中銀デジタル通貨(CBDC)における 「情報の匿名化と開示」バランス考察
2020年07月01日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- 各決済システムとCBDCに求められるプライバシーレベル
- 現金:【取引相手以外に対しての匿名性が高い】
- Bitcoinなどのパブリックブロックチェーン上の暗号資産【公に対して取引情報を公開】
- CBDC【匿名性と規制に応じた開示のバランス】
- 総論
前提
本レポートでは、中銀デジタル通貨(以下CBDC)におけるプライバシーと規制(情報の匿名化と開示)のバランスについて考察します。
なぜCBDCにプライバシーが必要なのか、この点にはついてはパブリックブロックチェーンにおける匿名化技術の必要性と重複する部分があるでしょう。過去レポートでその詳細に触れていますが、ここでは過去レポートからその要点を抜粋して簡略化して解説します。※詳しくは以下の過去レポートを参照ください
- 個人情報の不正利用防止:トランザクションが公開されていると、それらと個人情報(もしくは企業情報)が紐づくことで、個人や企業の取引履歴や資産が公に知られてしまう。プライバシー保護の観点からも、企業取引の機密性保護の観点からも望ましくはない
- 基本的人権:EUのGDPR(一般データ保護規則)などの規制遵守の観点からも個人情報保護は求められる
- 強盗から身の安全を守る:保有資産と個人情報が紐づくと「5ドルレンチ攻撃(たった5ドルで購入できるレンチで物理的に脅される)」のような強盗事件に巻き込まれる可能性がある
- 当該コインをexpensiveにする:人は匿名性が高い通貨の方を受け取りたがる傾向にあるため、匿名性のある通貨は需要がより高くexpensiveになる(一説による)
ただし、中銀デジタル通貨の場合には、これらプライバシーの必要性に加えてマネーロンダリングなど不正リスクを踏まえた規制面も考慮しなければなりません。つまり、匿名化の逆で規制当局など特定の誰かに対して情報を開示する必要性もあります。その意味では「匿名か完全開示か」という二者択一では考えられず、単に匿名レベルの高い技術を設計採用するだけでは足りず、どのような情報を誰に対して開示して、何は秘匿にされるべきなのかという、匿名性と規制のバランスを踏まえたシステム設計が求められます。
【過去レポート】
Bitcoinと主要なプライバシーコインの匿名化技術を概観する
https://hashhub-research.com/articles/2018-12-01-privacy-tech
https://hashhub-research.com/articles/2018-12-01-privacy-tech
本レポートはカナダ中央銀行アナリストによるCBDCのプライバシー技術調査レポートを参考に、CBDCで必要とされるプライバシーと規制のバランスについての考察を行います。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。