カジノと生活金融へ二極化するオンチェーン市場|「賭けたい需要」と「使いたい金融」が同居するクリプト:リサーチチームが選ぶ今週の注目トピック 2026年8月24日号
2026年08月24日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- 今週のインサイト
- 今週1週間分のニュースを紹介
- ▍AI期待崩壊と資本逃避が呼ぶオンチェーン金融再評価
- ▍「賭けたい需要」を収益化するハイパーギャンブル経済
- ▍相関ペアが拓くAMMの世界市場支配論
- ▍Rollbitを巡る運営体制と利用者資金トラブルの告発
- ▍Trade.xyzがHyperliquidを伝統資産市場へ拡張する構図
- ▍成熟期のクリプトで問われる「非コンセンサスで正しい」投資
- ▍Bitcoin以前の理論が支えたBlockchain誕生の系譜
- ▍カジノ型DeFiから生活金融へ進むEtherFiの賭け
前提
本レポートでは、最新のクリプトやWeb3市場、オピニオンに関する記事やスレッドをまとめています。各記事の要点を把握し、トレンドやインサイトを効率的にキャッチアップできる内容となっていますので、ぜひご活用ください。
今週のインサイト
今週のトピックを通して浮かび上がるのは、クリプトが「カジノなのか金融なのか」という二者択一ではなく、むしろその両方を同じ技術基盤の上で拡大させ始めていることです。予測市場やガチャは、人間の「賭けたい」という需要を細かく商品化し、HyperliquidやTrade.xyzは株式、商品、指数まで24時間取引できる市場へ領域を広げています。一方、EtherFiはあえて過度なレバレッジや清算を避け、貯蓄、支払い、投資、借入を長く使ってもらう金融口座を目指しています。さらにUniswapの相関ペア構想は、トークン化によって既存市場の取引ペアそのものまで組み替えられる可能性を示しています。興味深いのは、これらがすべて同じオンチェーン技術から生まれていることです。クリプトの用途が収斂しているのではなく、射幸性を極める方向と、資本効率や生活金融を改善する方向へ同時に分岐しています。次の競争では「クリプトを何に使うか」以上に、どの人間行動を取り込み、どれだけ長く利用者との関係を維持できる市場を作るかが重要になりそうです。
今週1週間分のニュースを紹介
▍AI期待崩壊と資本逃避が呼ぶオンチェーン金融再評価
要約
本稿は、社会全体で巨額のAI投資が行われているにもかかわらず、その成果が生活の質や企業業績、経済成長に十分反映されていないという問題意識から出発し、AI投資期待が剥落した後に金融市場とクリプトがどう動くかを描いた強いマクロ仮説です。
著者は、航空、配車、ソフトウェアなどでAIや自動化への投資が進んでも、サービス品質が目立って改善していないと指摘します。また、AI企業の高い売上成長率も、将来的には安価なモデルへの乗り換えで維持できない可能性があり、AI投資がGDP成長を大幅に押し上げるという期待にも懐疑的です。
その一方で、AI投資の失速、財政悪化、金利上昇、資本逃避が進む局面では、ステーブルコイン、永久先物、トークン化債券、FX、CBDCなどを基盤とするオンチェーン金融が拡大すると予想しています。過去のクリプト強気相場とは異なり、次の局面では企業利用や金融インフラとしての実需が手数料収益を支えるというのが中心的な主張です。
重要ポイント
著者はまず、AI投資の規模に対して実際の社会的リターンが小さいと見ています。AIによる生産性向上が想定ほど速く進まず、創薬などの高度な用途も実用化・承認・収益化まで長い時間を要するため、データセンターへの巨額投資を正当化するほど早く利益には結びつかないとしています。
ホワイトカラー労働については、AIによる代替が一定程度進み、米国の約$16.6Tの給与総額のうち10%が削減されれば約$1.6Tのコスト削減になる可能性を挙げています。ただし、それは企業側の利益改善にはなっても、所得と消費の減少を通じて経済全体には逆風になると見ています。
さらに、AIの計算資源が企業利用から娯楽へ移ることで、ギャンブル、ポルノ、ロールプレイ、個人向け仮想世界、ゲームなど依存性の高い用途が拡大し、生産性をむしろ押し下げる可能性も指摘しています。AIを純粋な生産性革命ではなく、社会の注意力を奪う技術としても捉えている点が特徴です。
読みどころ
クリプトに関する本稿の核心は、AI期待が崩れるタイミングとオンチェーン金融の実用化が重なるという仮説です。著者は、Hyperliquidの主要永久先物の多くがすでに株式関連になり、中央集権型取引所でも伝統資産の取引が拡大していることを、金融資産のオンチェーン化が実際に進んでいる証拠として挙げています。
特にステーブルコインについては、最大の収益用途の1つが永久先物の担保であると捉えています。米国政府がドル建てステーブルコインの拡大を後押しするのは、Tetherのような米国債の大口保有者を増やし、財政を支える意味でも合理的だとしています。
一方、欧州などはドル建てステーブルコインの拡大を通貨主権への脅威と捉え、CBDCの導入を加速すると予想しています。AIによる開発効率向上もCBDC実装を後押しし、その後に非ドル建てステーブルコイン、FX、債券のトークン化が拡大するという流れを描いています。
示唆
本稿で最も重要なのは、トークン化株式よりも債券やFXの方がオンチェーン化による改善余地が大きいという指摘です。株式はすでにIBKRなどで優れた取引体験が提供されていますが、社債や債券市場は取引、担保、決済、レバレッジの面で依然として非効率です。そのため、固定利付商品がオンチェーン化されれば、資本効率や使いやすさの改善幅がより大きいと見ています。
