取引所トークンを俯瞰する 利益還元モデルからトレードマイニングまで

目次

  • 取引所が発行するトークンとは
  • 取引所トークンは、現実のキャッシュフローに紐づく現状ほぼ唯一のトークンカテゴリ
  • 取引所トークンのモデル事例と考察1:Binance
  • 取引所トークンのモデル事例と考察2:Huobi
  • 2018年5月に創業をしたFCoinと、Trans-fee mining
  • FTのディストリビューション、FTトークンの設計
  • Trans-fee miningの基本設計、FTの発行メカニズム
  • FT以外のFCoinトークンのFcandy、Locking as Mining について
  • Binance CEOのCZのトレードマイニングへの批判点
  • FCoin CEOの「トレードマイニングはスキャム」に対する反論
  • Trans-fee miningの是非に対する見解、問題点を分解し、より可能性のあるTrans-fee miningを検討する
  • 取引所トークン総論

取引所が発行するトークンとは

本レポートでは取引所トークンについて俯瞰していきます。主要各取引所のトークン、設計概観、トレードマイニングの是非、などについて触れて行きます。
現在、Binance、FCoin、Kucoin、Huobi、Bitmartなどをはじめとして様々な取引所がトークンを発行しています。トークンのモデル設計は取引所ごとに異なり、2018年6月に入ってからは特にトレードマイニングという設計の取引所トークンが注目を浴びています。
一般的に取引所トークンは、中央集権取引所が発行をするトークンを指し、発行体が存在する株式会社発行のトークンです。 
取引所トークンの元祖は、2017年に7月にICOをしたBinanceです。その後、香港ベースの取引所であるKucoinなどがこのBinanceの設計を踏襲し、さらにHuobiなどがこれに続きます。 
これらを第一世代の取引所トークンとすると、第二世代の取引所トークンがFCoinをはじめとしたものになります。FCoinはHuobiの元CTOが2018年の5月に創業した取引所で、FTという自社トークンを発行し、トレードの出来高に応じてトークンを配布するモデルを設計しました。これが一般的にトレードマイニングと呼ばれます。 
一ヶ月もたたないうちに、CoinEx、CoinPark、BKEXといった取引所がFCoinのモデルを模倣し、トレードマイニングは一時トレンドになります。今年の7月にトレードマイニングの人気はピークになり、出来高上位の取引所は、ほとんどがトレードマイニングを採用する取引所となりましたが、これについてはフェイクのボリュームであるという批判もあり、BinanceのCEOなどはトークン設計自体が詐欺的である、とも批判をするなど議論を呼んでいます。
本レポートでは、主要取引所トークンのモデルを整理し個別の考察をしたあとで、各トークンモデルを比較して、より詳細な分析を試みます。

取引所トークンは、現実のキャッシュフローに紐づく現状ほぼ唯一のトークンカテゴリ

大まかに取引所トークンに付与される機能は、以下の中から複数が採用されます。
  • 取引所が営業利益の一部を買い戻し
  • 取引所が営業利益の一部をトークンホルダーに配当をする
  • 取引手数料の割引
  • 新規上場トークンの投票
  • トレードマイニング
  • 保有しているとなにかしらのVIP特典(アフィリエイト特典優遇など) 
などになります。 
重要な点として、ほとんどのトークンは使い道がごく少ししかない、または、使い道が不明なユティリティートークンであることに対して、取引所トークンは、いずれのモデルも、株式会社が将来に生み出す現実のキャッシュフロー価値に紐づくものであるということです。その点では、取引所トークンは、広義の証券トークンとも言えます。
また、いずれのモデルも、そのトークンによってユーザーの動きを誘導している点で、株式会社がトークンを発行したことによって、企業と利用者の双方のメリットをどのように向上できるか、企業にとっては競合企業に対してより有利な競争ができるか、を試行している最先端の実験場であるとも言えます。
仮に、「トークンエコノミー」という言葉を、「トークンによってユーザーの行動に影響を与えること」と定義をした場合、パブリックプロトコルであるビットコインやEthereumを除いて、これほどユーザーを動かしている事例はありません。 
その点でも、「取引所が発行をするトークン」ではなく、より広範に「株式会社が発行をするトークン」という見方で分析をしても、得られる発見は多いと思います。 

