限られた資金とアテンションを奪い合うクリプト市場|何が伸びるかより誰が利益を回収するか:リサーチチームが選ぶ今週の注目トピック 2026年8月10日号
2026年08月10日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- 今週のインサイト
- 今週1週間分のニュースを紹介
- ▍強気相場でFOMOを抑える70対30の配分論
- ▍クリプト経験をAI時代の思考訓練として捉え直す視点
- ▍2036年に日常へ溶け込むブロックチェーンの4つの未来
- ▍AI信用バブル崩壊が呼ぶBitcoin再上昇仮説
- ▍2026 Hyperliquid Q2レポート
- ▍アジアの予測市場を国外流出させる制度空白
- ▍取引所流動性の実像とColdcard流出事件
- ▍CLARITY Actが決める米国クリプト市場の制度設計
- ▍Robinhood Chainで進むUniswapの発行基盤化
前提
本レポートでは、最新のクリプトやWeb3市場、オピニオンに関する記事やスレッドをまとめています。各記事の要点を把握し、トレンドやインサイトを効率的にキャッチアップできる内容となっていますので、ぜひご活用ください。
今週のインサイト
今週のトピックから見えてくるのは、クリプト市場が一枚岩で回復するのではなく、限られた資金とアテンションが、明確な参加理由と収益還元を持つ領域へ選択的に集中していることです。投資家側では、高確信資産と短期投機を分離し、FOMOを管理しながら上昇機会を取る設計が重視されています。一方、市場全体では現物需要が弱い中でも、HyperliquidのRWA市場、Outcome Market、Robinhood Chain上のミームコイン、予測市場など、24時間取引、イベント性、高回転性を持つ場には流動性が残っています。ただし、成長の果実は必ずしも基盤トークンへ均等に帰属しません。UniswapではLaunchpadと流動性基盤、HyperliquidではBuilderとDeployer、ステーブルコインでは発行体と流通事業者の間で、手数料や準備金収益の取り分をめぐる競争が進んでいます。さらに、AIへ資本が移る環境では、クリプトは単独の物語ではなく、AI信用サイクル、機械決済、RWA、情報市場との接続によって再評価されます。今週は、何が成長するか以上に、その成長から誰が継続的に利益を回収できるかが問われた1週間だったといえます。
今週1週間分のニュースを紹介
▍強気相場でFOMOを抑える70対30の配分論
要約
本稿は、強気相場におけるポートフォリオを、70%の高確信銘柄と30%の高リスク銘柄へ分ける運用方法を提案しています。長期保有する中核資産と、短期的なNarrativeやMomentumを狙う資金をあらかじめ分離することで、判断を明確に保ちつつ、大きな上昇機会にも参加できるという考えです。
高確信枠は、数か月保有できるFundamental Thesisと、誤りを認める明確なInvalidationを持つ銘柄へ配分します。一方の高リスク枠は、新規Token、オンチェーン銘柄、ミームコイン、永久先物によるレバレッジ取引などを対象にし、勝率の低さを受け入れながら非対称なReturnを狙います。
この分割の目的は、単なる分散投資ではありません。話題の銘柄を追うために中核Positionを売却する行動を防ぎ、短期取引で得た利益を後から高確信銘柄へ再投資できる構造を作ることにあります。
重要ポイント
70%の高確信枠には、BTC、ETH、SOL、HYPEのように、一定期間保有できる根拠を持つ資産を置きます。ただし著者が最も有望だと考えているのは、すでに主要銘柄として確立した資産よりも、市場のConsensusが形成され始めた段階のMid-cap銘柄です。
過去の例として、時価総額が約$10Bだった段階のSOLやCOIN、2024年に市場の共通認識となる前のHYPEが挙げられています。この枠では、短期的な値動きを追うよりも、次の主要銘柄になり得る対象を調査し、時間をかけてPositionを構築することが重視されています。
会社員など継続収入がある人には、収入の一部を定期的にRisk Assetへ回す方法も提案されています。また、Xは新しいNarrativeや分析力のある参加者を見つけるResearch Forumとして評価されています。
読みどころ
読みどころは、30%の高リスク枠を、収益機会だけでなく心理管理の手段として位置づけている点です。新規Pairの探索、革新的なオンチェーン銘柄、Momentumを持つミームコイン、永久先物のLongなどへ参加する資金を最初から確保しておけば、相場で話題の銘柄が上昇しても、中核資産を売って追いかける必要がありません。
この枠では損失の発生率が高くなる一方、1つの成功がポートフォリオ全体のReturnに大きく影響する可能性があります。特に資産規模が小さい参加者については、他のTraderより早くNarrativeを発見し、Consensusになる前にPositionを取るため、調査とオンチェーン活動へ多くの時間を使うべきだと述べています。
さらに、高リスク枠で利益が出れば、その資金を最も確信度の高い銘柄へ移し、長期Positionを拡大できます。短期投機と長期保有を対立させず、短期的な成功を長期的な複利形成へつなげる設計です。
示唆
