誰でも市場を作れる時代の次のボトルネック|「市場を作る」から「市場を残す」競争へ:リサーチチームが選ぶ今週の注目トピック 2026年10月5日号

2026年10月05日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • 今週のインサイト
  • 今週1週間分のニュースを紹介
    • ▍次の相場を占う6つの仮説と「3〜4億ドルの壁」
    • ▍米国株を世界へ輸出するBackpackのトークン化戦略
    • ▍Ethereumが「ブロックチェーン」から暗号学的計算基盤へ変わる2030年像
    • ▍議会停滞でも進むETF回帰とトークン化市場の拡大
    • ▍CEX流動性で広がるBTCと主要アルトの格差
    • ▍アルト相場で進むミームから収益プロトコルへの資金移動
    • ▍AIの「読む力」を支えるGrassのリアルタイム検索インフラ構想
    • ▍RWAトークン化の成否を決める「発行後の資金回収」
    • ▍韓国2030年市場で狙う決済・RWAの「発行後」インフラ
    • ▍市場を「上場する」から「誰でも作る」へ変えるオンチェーン金融

前提

本レポートでは、最新のクリプトやWeb3市場、オピニオンに関する記事やスレッドをまとめています。各記事の要点を把握し、トレンドやインサイトを効率的にキャッチアップできる内容となっていますので、ぜひご活用ください。

今週のインサイト

今週のトピックを横断すると、オンチェーン金融では「市場を作れること」自体の希少性が下がり、その後に市場を成立させ続ける能力が重要になっていることが見えてきます。永久先物やトークン化によって、株式、未上場企業、商品、さらにはこれまで金融商品にならなかったリスクまで短期間で市場化できるようになりました。しかし、市場を作るだけでは資金は定着しません。Backpackでは現物償還と統合マージン、RWAでは法的な回収権と継続的な償還、CEXでは大口注文を吸収できる市場深度が実際の利用を左右します。アルト市場でも全面高ではなく、Privacyの実利用やProtocol Revenueなど、継続する理由を持つ領域へ資金が偏っています。ブロックチェーンによって「上場する」「発行する」ハードルが下がったからこそ、次に希少になるのは、流動性、価格発見、償還、収益を伴って市場を維持する力です。よって今週は、金融のボトルネックが「市場を作れるか」から「市場を残せるか」へ移り始めた1週間だったといえます。

今週1週間分のニュースを紹介

▍次の相場を占う6つの仮説と「3〜4億ドルの壁」

要約

本稿は、現在のクリプト市場が従来の4年サイクルの延長なのか、それとも一時的な反発局面なのかという不確実性を前提に、著者が今後の相場で起こると考える6つのテーマを整理した投資エッセイです。
6つとは、BTC・プライバシーコインの再評価、ソーシャルトレーディングと投機市場の拡大、米国での永久先物普及、一部DAT(デジタル資産トレジャリー企業)の復活、実需を持つAI関連トークンの登場、そしてオンチェーントークンに長く存在してきた流通時価総額$300〜400M付近の「天井」の突破です。
共通しているのは、単なる「アルト全面高」ではなく、マクロ、投機需要、収益、商品設計、実需といった個別の理由を持つ領域に資金が集中するという見方です。

重要ポイント

第1の予想は、BTCやZEC、XMRなどの価値保存・プライバシー資産です。著者は、政府債務、インフレ、将来的な増税・資産把握への懸念が長期的な追い風になると見ています。特にプライバシーコインについては、規制が厳しくなるほどアクセスは難しくなる一方、プライバシーそのものへの需要は高まるという逆説的な構図を想定しています。2028年米大統領選以降の政策転換についても触れていますが、これは著者自身の政治・規制シナリオであり、確定的な見通しではありません。
第2は、ソーシャルトレーディングと「カジノ化」です。ランキングや他人の利益が可視化されることでFOMOが生まれ、Pump.funのような発行基盤や取引アプリが引き続きユーザーを集めると予想します。一方、著者はミームコインとトークン化株式を直接ペアにする最近の設計には懐疑的で、SOLのような主要クリプト資産とのペアの方が価格上昇時の反射的な資金循環を作りやすいと考えています。
第3は、永久先物の一般化です。現在はクリプトネイティブ利用者が中心ですが、Robinhoodや既存証券アプリなどから永久先物へアクセスできるようになれば、市場自体が大きくなるという予想です。