取引所トークンのモデル事例と考察1:Binance

まず、いくつかの取引所トークンのトークンモデルを見て行きます。これまで過去のレポートでBinanceのトークン設計には触れており、やや内容が重なる点もありますが、Binanceのトークンモデルについて触れることは避けられないので、こちらから概観をしていきます。 

基本情報

トークンモデル

取引所の手数料に対する支払い。通常、Binanceの取引では手数料は0.1%ですが、BNBトークンでこの手数料支払いをすると0.05%にディスカウントされます。 このディスカウントは、1年目は50%ですが、2年目は25% 、3年目は12.5%、4年目は6.75%と徐々に割引率が下がり、5年目にはディスカウントが終了する予定です。

利益から買い戻し

BNBトークンは、Binanceの運営によって、各クオーターごとに利益の20%が買い戻しされます。買い戻しが行われた分はバーンされ、市場流通量が減り、1トークン当たりの価値が高まることが期待されます。Binanceは1年目で500億円以上の利益を捻出しており、その20%が市場で買い戻しをされ、すでにバーンされています。バーンは全体の流通が100Millionになるまで続けられ、その時点まで買い戻しが行われます。
以上の2つがホワイトペーパーに記載されているトークンの機能で、上記に変更はないまま、2018年8月現在、以下の機能も足しています。 

上場費用手数料

Binanceは、特定のコインが上場する際に上場費用手数料を徴収することがあります。 この支払いにBNBトークンが使われます。 

LaunchPadでのトークン購入

Binanceは、LaunchPadというICOプラットフォームを用意しています。(現在休眠中) リストされたプロジェクトは、Binanceの多くの顧客に認知してもらえ、そのまま上場もしてもらえるだろうことが期待できるのが、LaunchPadの魅力です。 そこで行われるICOではBNBトークンを支払いに利用できます。 

アフィリエイトの優遇

(2018年5月〜) BNBを500BNB以上保有したアカウントは、アフィリエイトの報酬が二倍になるプログラムを発表しました。  

Binance式トレードマイニング(2018年7月〜)

Binanceの取引手数料の優遇についてはホワイトペーパー記載のもの以外に、追加で新しい条件が追加されました。
新しいモデルは、直近1カ月の取引量と保有しているBNBの割合に応じて取引手数料が割り引かれるというものです。最大で、11000BNB以上を保有で0.0150%まで取引手数料を下げられます。割引は、VIP1-VIP8の8段階を経て取引手数料は安くなっていく仕組みです。 
また、BinanceはDEXを使用できるブロックチェーンを将来的に作る予定としており、現在のERC20ベースのトークンから将来的にBinanceチェーンに移行される予定です。 
以上が、Binanceのトークンモデルです。
このBinanceのトークンの機能を既存の金融アセットの機能に照らし合わせて分解をすると、
  • 手数料割引
  • クーポン券・四半期に一度の買い戻し
  • 証券における配当・ホールドをしているとアフィリエイト優遇や手数料がさらに割引になる
  • 株主優待券 
ということになります。
この点でも、前述をしたように現実のキャッシュフローに紐付いたトークンということになります。 
また、Binanceはこのトークンの自社保有分で今後1BillionまでBNBを積立して、スタートアップへの投資をする予定としています。
他、BNBを用いてストックオプションや従業員への給与にしたりなど、企業活動に対してレバレッジをかけている状態と言えます。

取引所トークンのモデル事例と考察2:Huobi

次に大手取引所の一つであるHuobiについて触れます。Huobiは2013年に創業をした取引所ですが、取引所トークンであるHTは、2018年1月にローンチをした形になります。
以下がトークン設計になります。 

基本情報

  • 総発行数:500million
  • トークンの分配方式・ディストリビューション
    • 60%:ユーザーへの配布
    • 20%:ユーザーへの何かしらのリワードプログラムを将来的に行うためにリサーブ
    • 20%:Huobiチームで4年間リザーブ
60%のユーザーへの配布は、2018年1月-2月にポイントカードを購入(取引所手数料の前払い)した人にリワードとして配布されました。ポイントカードを販売したリワードという形で、トークンを配布したことは、実質ICOに近いものになります。あくまでポイントカード購入のリワードという、この手法をとったことはICOを迂回する手段だったと思われます。