本稿の示唆は、強気相場で重要なのは銘柄選択だけでなく、異なる目的を持つ資金を混ぜないことだという点です。高確信銘柄が動かない時期でも、別枠の資金で上昇中のNarrativeへ参加できれば、他の銘柄への嫉妬や焦りを抑えやすくなります。
著者は今後、頻繁に売買するTraderよりも、正しい銘柄を持ち続けるHolderが優位になる局面を想定しています。ただし、長期保有している対象が本当に優良銘柄とは限りません。30%の高リスク枠は、選択を誤って価値の低い銘柄を握り続けた場合に備える補完手段にもなります。
一方、70対30という比率は普遍的な正解ではありません。永久先物、レバレッジ取引、ミームコイン、新規Tokenは元本を大きく失う可能性があり、1000倍という表現も極端な上振れを前提としたものです。実際には資産規模、収入の安定性、損失許容度に応じて比率を調整し、高確信枠にも明確な撤退条件を設定する必要があります。
最終的に本稿は、長期保有と短期投機を同じ資金で行わず、それぞれの目的、時間軸、損失許容度を明確に分けることが、強気相場で判断力を維持するための基本だと主張しています。
▍クリプト経験をAI時代の思考訓練として捉え直す視点
要約
本稿は、現在のクリプト市場低迷を単純な弱気相場ではなく、社会の関心がAIへ移った結果として捉えています。ChatGPT以降、日常の投資家が触れられる最も知的に刺激的な技術はクリプトからAIへ移り、AMM、永久先物、予測市場の改善だけでは、雇用や社会構造を揺るがすAIとRoboticsほど人々の想像力を引きつけられなくなったという見方です。
著者は、過去の相場循環が繰り返されると考え、2023年以降に株式や未公開株へ十分に移行しなかったことを反省しています。また、FTX、Celsius、BlockFi、Anchorなどによって多くの個人投資家が損失を受け、クリプト市場へ戻らない層を生み出したことも、現在の需要低迷を説明する重要な要因だと述べています。
一方で、クリプト自体の価値が失われたとは考えていません。ステーブルコイン、RWA、予測市場、オンチェーン利回り、未公開株への投資機会などは実用段階へ入りつつあり、クリプトで培われた分散化、耐検閲性、Privacy、Oracle、Credible Neutralityの思想は、AI時代の権力集中を抑える基盤になると評価しています。
重要ポイント
著者が最も強調しているのは、価格低迷と技術普及を区別すべきだという点です。Token価格や一般の関心は弱くても、金融インフラとしてのクリプトは着実に成熟しています。ステーブルコインやTokenized Assetが既存金融の配管を置き換え、オンチェーン金融が日常的に使われるようになれば、過去に掲げられた構想は派手なNarrativeではなく、当然の基盤として定着します。
ただし、その経済的な恩恵が広く個人へ分配されるとは限りません。著者は、実用化による利益の多くが、資本やAccessを持つ既存の富裕層へ集中する可能性を懸念しています。クリプトの大衆化と、クリプト企業や金融機関の収益拡大は、必ずしも同じ意味ではありません。
また、今後の関心回復は過去のBull Marketの再現ではなく、AI Agent、DePIN、Robotics、Startup Equityの流動化などとの接続によって起きると予想しています。クリプト単独のNarrativeではなく、他の技術分野に組み込まれる形で再び存在感を高めるという見立てです。
読みどころ
読みどころは、クリプトを投資対象ではなく、高速な学習環境として再評価している点です。クリプト市場では、技術、金融、心理、Macro、Incentive Designに関する仮説が、価格や資金フローを通じて即座に検証されます。そのため、他の分野よりも短期間で成功と失敗を経験し、未来を分析する能力を鍛えられると述べています。
著者自身も、Zora、Friend.tech、Runesなど、知的には魅力的でも市場では崩壊した対象へ投資した経験を振り返っています。この反省は、興味深い技術と優れた投資対象を区別する必要性を示しています。将来性のある構想であっても、価値の蓄積方法や需要、競争優位が弱ければ、投資成果にはつながりません。
さらに、BitcoinとZECのようなPrivacy Coinについては引き続き強気です。多極化する国際秩序や国家債務の増加を背景に、国家や単一企業に依存しない資産と取引手段が、実際のHedgeとして重要になると考えています。
示唆
本稿の示唆は、クリプトが「夢を売る段階」から「収益を生むインフラの段階」へ移ったということです。初期の市場では、将来の可能性やNarrativeだけで資産価格が上昇しましたが、関心が薄れた後は、Revenue、Buyback、Distribution、Cash Flowのような実体が求められます。いわゆる「Revenue Meta」は一時的な流行ではなく、成熟した市場では当然の評価基準だという主張です。
これは、クリプトが失敗したというより、若い反体制的な産業から、企業、金融機関、規制当局と向き合う成熟産業へ変化したことを意味します。刺激や大幅な価格上昇は減る一方、継続的な収益を持つ事業や社会基盤としての価値は高まります。
同時に、クリプトの理念はAI時代に再び重要になります。AI Model、Compute、Data、Agentが少数企業や国家へ集中すれば、取引、Identity、情報検証を中立的に実行できる基盤が必要です。クリプトが10年以上かけて検討してきた分散化や耐検閲性は、AIによる技術的封建制を防ぐための設計思想として転用できます。