読みどころ

後半で具体性が高いのがDATとAIです。
DATについて著者は全面的な復活ではなく、「保有資産価値に対して大幅な割安」「強いチーム」「基礎事業の改善余地」を満たす少数企業だけが再評価されると考えています。具体例としてEthena関連のStablecoinXを挙げ、USDe供給量の拡大、株式永久先物を含むベーシストレードの成長、ENAのロック解除条件の改善などを強気材料としています。最終的な理想形は、保有資産価値を上回る株価で増資し、その資金でさらに基礎資産を購入できる状態です。
AI関連では、著者自身も「まだ勝者が分からない」と認めています。探している条件は、クリプト外からの実需要、利用に不可欠なトークン設計、循環取引ではない持続的収益、そして期待を織り込み切っていない低い評価額です。自身が未公開のRitualへ投資していることも開示しており、AIエージェントがオンチェーンで自律的に動くインフラに期待しています。
最後の予想が、流通時価総額$300〜400M付近の心理的な天井の突破です。近年はこの水準に達すると利益確定が集中し、それ自体が天井を作ってきたと著者は見ています。もし1銘柄でも明確に突破すれば、「$300Mを超えたら売る」という市場参加者の条件反射が崩れ、より高い時価総額を前提にした投機へ移行する可能性があるという仮説です。

示唆

本稿の最大の示唆は、次の上昇局面を「BTC上昇→アルト全面高」という過去のテンプレートだけで見るのではなく、複数の異なる需要源が並行して伸びる相場として捉えている点です。
価値保存ならBTC・プライバシー資産、投機ならソーシャルトレーディングや発行基盤、金融商品なら永久先物、企業構造ならDAT、技術テーマならAI関連トークンというように、それぞれ別の資金流入理由があります。市場全体の方向性以上に、「なぜその資産へ資金が入るのか」が重要になるという見方です。
一方で、本稿は非常にポジション依存の強い市場予想です。著者はBTC、ZEC、LIT、HYPE、StablecoinX関連、未公開Ritual、PUMPなどを保有し、PUMPには未解除の私募投資もあり、紹介報酬付きリンクも掲載しています。また、2028年以降の政治・税制、永久先物の米国普及、AIトークンの大成功、$300〜400Mの時価総額上限突破はいずれも予測です。
そのため、本稿は「6つの予言」として受け取るより、次の相場で何を観測すべきかを整理した監視リストとして読む方が有用です。特に、プライバシー需要、永久先物の一般利用、DATの純資産価値に対する評価、クリプト外から収益を得るAIプロジェクト、そして中小型トークンの時価総額上限が実際に突破されるかが、著者の仮説を検証する重要な指標になります。

▍米国株を世界へ輸出するBackpackのトークン化戦略

要約

本稿は、ステーブルコインが米ドルを世界中へ配布したのと同じように、次はトークン化株式が「米国資本市場そのもの」をインターネット経由で輸出する段階に入るという投資論です。その中心企業としてFrictionless CapitalはBackpackを挙げています。
本稿によれば、Backpackは実株式と1対1で現物償還できるトークン化株式、現物と先物をまとめた統合マージン、各国のライセンス、取引所・ウォレット・発行機能を一体化した垂直統合型の仕組みを構築しています。特にSpaceX上場時には、BackpackのSPCXが市場休場中も取引され、初月に$1.08Bの取引量を記録したとしています。
著者は、トークン化株式市場の勝者は単なる取引所ではなく、TetherやCircleがステーブルコインの発行・償還を押さえたように、「実株式とトークンの発行・償還ゲート」を支配する事業者になると考えています。

