主要なアジアの国における暗号通貨取引所、Security Tokenの規制、方向性の概観

目次

  • 前提
  • 日本におけるSecurity Tokenの規制、方向性
  • タイにおけるSecurity Tokenの規制、方向性
  • シンガポールにおけるSecurity Tokenの規制、方向性
  • 香港におけるSecurity Tokenの規制、方向性
  • 総論

前提

本レポートでは、主要なアジアの国におけるSecurity Tokenの規制、方向性を概観し、日本・タイ・シンガポール・香港を取り上げます。
日本はアジアの中ではGDPが最も大きく、タイは経済規模が中堅ですがSecuiry Tokenに先進的な国であり、シンガポールと香港は金融ハブとして重要なポジションであることから取り扱います。中国については公開されている限り、現時点でSecurity Tokenの議論は進んでおらず、政府内部で規制が準備されている可能性がありますが、今のところ取り上げるべき有用な情報はありません。
なお筆者は規制の専門家ではなく、規制の細かな内容については正確性を欠く場合があることを予め免責しておきます。
本稿は各国の大まかな動向を把握して、読者がより深く調べることや興味を得ることを目的にしており、正確な情報やより詳しい内容は現地に精通する弁護士などを当たることをおすすめしています。

日本におけるSecurity Tokenの規制、方向性

日本におけるSecurity Tokenの規制については、2020年に施行されます。
暗号通貨を暗号資産という名称とし、資金決済法で規制し、株式や社債などの金融商品をトークン化する場合は金融商品取引法(金商法)の範囲内で規制されます。これに伴い、資金決済法と金商法のいずれもが改正されます。
後者の骨子は、第一項有価証券としての性質を有するものをトークンにした場合、同じく、第一項有価証券として金商法上の開示規制は適用されるものとします。これにより、STOの売買、募集、私募の取り扱いには、第一種金融業の登録が必要になります。なお、加えて第一種少額電子募集取り扱い業務の対象とすることも可能であり、この場合、株式型クラウドファウンディングと同じ扱いになります。
また、Securityのトークン化を「電子記録移転権利」と定義して金商法の規制対象となるトークン(電子的な証票)の範囲を明らかにしています。改正された金融商品取引法(金商法)では、新たに「電子記録移転権利」という概念が導入されました。これは、金商法の規制対象となるトークン(電子的な証票)の範囲を明らかにする考え方です。
したがって、今後は、仮想通貨等のICO、STOのうち、「電子移転記録権利」にあたるものであれば金商法で規制されることになります。前述の通り第一項有価証券であることから資金決済法で登録される暗号通貨の取引所事業者は取り扱いが出来ません。
これについては、アンダーソン・毛利・友常法律事務所による以下のリンクは網羅性が高く詳しく知りたい方にはおすすめです。
(参照:https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins2_pdf/190409.pdf )

タイにおけるSecurity Tokenの規制、方向性

タイは、暗号通貨およびSecurity Tokenの規制が先進的な国の一つです。
2018年5月に、暗号通貨に関する法案が発表されています。法案では、暗号通貨とSecurity Tokenの区別もなされています。暗号通貨は、あるシステムやネットワークの中で使用される中間交換媒体、またはなにかしらの権利を持つ電子的データと定義されます。
加えて、タイのSECに認められた銘柄のみを取り扱うことが出来る日本のホワイトリストに近しい制度を持っています。
執筆時点で、BTC、ETH、XRP、XLMを扱うことができます。加えて、Security TokenをDigital tokenと呼称して、定義しています。
Digital tokenは、特定の企業・プロジェクト・他特定のグッズに投資をしていることを示す電子的権利です。
タイにおいては、事業者が取得できる免許が3つに細分されます。
  • Digital Asset Exchange License(交換所ライセンス)
  • Digital Asset Broker License(ブローカーライセンス)
  • Digital Asset Dealer License(ディーラーライセンス)
Digital Asset Broker Licenseは、登録された交換所のブローカー業務を行えます。Digital Asset Dealer Licenseは登録されている取引所と接続して、独自のアカウントで取引機会を提供できます。暗号通貨とSecurity Tokenのいずれもがデジタルアセットとして定義されており、Digital Asset Exchange Licenseの保有者は取引機会を提供出来ることが特徴です。
しかし、発行と公募自体は行えず、ICO portalの免許を保有する企業のみが行えるとされています。

シンガポールにおけるSecurity Tokenの規制、方向性

シンガポールにおけるFSA(Monetary Authority of Singapore)は、2018年11月にデジタルトークンの発行に関するガイドラインを公開しています。
(参照:https://www.mas.gov.sg/-/media/MAS/Regulations-and-Financial-Stability/Regulations-Guidance-and-Licensing/Securities-Futures-and-Fund-Management/Regulations-Guidance-and-Licensing/Guidelines/Guide-to-Digital-Tokens-Offering-last-updated-on-5-April-2019.pdf )
ガイドラインでは、株式や社債などの所有権を示すトークンは、Security Tokenと括られる定義が明確になっています。加えて、それらは日本で該当するところの金商法であるSecurities and Futures Act (SFA)で監督されます。
Security Tokenの公募、二次流通市場の提供、デリバティブなど提供するサービスは、従来の金融商品と同様の規制下で行われ、それぞれ同様のライセンスが必要になることが公開されています。加えて、BitcoinやEthereumなどのアセットは、2019年2月に公開され、施行は年末が予定されるPayment Services Act 2019によって監督されます。
これは日本の資金決済法と近い形であり、暗号通貨とSecurity Tokenの規制が分離しています。
(参照:https://sso.agc.gov.sg/Acts-Supp/2-2019/Published/20190220?DocDate=20190220 )

香港におけるSecurity Tokenの規制、方向性

香港ではHong Kong Securities and Futures Commission (証券・金融監督局)から2017年9月にICOの規制ガイドラインが発表されています。
2018年11月には、暗号通貨取引所、暗号通貨を運用するファンドの規制のフレームワークが発表されています。本規制では、virtual assetと定義されており、これは暗号通貨を指します。
(参照:https://www.sfc.hk/web/EN/news-and-announcements/policy-statements-and-announcements/reg-framework-virtual-asset-portfolios-managers-fund-distributors-trading-platform-operators.html )
これに加えて2019年5月に香港の証券・金融監督局は、「Statement on Security Token Offerings」というガイドラインを公表しています。このガイドラインでは、有価証券性があるSecurity Tokenの取り扱いにおいては証券登録の届け出が必要であると示されています。
Security Tokenを扱う事業者は、SFO Type 1 (dealing in securities)とSFO Type 7 (provision of automated trading services) licensesが必要になります。香港ではこのようにガイドラインベースでは出ているものの、法改正の施行などは実際に行われておらず、サンドボックスが持ちかけられている段階です。

総論

本レポートでは、主要なアジアの国におけるSecurity Tokenの規制、方向性を概観しました。
このように見ると、日本とシンガポールは、資金決済法での暗号通貨規制と金商法でのSecurity Token規制を分離しており、類似点が多いことに気づきます。加えて対照的にタイでは、これらは定義区別しているものの、資金決済法に該当する法制度を持っていません。
また、いずれの国でも日本におけるカストディ規制に関しては、議論が活発化されておらず、公表されているような情報はほとんどありません。参考になれば幸いです。