トークンモデル

取引所の手数料に対する支払い。HTでVIP会員権を一ヶ月単位で購入することで取引手数料が割引になります。 

利益から買い戻し

HTトークンは、Huobiの運営によって、各クオーターごとに利益から20%が買い戻しされます。
これについてはBinanceと似ていますが、異なる点は、Binanceは購入したものをバーンすることに対して、Huobiはバーンを行いません。買い戻した分をバーンせず、Huobiが運営としてホールドをし、取引所のハッキングなどの不測の自体が生じた際に補填に当てられるように、リザーブします。
また、Binanceの場合は全体の供給量が最初の半分になるまでトークンを買い戻し・バーンをするという期限を設定し公約していますが、Huobiにこのような期限付きの公約はありません。 

上場トークン選定への投票

Huobiは、HADAXという小型取引所も運営しています。本体のHuobiはある程度のデューデリジェンスを経てトークンが上場されますが、HADAXは最低限のチェックとユーザーの投票によって上場トークンが決まる取引所です。この投票にHTトークンが使用されています。 

Huobiの経営ガバナンスへの議決権・投票権

HTトークンは、将来的に、Huobiの経営ガバナンスに対する議決権・投票権を持つ予定としています。これについては将来的な予定であって、詳細は明らかではありません。 
以上が、Huobiのトークンのモデルです。
比較してわかるようにBinanceのトークンから影響を受けたモデルで、類似のものにKucoinのKCSトークンなどがあります。Kucoinは買い戻しの割合が四半期の利益からの10%ではありますが、設計に大きな変更点はありません。
また、HuobiとBinanceはトークンモデルは類似ですが、Binanceとトークンの使い方が異なる点は、Binanceはその価値をあげて企業買収や投資など事業をレバレッジするためのアセットとして自社トークンを併用していますが、Huobiはそのような使い方を今の所していません。
Binance、Kucoin、Huobiなど、これらを取引所トークンの第一世代だとすると、それに対して、FCoinなどのトレードマイニングなどのものを本レポートでは第二世代の取引所トークンと呼ぶことにします 。
次頁では、FCoinなどその他の取引所トークンを概観し、その後比較と考察をしていきます。

2018年5月に創業をしたFCoinと、Trans-fee mining

前頁では、BinanceとHuobiの取引所トークンの設計を概観しました。
これらに対して、最近になって注目を集めるモデルは、トレードマイニングと呼ばれるもので、こちらの概観をします。 これを一番初めに提案したのは、香港の取引所であるFCoin( https://www.fcoin.com/ )です。トレードマイニングは俗称で、FCoin自身は、Transfer・Fee・Miningを合わせた造語で、Trans-fee miningと呼んでいます。 
FCoinは、Zhang Jian氏が今年5月に創業をした取引所で、元Huobi最高技術責任者が創業者です。DHVC、8 Decimal Capital、Node Capitalが投資しています。 
Trans-fee miningという仕組みを考案して、一時、FCoinの取引高は全取引所中でトップになり、ある時点では、2-6位の取引所の出来高と同等まで取引ボリュームを拡大させますが、その後、主要出来高サイトでは、FCoinの取引ボリュームの作り方が問題あるとして、サイト内から表記を消すなどの対応を進めているケースが多くなっています。Coinmarketcapに関しては、取引所出来高ランキングを「top 100 by Adjusted volume」「top 100 by Reported Volume」と2つに分割をするなど行なっています。
Trans-fee miningは、Bit-Z、BigONE、BKEX、CoinNEALなどが模倣をして一大ブームになっています。それぞれの取引所で設計は異なる部分もあり、全てを網羅することは不可能ですが、基本的にはFCoinの発行をするトークンのFTの仕組みから大きく変わりません。
本レポートでは、FCoinの仕組みを概観します。 

FTのディストリビューション、FTトークンの設計

基本情報

トークンの分配方式・ディストリビューション

  • コミュニティリワード - 51%
  • FCoinファンド 23%
  • 創業者チーム 12%
  • 戦略的パートナー 9%
  • プライベートセール 5%
このコミュニティリワードの51%がTrans-fee miningで分配される分であり、このTrans-fee miningは、総供給量51%が発行されるまで続きます。