重要ポイント

本稿がBackpackの最大の強みとして挙げるのが、現金ではなく実株式で償還できる点です。他社の多くは株価への経済的エクスポージャーを提供し、償還時には現金を受け取る構造ですが、Backpackではトークンを返却して通常の株式を受け取り、他の証券会社へ移せると説明されています。
この現物償還によって、トークン価格と既存株式市場の価格が乖離した際にマーケットメーカーが裁定できるため、価格差が縮まりやすくなります。本稿では、Backpackはトークン化株式残高では市場全体の約4%しか持たない一方、取引量では64%を占めるとし、xStocksなどより資本回転率が高いと主張しています。
また、株式、クリプト、ステーブルコイン、先物を別々の口座で管理するのではなく、1つの担保プールとして扱える統合マージンも特徴です。たとえばNvidia株をBitcoin取引の担保に使うなど、異なる資産クラスを横断して資本効率を高める設計です。

読みどころ

本稿で興味深いのは、Backpackを「トークン化株式の発行会社」ではなく、発行、償還、現物取引、先物、担保、ウォレット、グローバル流通までをまとめた資本市場インフラとして捉えている点です。
特に著者は、24時間取引において先物市場を先に持っていたことを重要視しています。米国株式市場が閉まっている時間でも先物が価格を形成すれば、その価格を使ってトークン化株式の担保価値を算定できます。これにより、週末を含めて株式を担保として利用する仕組みが成立しやすくなります。
さらにBackpackは、米国から海外へ順番に展開するのではなく、欧州、ドバイ、日本、オーストラリアなどでライセンスを確保し、150か国超へ先に展開する戦略を取っていると本稿は説明しています。トークン化株式取引の55%が米国市場時間外に行われるとしており、「既存市場が閉まっている時間」そのものを新しい市場として取り込もうとしている点が特徴です。

示唆

本稿の最大の示唆は、トークン化株式市場の競争軸が「どれだけ株をトークン化したか」ではなく、発行・償還、価格発見、担保利用、流動性、グローバル流通をどこまで一体化できるかへ移るという点です。
ステーブルコインでは、決済アプリよりもUSDTやUSDCの発行・償還を握ったTetherやCircleが大きな価値を獲得しました。本稿は、株式でも同じ構造が生まれ、実株式とオンチェーントークンを行き来させる「ゲート」が重要になると考えています。現物償還が可能であれば裁定取引によって価格が安定し、マーケットメーカーが流動性を供給しやすくなり、その流動性がさらに利用者を呼ぶ循環を作れるという論理です。
また、Backpackの構想は株式に限定されません。本稿は、同じ発行・償還と統合マージンの基盤を、債券、商品、FX、構造化商品、不動産などへ拡張できると見ています。つまり「株式トークン化」は最初の商品であり、本当の狙いは複数資産を1つのオンチェーン資本市場へ統合することです。
一方、本稿はFrictionless Capitalによる極めて強気な投資論であり、Backpackを「株式版Tether/Circle」と位置付ける結論から逆算した構成になっています。SpaceXやBackpackの取引量、現物償還の法的効果、各国ライセンス、SEC・CFTCによる制度変更の解釈なども、記事内の主張として扱う必要があります。
その意味で本稿は、Backpackが最終的な勝者になることを示したものというより、トークン化株式市場では「発行残高」よりも、現物償還と統合マージンを備えた市場構造が価値を持つという競争仮説として読むのが適切です。

▍Ethereumが「ブロックチェーン」から暗号学的計算基盤へ変わる2030年像

要約

本稿は、Ethereumが今後数年で、従来の意味での「ブロックチェーン」とは質的に異なるシステムへ進化していくという長期構想を描いています。2009年のBitcoinでは、各ノードがブロックを受け取り、自分でデータを保存し、取引を再実行して正しさを確認することが基本でした。しかし2030年のEthereumでは、ゼロ知識証明、データ可用性サンプリング、並列処理、複数主体によるブロック構築、高度化したPoSなどを組み合わせ、すべてを各ノードが直接処理する必要がなくなるとしています。
象徴的なのが検証方法の変化です。従来はブロック全体を再取得・再計算していたのに対し、将来はSNARKで計算結果を検証し、PeerDASでデータ可用性をサンプリングします。また、取引の署名や証明もブロックに入ってから個別処理するのではなく、メンプール段階で並列処理・集約する方向へ進みます。
この結果、Ethereumは「全員が同じ計算を繰り返す台帳」から、ブロックチェーンを最終的な順序付けと状態変更の基盤として使いながら、その周囲を暗号学的検証や分散型オフチェーン処理で支える「暗号学的ワールドコンピューター」へ変わるというのが本稿の主張です。

