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各国の中央銀行はなぜ中央銀行デジタル通貨(CBDC)研究を推進し始めたのか|その動機となり得る7つのポイント

2020年12月08日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • CBDC研究を動機づける可能性のある7つのポイント
    • 1.中央銀行マネーへのアクセスを維持するため
    • 2.現金にはレジリエンスがある
    • 3.決済の多様性を維持、または向上させるため
    • 4.金融包摂の促進
    • 5.クロスボーダー決済
    • 6.公共におけるプライバシー(または匿名性について)の調整
    • 7.財政政策と金融政策の効率化、および選択肢の増加
  • 総論

前提

本レポートでは中央銀行デジタル通貨(CBDC)の研究を推し進める各国中央銀行の動機を理解することを目的に、BIS(Bank for International Settlements、国際決済銀行)の報告書を元に7つのポイントに整理して考察します。
各国のCBDC研究は、CBDCに対する懐疑的な意見が散見されていた以前の状況とは裏腹に、2020年以降急速に進んでいます。BISが2020年1月に発表した調査報告書では、その対象銀行の80%がCBDCに取り組んでいる(当初の調査では70%であった)という結果が報告されました。また、Covid-19の感染拡大後はBISから次々とCBDCに関するレポートが発表され、CBDCの詳細な設計に関する議論もなされるようになってきました。
例えば韓国銀行(BOK)は2019年1月にCBDCが経済にマイナスの影響を与える可能性があるとして、CBDC発行に異論を唱える報告書を発表しています。この報告書では「国民がCBDCに直接アクセスできるようになると、商業銀行の普通預金残高が減少し、銀行は現金の不足に対応するために貸出金利を引き上げる可能性が出てくる」また「商業銀行の普通預金口座残高が不足するとパニックが発生するリスクが高まり、金融安定性にマイナスの効果を与える可能性がある」と指摘していました。このようなCBDC発行と金融政策、経済安定性に関連する懸念は、もちろん韓国銀行だけではなく、他のCBDCの検討をしていた多くの中央銀行(我が国も含む)も同様に慎重に対応すべきだという姿勢を取っていました。
しかし、2020年に韓国銀行は2021年にCBDCの実証実験を実施すると以前の態度から一変したような発表を行いました。2019年初頭に懐疑的な意見を出していた我が国も同様に、2021年にCBDCの実証実験を控えているという状況です。誤解のないように補足をしておくと、このCBDCが孕む金融安定性や経済に対するマイナスの影響は執筆時点でも懸念される点であり、CBDCを設計する上で十分な検討を必要とします。
このような背景を踏まえた上でCBDCの可能性を探索する研究が前進している理由は、各国のCBDC研究が加速化していることに対する焦燥感からなのか、もしくはイノベーションを重視する幹部が新たに着任したからなのか、もしくは他のなにかか。各国がCBDCを研究する動機もそれぞれが置かれた背景も異なるため、あくまで推測とはなりますが、本レポートではこれらのCBDC研究を推し進める動機になるであろうCBDCの特性を、BIS報告書を参考に整理して解説を加えます。
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