最終的に本稿は、クリプトで過ごした時間を過去の投資失敗として否定せず、次の分野へ進むためのTraining Groundとして活用すべきだと主張しています。変化の速度がミームコインのChartのように急激になる世界では、クリプトで身につけた不確実性への耐性、群集心理の理解、仮説を修正する能力が、AIを含むあらゆる分野で価値を持つというのが中心的なメッセージです。
▍2036年に日常へ溶け込むブロックチェーンの4つの未来
要約
本稿は、2026年時点では世界を変えたとは言いにくいブロックチェーンが、2036年までにどのような形で社会へ定着するかを、4人の生活を描く未来シナリオとして整理しています。中心となるのは、ステーブルコインによる通貨代替、あらゆる資産の24時間取引、ブロックチェーン基盤の寡占化、AI AgentによるMicropayment Economyです。
描かれる未来では、ブロックチェーンそのものが注目されるのではなく、通貨、証券取引、Internet課金、AI Agent間決済の裏側へ組み込まれています。技術が世界を一度に置き換えるのではなく、既存制度が機能しない場所や、新しい利用主体が生まれた領域から徐々に浸透するという見立てです。
重要ポイント
第1の変化は、通貨価値が不安定な国でのドルステーブルコイン普及です。法定通貨は税金や公共料金の支払いに残る一方、給与、貯蓄、商取引はUSDCやUSDTへ移行し、最終的には政府自身が税金、国債、公務員給与にステーブルコインを使い始める未来が描かれています。
2026年5月時点のステーブルコイン市場は約$320B、年間取引量は$28Tですが、実際の決済用途は6%未満とされています。本稿は、Credit Cardや銀行が十分機能する米国よりも、インフレ、資本規制、銀行不信を抱える国で先に実需が形成されると見ています。
第2の変化は、株式、債券、不動産、Infrastructure Fundなど、あらゆる価値がToken化され、国籍や取引時間に縛られず売買される市場です。ただし、Accessの民主化と同時に、過剰なレバレッジ、頻繁な清算、常時取引による投機依存も日常化すると予測しています。
読みどころ
第3のシナリオは、ブロックチェーン数の増加を成長とみなした2020年代への反省です。AirdropやIncentiveを目的に利用者と資本を集めたL2は、報酬が尽きると利用が急減し、高額なInfrastructure Costを維持できずに消滅していきます。
2036年には、独立したChainは10未満まで集約され、少数の基盤が大半のLiquidityとSecurityを担う未来が描かれています。利用者が求めるのは数百のNetworkではなく、Liquidityが分断されず、十分なSecurityと処理性能を持つ少数の共通基盤だという主張です。
第4の変化は、AI AgentがWebの主要利用者になることで、広告中心のInternet BusinessがMicropaymentへ移行することです。人間が記事を読みBanner Adを見るのではなく、AgentがContentやDataを取得するたびに、x402を通じて少額を直接支払います。Media企業はPage Viewではなく、支払いを行ったAgent数を収益指標として見るようになります。
示唆
本稿の最大の示唆は、ブロックチェーンの普及が「人間がCryptoを使う」形ではなく、既存の経済活動を支える見えないInfrastructureとして進む可能性があることです。ステーブルコインは弱い法定通貨を補完し、TokenizationはGlobal MarketへのAccessを広げ、x402はAI Agentが利用する有料Internetを成立させます。
一方、その未来は必ずしも理想的ではありません。ステーブルコインの普及は国家の金融主権を弱め、資産の24時間取引は投機を生活へ浸透させます。Chainの集約は効率を高めますが、少数基盤への依存を強めます。Agent決済も、KYA、責任主体、価格設定、Data Rightsなどの制度設計が不可欠です。
また、本稿は2036年を描いた思考実験であり、具体的な普及時期や規模を予測したものではありません。重要なのは個々の数字よりも、ブロックチェーンが最も定着しやすい条件を示している点です。それは、既存通貨が機能しない場所、市場Accessが制限されている領域、Networkが過剰に分断された環境、そして人間ではなく機械が経済主体になる場面です。
最終的に本稿は、ブロックチェーンが世界を変えるとしても、それは独立した「クリプト産業」の拡大ではなく、金融とInternetの前提へ静かに組み込まれる形になると示しています。
▍AI信用バブル崩壊が呼ぶBitcoin再上昇仮説
続きは有料会員限定です
- 月額 9,990円〜で国内最大級のWeb3リサーチが読み放題
- DeFi / NFT / DAOなど2,000本以上のレポートを網羅
- 投資判断や事業検討に使える実務視点の分析
- 基礎から最新動向までプロフェッショナルな情報にアクセス
すでにご登録済みの方は
無料会員登録は
【PR】 SBI VCトレードの口座をお持ちのお客さまは
口座をお持ちでない方はこちら >
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。