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非中央集権のストラクチャード・プロダクトの組成を実現するRibbon Financeの概観

2021年04月30日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • Ribbon Financeの概要 
  • ストラクチャード・プロダクトとは?
  • Ribbon Financeの商品カテゴリー
    • 複数のDeFiオプションプロトコルでストラングル戦略を実現する「Series V – Strangle」
    • カバードコール戦略によりEthereumを保有しながら利回りを享受することが可能な「Series Y - Theta Vault」
  • Ribbon Financeの開発者
  • Ribbon Financeへの投資家
  • 総論

前提

本レポートではRibbon Financeの概要について解説をします。
Ribbon FinanceはHegicやOpynなどのDeFiでの仲介者がいないでも成立するデリバティブプロトコルにおいて組成された、オプション契約を組み合わせてストラクチャード・プロダクト(仕組商品)の提供を可能とするサービスです。
Ethereum上に構築されるノンカストディアル型のオプションプロトコルであるHegicやOpynについての基本的な情報としては下記で解説しています。
今回のレポートではRibbon Financeの基本概要、提供する4つのカテゴリーの商品などについて解説します。
ドキュメント
https://docs.ribbon.finance/

Ribbon Financeの概要 

ここ数年にDeFiのイノベーションによるエコシステムの急激な拡大は、分散型取引所、レンディング、オプション、フィクスト・インカム、アルゴリズム・ステーブルコイン、シンセティック・アセットなどますます多様化し、伝統的なメインストリームのファイナンスに沿った発展をしています。
特異な点としてはAMM(Automated Market Maker)へのリクイディティー提供やシンセティック・アセットの組成などのイノベーションにより一般の人々にも多様な収益獲得機会を提供したことは、金融の歴史においても極めて珍しく、非中央集権であるDeFiの特性です。
マネーレゴとも称されるDeFiの特性ですが、昨今のイノベーションにより上記の通りパーツとなるプロトコルは揃いつつあり、それらの異なるプロトコルを複合してリスクを管理する商品を組成する仕組商品とDeFiの相性は良いといえます。
Ribbon FinanceはDeFiプロトコルにより仕組商品の組成を可能とすることで、Metamaskなどのウォレットを保有する一般ユーザーに対して、オプション・先物・債券などを組み合わせて、ポートフォリオのリスク・リターン・プロファイルの改善する仕組商品への投資が可能とするため敷居を取り除き、DeFiエコシステムに仕組商品という新たな市場を構築しするプロトコルとなると期待されています。
そして、ユーザーがより高いリスク・リターンを得られるように、DeFi上で仕組商品を組成し、DeFiプロトコルを組み合わせることにより新しいDeFiによるプロダクトを生成することが可能となることを目的としています。
Ribbon Financeには大まかに4つの商品カテゴリーの商品群を提供する予定としています。
各カテゴリーは、異なるリスク・リターン目標を持つユーザーに差別化されたサービスを提供する予定です。なお、現在時点では①ボラティリティーに賭ける商品として「Series V – Strangle」、②イールドの追求商品として「Series Y - Theta Vault」が公開されていますが、アルファリリースのためスマートコントラクトのコード監査を実施が完了しておらず、利用にはリスクが伴います。(「Series V – Strangle」については現在公開が一時停止されています。)
これら商品カテゴリーおよびリリースされた商品についての概要については後述にて説明をしています。

ストラクチャード・プロダクトとは?

まずは、ストラクチャード・プロダクト(仕組商品)についての説明をします。
仕組商品とは、市場連動型投資とも呼ばれ、単一の証券、複数の証券のバスケット、オプション、インデックス、コモディティ、債権、為替、およびデリバティブなどをベースとして、複数のプロダクトを組み合わせて組成することで、投資家のリスク・リターン・プロファイルにフィットしたプレパッケージの商品によるストラクチャード・ファイナンスを用いた投資戦略です。
具体的には、投資家の観点からではストラクチャリングとは、リターンのフローをカスタマイズすることを意味しています。例えば、特定の証券をポートフォリオに組み入れたくないが、アップサイドのみを享受したい場合に、代替策として仕組商品と用います。仕組みとしては、他の事業体(主に金融機関など)と契約を締結し、指定された株式が一定期間に指定された閾値(30%など)を超えた場合に双方はそのリターンを支払うという合意をします。(30%の上昇の場合は金融機関が投資家へ支払、30%下落の場合は投資家が金融機関へ支払う)
また、発行体からの観点では、ストラクチャリングとは、投資家の希望するリターンを実現するために、既存の金融商品をいくつか組み合わせることで実現して、資金調達などを行うことが可能となります。
最近で仕組商品がニュースとなった事例ですと、金融機関が多額の損失を計上したアルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引は「トータル・リターン・スワップ」という仕組商品を扱っていたものがあります。これは原資産の信用リスクと市場リスクの双方を移転する金融契約になります。
仕組商品の利点としては以下が挙げられます。
①     プリンシパル・プロテクション(※仕組商品の種類による)
②     課税適合のある商品へのアクセス
③     商品の種類によっては、投資のリターンを高めることが可能
④     商品の種類によっては、投資のボラティリティー(リスク)の低減が可能
⑤     低利回りまたは横ばいの株式市場環境でプラスのリターンを得る能力
⑥     有価証券や現金を担保とした担保付商品を使用することにより、発行体リスクを最小限に抑えることが可能
反対に、仕組商品のデメリットは以下になります。
①     信用リスク:主な仕組商品は投資銀行などに対する無担保債務
②     流動性の欠如:仕組商品は主に店頭で取引され、発行者はマーケットメイクを行う義務がない
③     非常に複雑:リターンの計算が複雑なため、原資産を単に所有している場合と比較して、仕組商品がどのように機能するかを判断することが応じて困難
④     往々にして数学的にはギャンブルと同等の仕組みであることが多い(※定量的ストラクチャリング手法を用いた商品は該当しない)
⑤     仕組商品が実際にどのような問題を解決しているのかが明確でない(※定量的ストラクチャリング手法を用いた商品は該当しない)
仕組商品は非常に複雑なファイナンシャル・エンジニアリングを用いて組成されるため、金融機関と投資家の間には情報の非対称性が発生しているケースが多いこともあり、往々にして投資家が不利な契約をなっているケースが多くあります。
本邦においても金融機関が大学機関などの機関投資家に販売されていた、オプションやスワップなどのデリバティブを組み込むことで、通常の債券のキャッシュ・フローとは異なるキャッシュ・フローを持つようにした仕組債権が、期待できるリターンが大きなマイナスとなる「ハイリスク・マイナスリターン」という投資家に不利な条件であったため、訴訟が行われた事例があります。

DeFiプロトコルにより組成された仕組商品の場合は、第三者がコードベースで複雑な仕組みを検証することが可能であり、投資家と発行者(リスクテイカー)の間に情報の非対称性が発生しにくいことから、本来の仕組商品の利点を追求した健全な市場が構築されるのではないかということが期待されています。
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