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米国最大の取引所Coinbaseの概観 上場目論見書の分析や暗号資産企業最大のIPOが業界に与える影響について

2021年02月27日

目次

  • 前提
  • Coinbaseの主力事業
  • Coinbaseの会社概要と沿革
  • Coinbaseの2020年末時点での業績の要点
  • Coinbaseの主要株主・資金調達
  • 暗号資産企業として最大のIPOが業界に与える影響について
  • Coinbaseの成長性についての考察
  • 総論

前提

本レポートでは、米国最大の取引所Coinbaseの概観および、上場目論見書の分析や暗号資産企業最大のIPOが業界に与える影響について解説します。
アメリカ最大の暗号資産取引所Coinbaseは2021年2月25日にアメリカSECに上場目論見書(S-1)を提出しました。本上場による予想時価総額は$80 billion(800億ドル)から$120 billion程度(1,200億ドル)、日本円にすると8兆円から12兆円程度のレンジだろうと予想され、暗号資産業界が始まって以来、最大のIPOとなります。業界への影響も非常に大きいものになります。
加えて、これまで非上場のため一般に明らかになっていなかったこの業界のトッププレイヤーの業績に大きな注目が集まるでしょう。今回のレポートは、同社の目論見書の要点や、広い意味での影響を分析することを目的とします。

Coinbaseの主力事業

Coinbaseの製品群を解説します。Coinbaseの主力事業は取引所ですが、全体としては以下のような事業ラインナップになっています。
参照:https://www.coinbase.com/products
取引所事業としては、
  • Coinbase(初心者向け)
  • Coinbase Pro(プロ向け・米国で最も出来高がある市場)
  • Coinbase Prime(機関投資家向けのブローカー事業)
の大きく3つに分類されます。
CoinbaseとCoinbase Proの棲み分けについては、日本国内取引所の販売所と板取引所のような違いであると考えれば良いでしょう。
Coinbase Primeは、機関投資家向けのブローカー事業で、大口のオーダーに対して、Coinbase Proや他社のOTCなど複数を横断して価格を提示することができます。Coinbaseは、2020年5月にTAGOMIを$90 million(9000万ドル)で買収しました。TAGOMIは暗号資産のブローカーディーラーで、顧客から注文があった場合に、CoinbaseやBinance、FTXなど複数の取引所を横断して、最適レートを提供する取引機能を特徴としています。TAGOMIの顧客の中心は機関投資家で、Coinbaseはこの買収によって機関投資家に対する取引手段をさらに充実させた形になります。
同社の収益の中心は取引手数料収入で、Coinbase Proの手数料形態は次の通りです。直近30日の取引量に応じて手数料が変化して、取引量が大きければ大きいほど手数料率が下がる仕組みです。
参照:https://pro.coinbase.com/fees
Coinbaseの取引量は米国では長らくトップを維持しており、世界全体ではBinanceに次ぐ規模です。
参照:https://www.bitcointradevolume.com/
取引所以外の事業としては、Circleと連携して行っているUSDCステーブルコインの発行があります。
加えて、暗号資産をチャージして決済できるデビットカード事業、モバイルウォレット、機関投資家向けカストディがあります。
また、暗号資産を無料で配布するCoinbase Earnは、ユーザーが所定の条件を満たすと特定の暗号資産が貰えるサービスです。様々な種類の暗号資産を配っていますが、このサービスを利用するプロジェクト側視点では、Coinbaseが抱える膨大な数のユーザーに認知を得ることを利点としています。
それ以外に、CoinbaseはCoinbase Venturesという投資部門を持っています。主要な投資先としては、Compound、BlockFi、Dharma、Celo、Securitizeなどが挙げられ、約70のプロジェクトに投資しています。投資先一覧は下記のリンクから閲覧できます。

Coinbaseの会社概要と沿革

Coinbaseの主力事業は、創業時から現在に至るまで一貫して暗号資産の取引所ビジネスです。
Coinbaseは2012年にBrian ArmstrongとFred Ehrsamの2名によって設立されました。Brian Armstrongは元Airbnbのエンジニア、Fred Ehrsamは元ゴールドマンサックスのトレーダーです。もう一名初期の創業メンバーとしてBen Reevesがいますが、彼は早期にCoinbaseとは袂を分かち、Blockchain.infoの創業に参画しています。また、Fred Ehrsamも2017年にCoinbaseを離れて暗号資産専門のファンドであるParadigmを創業しており、2021年時点で創業者として残っているのはCEOのBrian Armstrongのみです。
Coinbaseは2012年の夏にY Combinatorのプログラムに参加をし、$150,000ドルを獲得してサービスをローンチしました。それ以前、Brian Armstrong氏は起業を志すことはなく、Y Combinatorのプログラムに挑戦したのも腕試しが半分であったと言います。自作ソフトウェアを作るなかで思いついたアイデアでY Combinatorのプログラムに参加し、自信をつけたというエピソードを20VCのポッドキャストで語っています。
同氏がBitcoinに出会ったのは2011年で、シリコンバレーエリアの第一次Bitcoinブームにあたります。2011年~2012年のBitcoin業界で有名な会社はbitInstantやMt.Gox、BitPayなどで、やや後発で登場をしたのがCoinbaseでした。特に初期のBitcoinコミュニティではサイファーパンクに傾倒する人間が多く、中央銀行への批判を多く行うような人物が目立っていましたが、Coinbaseは当時からそういったテーマとは一歩距離を置き、成長を遂げて行きます。
黎明期のBitcoin業界ではギャンブルやウォレットアプリなど様々な分野でスタートアップが創業されました。2015年頃からは、その中でも取引所という事業カテゴリが最も成長する事業セグメントであったと認識されるようになります。その頃にはすでにCoinbaseは米国最大の暗号資産取引所として認知を得ていました。
2017年に行った資金調達で、Coinbaseは暗号資産業界で最初にユニコーン企業になった会社として取り上げられています。この頃には同社はアメリカ以外にもオフィスを開設し、ヨーロッパを中心にグローバルでも存在感を強めています。
2018年以降は、機関投資家向けの製品の拡充も目立ちます。当時の最大のカストディ企業Xapoを傘下にして、Coinbaseは取引所だけでなくカストディ事業者としても業界最大となっています。
これらの機関投資家向けのインフラストラクチャーを備えて、2020年から2021年にかけては多くの機関投資家のBitcoin購入をサポートしていることが明らかになっています。Micro StrategyやTeslaなどの企業がBitcoinを購入する際に、Coinbaseがサポートしたことが明らかになっています。
まとめると、Coinbaseはリテール向け取引所ビジネスからスタートをして、現在は機関投資家にも信頼される暗号資産取引所企業であることが同社の沿革になります。前節で事業を紹介した通り、同社は取引所以外の事業も複数展開していますが、収益のほとんどは取引所事業によるものです。詳しくは次節で解説します。
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