また、将来的に複数通貨のステーブルコインが普及すれば、オンチェーン上に大規模なFX市場が成立し、債券と組み合わせたレバレッジ取引や循環的な資金運用も可能になります。著者にとって、次のクリプト成長は単なるBTCやアルトコインの値上がりではなく、世界の金融商品そのものがオンチェーンへ移ることです。
さらに、AIによるハッキング能力の向上も重要な要素として扱っています。クリプトはこれまで長期間にわたり高度な攻撃にさらされてきたため、そこで鍛えられたセキュリティ技術が、銀行や一般企業より先にAI時代の攻撃環境へ適応している可能性があるという見方です。
ただし、本稿はAI、政治、宗教、財政、市場構造を一続きのシナリオとして結びつけた非常に投機的な論考です。AI投資の失敗、米国政治の左傾化、CBDC普及、債券市場の混乱、資本逃避、クリプト再評価が必然的に連鎖する根拠は示されておらず、多くは著者の世界観に基づく推測です。
最終的に本稿は、「AIが既存制度を救う」という期待に賭けるのではなく、既存制度への信頼低下、資本逃避、金融資産のトークン化が同時に進む世界を想定しています。その場合、クリプトは投機の代替市場ではなく、国家や銀行システムの外側で資本を移動・担保化・取引する金融基盤として再評価される、というのが本稿の中心的な見立てです。
▍「賭けたい需要」を収益化するハイパーギャンブル経済
要約
本稿は、クリプトを1つのカジノとして見るのではなく、ミームコイン、予測市場、ガチャなど異なる賭け方が並ぶ「カジノフロア」として捉えるべきだと論じています。著者の中心的な主張は、利用者が何に賭けるかよりも、「賭けること自体」が商品になっているというものです。
予測市場、ミームコイン、トレーディングカード、ガチャは表面的には異なる市場ですが、いずれも「一発で状況を変えたい」という需要を取り込んでいると著者は見ています。特にAIやロボティクスによって可処分時間が増え、将来への不安や階層上昇への焦りが強まれば、この賭博的な需要はさらに拡大する可能性があるとしています。
その上で、投資対象として重要なのは賭ける側ではなく「胴元側」に立つことだと主張します。なかでも著者は、利用者を短期間で退場させやすいミームコインより、小さな損失を繰り返しながら長く遊び続けられるガチャ型の方が、顧客生涯価値を高めやすいと評価しています。
重要ポイント
著者は、それぞれの市場をカジノのゲームになぞらえています。ミームコインはルーレットに近く、値動きが速く、利用者が短期間で大きな損失を出しやすいため、継続的な取引収益を生みにくいとしています。利用者が最初の数回で資金を失えば、その後の手数料収益も消えるため、CoinbaseやRobinhoodのような取引基盤にとっては必ずしも理想的な商品ではないという見方です。
予測市場はスポーツブックに近いと整理されています。利用者は情報収集や予測をしているつもりでも、結果としてニュースや政治、スポーツなどを賭けの対象へ変えており、運営側はスプレッドや手数料を得ます。本文では、KalshiとPolymarketが2026年7月に合計約$50.6Bの想定元本ベース取引量を記録したことを、この需要の強さを示す例として挙げています。
一方、ガチャはスロットマシンに近く、小さな損失を何度も繰り返させる構造です。1回で資金を失うのではなく、「もう1回」という行動を長く継続させやすいため、運営側にとって利用者1人あたりの長期収益を伸ばしやすいとしています。
読みどころ
本稿で特徴的なのは、これらの市場を「投資対象の違い」ではなく、「損失速度と利用継続時間の違い」で比較している点です。著者にとって重要なのは、利用者がどれほど大きく賭けるかではなく、どれほど長くテーブルに座り続けるかです。
その意味で、ミームコインは非常に強い射幸性を持つものの、利用者を短期間で退場させるため、事業としての継続性には弱点があります。反対にガチャは、損失額を小さく分散でき、画面に張り付き続ける必要もないため、より広い層が「気軽に賭ける」行動へ参加しやすいと見ています。
著者はオンチェーン上の具体例としてCARDSやFWAを挙げています。特にFWAについては、利用者が資産をプールへ預けて利回りを得ながらガチャ型の仕組みに参加できる点を評価しており、単純な賭博ではなく、流動性供給やトークン設計を組み合わせた構造に可能性を見ています。
示唆
本稿の最大の示唆は、今後のクリプト市場では「金融商品を売る」こと以上に、「繰り返し参加したくなる賭けの体験を設計する」ことが重要になる可能性があるという点です。市場ごとの勝敗よりも、運営側がどれだけ長く利用者を残し、何度も手数料を発生させられるかが事業価値を左右するという視点です。
そのため、著者は個々のミームコインを選ぶより、PUMPのような発行基盤や、ガチャ型プロトコルなど「胴元」に近い位置を取る方が有利だと考えています。利用者の勝ち負けにかかわらず、取引や発行が続く限り収益を得られる構造を重視しています。
一方、「人々が賭ける理由は欲ではなく地位への不安である」という部分は、本稿の著者による強い社会心理的仮説です。AIによる余暇増加や階層不安が賭博需要を拡大するという因果関係も、本文内で実証されているわけではありません。したがって、これは市場構造の分析というより、著者がハイパーギャンブル経済を説明するために置いた前提として読む必要があります。
最終的に本稿は、ミームコイン、予測市場、ガチャなどを別々の流行として見るのではなく、「人間の賭けたい需要をどの形式で、どれだけ長く収益化できるか」という共通軸で捉えています。その中でも、利用者を一度で退場させず、低頻度かつ長期間参加させられるガチャ型の仕組みに、著者は最も大きな成長余地を見ています。
▍相関ペアが拓くAMMの世界市場支配論
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