トークン設計

FTトークン保有者が、FCoinのアカウントで毎日配当を受けられます。配当金額は各日前日の、FCoinプラットフォームでの取引手数料収入の80%です。FCoinのトレード手数料は1%であり、その手数料の8割がFTホルダーに還元されます。 

コミュニティパートナーへの就任権

その他にも、コミュニティパートナーへの就任兼のために1MillionFTを保有するなどの条件を追加しており、必要に応じて機能は足していくように思えます。

Trans-fee miningの基本設計、FTの発行メカニズム

以上がFTのトークン設計になり、基本的には配当モデルです。
このFTを獲得する仕組みがTrans-fee miningです。 ユーザーは、取引をするたびに、新規発行分のFTをアカウントに貰うことができ、もらえる額は取引手数料で支払った金額に対して、50%(アフィリエイトリンクで登録をしている人の場合、90日間は100%)をFTで還元されることになります。
FCoinの取引所としての手数料は1%で、取引をするたびに1%の手数料を支払いますが、その0.5%、または1%の手数料はあとからFTトークンとして戻ってきます。支払われるFTトークンの価格計算は、前日の平均価格で算出されます。 そして、そのトークンの保有者は、上述をしたように毎日プラットフォームの利益の80%が還元されます。
つまりFTで同額が還元をされるのであれば、取引手数料は実質無料であるという見方もでき、そのため多くの人がトレードに参加をします。
とはいえ、最初に参加をする際、一度ビットコインなどを支払い、それがFTトークンに還元されていることから、実質ICOなどと揶揄されることもあります。 
このような設計で、取引をすればするほど、FTトークンが手に入ることから、出来高の多くはBOTによる参加者だと思われ、FCoinなどのTrans-fee mining用に鞘が小さい設計のBOTも出回りつつあります。取引手数料が実質無料でそのままFTが還元をされる、という解釈をする人にとっては、取引手数料負けということを気にしなくて良いため、鞘が極小でも構わないからです。 
以上が、短期間で取引ボリュームトップになったTrans-fee miningの設計メカニズムです。

FT以外のFCoinトークンのFcandy、Locking as Mining について

FCoinは、2018年7月にFT以外に、さらにFcandyというトークンを発表をしました。配布方式には、Locking as Miningと呼ばれる方法が用いられており、概要は下記になります。 

Fcandyを使用したメカニズム

  1. Fcandy資産プールを作る
  2. 資産プールには、FCoinのプラットフォーム手数料収益の半分(つまり全体の10%。80%はFTホルダーに還元のため)をFT建で保管する
    このFTに関しては、FCoin運営がセカンダリーマーケットで購入調達をする
  3. 資産プールは透明性をもち、アドレスは公開される
  4. 資産プールの使い道は投票で決める。この投票権になるものがFcandyトークンになる
  5. Fcandyトークンの分配方式は、ユーザーの紹介や、アカウントにいれている資産金額に応じて行う
    (資産を預けることをLocking as MiningとFCoinは提唱しています) 
以上が、もうひとつのFcandyというトークンになり、こちらはガバナンスコインのような仕組みといえます。なお、執筆現在においてはこの投票モデルについて詳細は明らかになっておらず、なるべく早く公開というステータスになっています。 
つまり、配当を行うためのFTと、ガバナンスに参加をできるFcandyに設計を分けているのが、現状だと言えます。 このFCoinをはじめとしたTrans-fee miningの設計には、様々な議論と批判を呼んでいますが、ここまで概要を整理しましたので、次頁でその点を整理します。 
さて、ここまでBinance、Huobiの第一世代取引所トークンと言えるものと、議論を呼んでいるTrans-fee miningの代表格としてFCoinのトークンモデルを概観しました。 
このモデルに対してどのような点が問題視をされているか、また、実際にこのモデルは持続性があるのかをここで考察していきます。

