,000点ちかく生成されたジェネレーティブなPFP NFT群などを指します。この没個性的なNFTは個性的、一点もののNFTとは異なり、同類交換の仕組み(Floor priceの概念など)が暗黙の認識として成り立っており、それ故にNFTでありながらFTのように扱われる傾向にあります。つまり、FTに近づいたNFTはコレクションが価値尺度をもつ金融商品らしい性質をまとっています。
このことが流動性の低さを多少和らげるため、交換価値が向上し、担保評価額を定めやすくします。この没個性的なNFTが金融商品に近づくという点は以下の期間限定無料公開レポート②で解説していますので、詳しくはそちらを参照ください。
※期間限定無料公開レポート②:NFT価値の源泉を問う【後編】|「没個性的な」がみせるNFTの臨界点
このことからNFTレンディングの対象は基本的には没個性的なNFT群から生まれる可能性が高いと考えています。
例えば、個人アーティストが作成して販売するNFTは流動性が低いため、市場評価額が不明瞭であり、多くの場合において交換価値を持ちません。つまり純粋な所有価値、鑑賞価値としてNFTを消費することはあっても、投機や投資対象にはなりづらく、それ故に金融商品にもなりにくいと言えます。
ただし、個性的なNFT群のなかにはアート作品としてある一定規模の経済圏内で価値があるものと評価されている場合においては担保価値がつく可能性はあるでしょう。

しかしそのような場合を含めたとしてもNFTレンディングプロトコルが事前に対象NFTを審査をしなければならず、その作業はおそらくDAO、またはコアチームによってある程度の人力を要するものである以上はその対象はほんの一握りとなり、多くはその対象外になるものと考えておいた方が良いでしょう。

NFTレンディングは未来の金融プリミティブになり得るか?

NFTレンディングが未来の金融プリミティブになり得るか否かは担保となるNFTの流動性如何とその対象NFTの広さ(市場規模)による部分が大きいだろうと筆者は考えています。
没個性的なNFT群であれば流動性が向上しているから担保になる、と考えるのは幾分早計であり、実際に担保にできるものは没個性的なNFT群の中でもほんの一握りに限定されるのではないかと考えています。
なぜなら没個性的なNFT群であったとしても、FTと比較するとやはり流動性が低く、加えて各プロジェクトが各々に閉じたコミュニティであるため、それを保有することで得られる利点がコミュニティ外では認知されづらく、余程有名で、ユーティリティが分かりやすく、市場価値が比較的安定しているなどの条件が揃っていないと担保にはし難いと思われます。上記のような条件を満たさない低流動的なNFTを担保に資金を貸し出し、清算が発生した場合、プロトコルは担保売却に苦しみ、負債を抱えっぱなしになるリスクがあります。
その場合、一時的にネイティブトークン(FT)を新規発行して負債を補填することで問題を解消することも不可能ではありませんが、FTを担保とするMakerDAOのようなものと比較するとNFT担保型はそのリスクの発生可能性が高いためにネイティブトークン保有者が抱えるリスクが相対的に高くなります。加えてこの負債を短期的にでも抱える期間がある以上は複数の貸付案件を同一期間に受け付けることはリスクを増幅させますから、担保対象のNFTであったとしてもプロトコルのNFT借入は制限される可能性もあります。
また、この負債を解消できないかもしれないリスクを抑えるには、余程厳選されたコレクションのみを担保対象とするということになり、その場合はその分だけ市場規模は限定される可能性があります。つまり、期待されるNFTレンディング市場の規模はNFT市場全体の規模で見積もれるようなものではないかもしれません。
加えて、このような限定的な市場規模であれば、そこから発生する収益もそこまで多くは見込めず、ネイティブトークン保有のインセンティブとなるプロトコル収益の分配もその規模感で見積もる必要があります。そうなると、NFTレンディングのネイティブトークンが抱えるリスクの高さがそれに見合うリターンを期待させるものなのかどうかの判断も怪しくなってくるでしょう。
非常にネガティブなシナリオ予測をしてしまいましたが、これはあくまでも可能性の話であり、実際には異なる展開が待っている可能性があります。例えば対象NFTにわかりやすいユーティリティが付与されていることが当たり前になり、かつそれが広く需要されるようなものになるのであれば流動性は向上するはずですから、上記で展開したネガティブばシナリオにはなりにくくなるでしょう。また対象となるNFTが限定的であったとしても、その対象NFT群に十分な市場規模があれば、リスクに見合うリターンが提供される可能性もあります。
また同じNFT-FiでもNFTレンタルはまた話が別で、この場合は対象NFTの幅がより広くなるでしょうから、普及する可能性は比較的高いようにも感じます。いずれにせよ、まだ十分に開発が進んではいない領域ではありますので、今後の展開予測も筆者の憶測の範囲を出ず、はっきりとそうだとは断定できません。どちらかと言えば筆者はNFT-Fiの今後の発展に期待をしている立場ではありますので、あえて批判的な態度で述べましたが、引き続きこの領域の動向には期待も込めて着目をしていきたいと思っています。

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