重要ポイント

2010年型と2030年型の最も大きな違いは、検証、コンセンサス、ブロック構築、プライバシーのすべてが変化する点です。
検証では、各ノードによる完全な再実行から、SNARKによる計算検証とPeerDASによるデータ可用性確認へ移ります。コンセンサスはPoWからPoSへ移っただけでなく、数スロット以内でのファイナリティなど、より最適化された設計を目指します。ブロック構築も、1人のマイナーが全体を決める方式から、FOCILなど複数参加者が関与する構造へ変わるとしています。
プライバシーも大きく拡張されます。Bitcoin初期にはUTXOの追跡が困難であることを事実上のプライバシーとしていましたが、将来のEthereumではZK-SNARKを使って送金内容やアカウントポリシーを秘匿します。読み取り側でも、自分でフルノードを動かす以外に、TEE、ORAM、PIRなどを使って情報取得そのものを秘匿する選択肢を想定しています。通信経路についても、オニオンルーティングやミックスネットなどを取り込む方向です。
つまり、単に「Ethereumが速くなる」という話ではなく、「正しさをどう証明するか」「誰が計算するか」「何をオンチェーンへ残すか」という根本設計そのものが変わろうとしています。

読みどころ

本稿で特に重要なのは、将来のEthereumでは「どれだけ計算するか」だけでなく、「計算をどう構造化するか」がコストを大きく左右するという指摘です。
現在の感覚では、同じ量のデータや計算なら似たようなコストになると考えがちです。しかし将来は、すべてを1つの巨大で直列的な取引に詰め込むより、依存関係を整理して並列化や事前集約を可能にした方が大幅に安くなるとしています。
長期的には、ブロックチェーン上へ記録するものを「順序が重要な状態変更」に絞り、その取引が正しい理由となる証明や大量の補助計算は、ブロックへ入る前に集約される形へ近づく可能性があります。これはEthereum上のアプリケーション設計そのものを変える話です。
さらに興味深いのが、分散化を性能上の「コスト」だけでなく「強み」と捉え直している点です。多数の参加者がデータ保存や計算を並列に担えば、中央集権型サーバーとは異なる形でスケールできます。過去には、分散した計算結果が正しいかを確認する手段が弱かったため実現困難でしたが、SNARKなどの暗号技術によって「他者の仕事を安価に検証する」ことが可能になったという説明です。

示唆

本稿の最大の示唆は、Ethereumの長期的な競争力をTPSや手数料だけで評価すると、その進化の本質を見落とす可能性があるという点です。
目指しているのは、中央集権型サーバーと同じ方法で高速化することではありません。大量のデータ保存、計算、証明生成を分散させながら、最終的な正しさだけを暗号学的に検証することで、「高い安全性を維持しながら、安価で大規模かつプライバシーを持つ計算」を実現しようとしています。
そのため、Ethereumの役割も「すべてを実行する場所」から変わります。最終的な状態、順序、可用性、安全性を保証する中核レイヤーと、その周囲で大量の処理を担う分散型のオフチェーン構成要素が一体となって1つの計算基盤を形成するという発想です。
一方で、これは2030年を見据えた将来構想です。SNARKを十分に高速・安全にすること、大規模な状態アクセスを並列化すること、量子耐性を組み込むこと、形式検証を自動化することなど、実装上の難題は残っています。さらにiOのような難読化技術は、より遠い将来の可能性として扱われています。
本稿では、Hegotaが従来型Ethereumの延長として理解できる最後の「普通のフォーク」になる可能性を示し、その後は再帰的STARK、自動形式検証、高度化したコンセンサス、量子耐性といった技術が中心になるとしています。したがって今後のEthereumは、単なるブロックチェーン性能競争というより、「計算するネットワーク」から「計算結果を暗号学的に検証する世界規模の計算基盤」への転換として見るのが、本稿の意図に最も近い整理です。

▍議会停滞でも進むETF回帰とトークン化市場の拡大

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