Binance CEOのCZのトレードマイニングへの批判点

BinanceがFCoinを批判しているシーンは度々散見されます。例えば下記です。
Binanceは上記のレポートの中で、「この手法について当初、Binanceもコピーをしようと検討をしたが、より深く考察するとその仕組みは詐欺的な構造である」とコメントしています。 
また、こちらのCNBCのインタビューの中で、Trans-fee miningについて記者から質問に答えています。
それによると、Trans-fee miningのコンセプトは理解できるが現実的には機能しないだろう、という見解です。
まず、80%の配当、BIGONEなどいくつかの取引所によっては100%の取引手数料収入を配当として取引所トークンの保有者に配ること自体に関しては、ビジネスモデルの設計次第では問題ないだろうとCZはコメントをしています。手数料を実質無料にしてしまっても、取引所はレバレッジ取引で課金をしたり、レンディング機能をつけたり、ビジネスモデルを変化させることが出来るからです。 
しかし、問題点は下記です。
  1. 取引手数料分のトークンが100%還元される→ユーザーは等価の取引所トークンを得る
  2. 同時にそのBTCなどで徴収した手数料はトークンホルダーに配当される→FTトークンホルダーは配当を得る
  3. さらにアフィリエイト手数料などで20%などのボーナスをつけているとする
    加えて、元々マイニングできる分は全体供給量の50%である 
この3点を行なっていることにより、一度の新規コイン発行により、本来的な内在価値より220%割増でお金を刷っているという設計が問題であるという指摘です。つまり、現状の設計であるとトレードマイニングは、最終的に保有をする人が損をするポンジスキームのような構造であるということがCZの指摘です。 
最終的には、全供給量が採掘されトレードマイニング終了後に、プラットフォームで取引をする人は激減し、FTの配当収入は減り、それに伴い、FTは売られ価値が急落するだろうと予測しています。

FCoin CEOの「トレードマイニングはスキャム」に対する反論

下記は、FCoin CEOのZhang Jianへの中国企業BitBlockCapitalによるインタビュー記事です。タイトルは「“Anyone who said FT is a scam, is gonna regret it!”(FCoinをスキャムと言った人は将来後悔するだろう)」という内容です。
彼によると、FTのマイニングはサトシナカモトがデザインをしたビットコインの思想に通じるものだと主張していて、トレーダーらは合理的な決定に基づいて、FTをマイニングする/しない(つまり取引ボリュームをつくる)をしているのであって、彼らをどれだけ投機的と非難しようが、行動が変わることはない。この点はビットコイナー のマイナーと同じであると主張しています。
決められたトークン設計のトークンが、決められたトークンスケジュールで、決められたルールで配布をされることになっており、トレーダーは、そのルールに基づいて参加をしているので、詐欺でもなんでもないという論理です。 
インタビュー記事は6月14日のもので、取引量の推移をみて、執筆時点から100日程度でFTの採掘は終了をすると予測しています。
インタビュアーは、マイニング期間が過ぎ、FTのディストリビューションが完了したら、FCoinはこのような新しいビジネスモデルのみではなく、取引所としてのセキュリティや利便性、オペレーション方法で戦わなくてはいけなくなるだろうとコメントしています。

Trans-fee miningの是非に対する見解、問題点を分解し、より可能性のあるTrans-fee miningを検討する

以上が、Trans-fee miningを詐欺的であるという意見と、それに対する反論です。ここから筆者の見解も交えて、これをより分解したいと思います。 
まず、BinanceのCZが言うように、新規で発行されるFTに対し、内在価値200%以上の価値をつけてしまっていることは事実です。加えて、FCoinではFTは毎日新しく生成されるインフレ通貨です。しかも、このモデルは「インフレ率を上回る成長をすれば良い」というようなモデルではなく、「成長をすればするほど同じくインフレをする」という設計になっています。
全体供給量のマイニングが全て終わるとそれはストップをするので、トークンへの配当機能のみが残ります。しかし、BinanceのCZが言うように、配当機能のコンセプトはありだろうとしており、法的問題を端に置いて考えれば、それは問題ありません。
つまり問題はディストリビューションの過程ということになります。 
今のTrans-fee miningが起こしている状態は、
  • マイニングが下がったら価値が下がることは知っているが、今配当があるから売れない
  • そのように考え売れないプレイヤーがいるから価格もそこそこについている
  • 価格がそこそこについているからトレードマイニングも引き続きそこそこされている
というようなジレンマになっていると言えます。マイニングが終了に近づくにつれ、頃合いを見て、抜ける人が増えるでしょう。 しかし、前述のようにマイニングが終わっても80%の配当は継続されます。
なので、ここでもう一つ考慮されることは、「マイニング終了後にどれだけのユーザーが残って取引をして配当収入があるか」の期待値が変数になります。 
その期待値を十分高く見積れる人は、トレードマイニングに残ることに合理性がありますが、そこに期待値が全くないと判断をする人にとってはこのゲームはポンジスキームなので、抜けるべきでしょう。 
つまるところ、結局、トークン価値は、取引所のユーザビリティなど本来価値に帰属をするということです。そのトークンの配布をTrans-fee miningと称し、出来高に応じて配布をすることは、決して良い方法とも思わないですが、スキャムとも言えないのではないかというのが考えた一旦の結論です。
とはいえ、FCoinをはじめTrans-fee miningを実装している取引所は、このレポートを執筆した8月現在で、お世辞にもBinanceなどトップ取引所とフェアな条件下で戦えるようなユーザビリティを持っているようには見えません。マイニング終了後に、トークン価格は出来高に応じて収束すると予想します。 
以上の問題点を踏まえ、Trans-fee miningをより健全なディストリビューションにし、持続性のあるモデルにするにはどうすれば良いか仮説があります。
Trans-fee miningの期間中に、取引所が本来価値で発揮できるボリュームより大幅にドーピングできる配分比率自体が設計上の問題です。
この設計を、Trans-fee miningの採掘分を例えば手数料の10%を還元、配当は全出来高の5%などとすると、内在価値に対する吐き出しの乖離も少なくなり、またTrans-fee miningをするためだけのBotは手数料に対して10%しか還元されないのであれば、手数料負けをする可能性が高くなり、Botを走らす動機も減少します。
そうすれば現供給量のディストリビューションが完了し、マイニング期間が終了した際に、出来高の乖離は少なくなるのではないかと仮説を持っています。 
また、これは自論で、筆者個人の主観も混ざりますが、Botで出来高を増幅させることになっている点で、もうひとつFCoinにとっても不幸な点は、おそらくFCoinの顧客はFCoinに対して、ロイヤリティが極めて低いのではないかと感じます。
その点ではトークンを作った短期的な射幸心のみで経営も限界を感じる側面でもあります。

取引所トークン総論

今回は取引所トークンを概観しました。お気づきの方も多いと思いますが、取引所トークンを発行する取引所は、全て中国の取引所です。なぜ、こういったトークンを発行するのが、全て中国系の事業者なのでしょうか。
取引所トークンは、その多くのモデルが、株式会社の現実のキャッシュフローに紐づいているほぼ唯一のトークンカテゴリであるということは、本レポートの序章で説明しました。
これは広義に証券トークンです。 
1946年にアメリカ連邦最高裁で出されたHowey Testと呼ばれる基準が現在も広く使われており、次の基準を満たすものは証券とされます。
  1.  資産の投資であること
  2.  投資による利益を期待していること
  3.  投資された資産が同じ企業(プロジェクト)に存在すること
  4.  利益は発起人または第三者によってもたらさられること 
この基準に照らし合わせると、取引所トークンは完全に証券であり、アメリカやヨーロッパの企業が、同じくアメリカ人やヨーロッパ人に発行することは非現実的です。
それを中国企業は、香港やヴァージン諸島に登記して、おかまいなくグローバルの顧客を相手に取引所トークンを与えているのは、国民気質が出たと感じています。
そして、この暗号通貨・ブロックチェーン業界では、グレーのところに躊躇なく飛び込める気概も、能力のひとつであるという側面はあります。 
加えて、中国系の業者はこれまで日本を含めた取引所のバックエンドの一部を作っていた業者もいますので、そういった層がこのコンセプトを見て、一斉に動いたのだろうと理解しています。 
また、冒頭で書いたように、そういった無法地帯で発行されている各取引所トークンは、なんだかんだで株式会社が発行をするトークンモデルの最前線の実験場です。
Binance、FCoinのモデル、いずれのモデルからも学べる部分はあると思います。