表面の数字では見えないクリプト市場の実像|取引量の大きさより資金の「使われ方」を見る:リサーチチームが選ぶ今週の注目トピック 2026年8月17日号

2026年08月17日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • 今週のインサイト
  • 今週1週間分のニュースを紹介
    • ▍DeFi規制を実効支配で測るFATFの新基準
    • ▍韓国の制度空白が700兆ウォンの海外流出を生む構造
    • ▍一時的な優位性を最大活用する集中配分の考え方
    • ▍Hyperliquidを押し上げる3つの次期収益触媒
    • ▍ドルとトークン化が再構築する世界金融の共通基盤
    • ▍USDC高回転を支えるDeFi内部フローの実像
    • ▍円高転換とFIMA資金供給が生むBitcoin強気仮説
    • ▍月間$759Mに拡大するクリプト決済カード市場

前提

本レポートでは、最新のクリプトやWeb3市場、オピニオンに関する記事やスレッドをまとめています。各記事の要点を把握し、トレンドやインサイトを効率的にキャッチアップできる内容となっていますので、ぜひご活用ください。

今週のインサイト

今週のトピックに共通するのは、クリプト市場を「名称」や「表面上の数字」ではなく、その裏側で実際に何が起きているかまで分解して見る必要性です。FATFはDeFiかどうかではなく、誰が実質的な支配力を持つかで規制対象を判断しようとしています。同様に、ステーブルコインの送金額が過去最高でも、USDCの大半はフラッシュローンや流動性再配置で回転しており、その数字をそのまま決済需要とはみなせません。韓国でも、国内市場の規模だけを見れば見落とす永久先物や予測市場への需要が、海外への資金流出として可視化されています。Hyperliquidでも焦点は取引量の拡大から、USDC残高や株式永久先物をどこまで収益化できるかへ移っています。一方、クリプト決済カードは、オンチェーンのドルを既存のVisa網につなぐことで実際の消費へ到達し始めました。今週は、「分散化」「取引量」「市場規模」といった大きな看板よりも、支配権、資金の用途、収益化、利用者行動まで掘り下げて初めて、市場の本当の変化が見えることを示した1週間だったといえます。

今週1週間分のニュースを紹介

▍DeFi規制を実効支配で測るFATFの新基準

要約

本稿は、FATFが初めて公表したDeFiに特化したレポートをもとに、既存のAML/CFT規制をDeFiへどのように適用するかを整理しています。FATFはDeFiの自動決済、プログラム可能な金融サービス、24時間稼働といった利点を認めつつ、「分散型」と名乗っているだけでは規制対象から外れないとしています。
中心となるのが「control or sufficient influence(COSI)」という考え方です。誰かがプロトコルの金融機能に対して実質的な支配または十分な影響力を持つ場合、その主体をVASPsとして既存のAML/CFT義務の対象にするという枠組みです。逆に、誰も実質的な支配力を持たない真に分散化されたプロトコルはFATF基準の直接対象外となります。
FATFは一律にDeFiを規制するのではなく、ガバナンス、管理権限、手数料やTreasuryの流れ、フロントエンド管理などを個別に評価する方向を示しています。その実務を支える手段として、オンチェーン分析が重要な役割を持つというのが本稿の大きな主張です。

重要ポイント

COSIでは、DeFiを3つに分類します。第1は、特定の人物や法人が明確に支配または十分な影響力を持つ中央集権型です。第2は、支配者は存在すると考えられるものの、まだ特定されていないものです。この2つはFATF基準の対象となり、ライセンス、顧客確認、取引監視、制裁対応、Travel Ruleなどの義務が適用され得ます。
第3は、誰も実質的な支配力を持たない真に分散化されたDeFiです。これはFATF基準の直接対象外ですが、リスクがないという意味ではなく、監督当局や接点となる規制事業者、ステーブルコイン発行者などを通じた代替的なリスク管理が求められます。
支配力を判断するオンチェーン指標としては、ガバナンストークンの集中、アップグレードや停止を可能にする管理鍵、手数料やTreasury資金の受取・移動権限などが挙げられています。ただし、単にトークン保有が集中しているだけで中央集権型と判断すべきではなく、金融サービスの提供に対して実質的な影響を持つかが重要です。

読みどころ

本稿で重要なのは、セキュリティ対策と「支配」の判断を分けている点です。Kill Switchや一時停止機能、フロントエンドでの制裁チェックなどを導入していること自体を、中央集権性の証拠として機械的に扱うべきではないとされています。
これはDeFiにとって重要な整理です。これまで、緊急停止権限や管理鍵を持つと「中央集権的と見なされるのではないか」という懸念がありましたが、FATFは安全対策そのものを否定せず、むしろ導入を奨励しています。見るべきなのは、その権限が金融サービス全体を実質的に支配できるものかどうかです。
また、監督当局側の対応はまだ大きく遅れています。FATFの別レポートによると、93%の法域が自国内で規制対象となるDeFiプロトコルを特定できておらず、ライセンス要件を課したのは4法域、実際に執行したのは1法域にとどまるとされています。制度があっても、誰を規制対象とするかを特定できなければ実効性がないという問題が浮き彫りになっています。

示唆

DeFi事業者にとっての最大の示唆は、「分散化」というラベルではなく、実際の権限構造が規制判断の中心になることです。ガバナンス投票が存在していても、少数のウォレットが結果を決められる、開発者だけがアップグレードできる、特定主体が手数料やTreasuryを自由に動かせる、といった構造があれば、VASPsとして扱われる可能性が高まります。
一方、真に分散化されたプロトコルであっても、機関投資家や規制事業者との接続を考えるなら、自主的なリスク管理が競争力になり得ます。ウォレットスクリーニング、継続監視、監査、制裁対応などを備えるプロトコルの方が、機関資本から選ばれやすくなるという見方です。Complianceが単なる規制コストではなく、市場アクセスの条件へ変わる可能性があります。
ステーブルコイン発行者の役割も大きくなります。本稿では、違法取引量の84%をステーブルコインが占めるとし、凍結・焼却機能を最低限の対策として位置づけています。DeFiが真に分散化されていても、担保や決済に使われるステーブルコイン側で制御できるため、発行者が間接的な規制接点になる構造です。
ただし、本稿はChainalysis自身がBlockchain分析ツールの必要性を強く訴える内容でもあり、同社の商業的立場には留意が必要です。FATFの枠組みそのものと、Chainalysisが提案する具体的な実装方法は分けて読むべきです。
最終的に今回のレポートが示したのは、DeFi規制が「DeFiだから対象外」「管理機能があるから中央集権」という二択ではなく、実際に誰がどの程度金融機能を支配しているかを個別に評価する段階へ進んだことです。今後の焦点は、各国がCOSIをどこまで比例的かつ一貫して実装できるか、そして段階的に分散化するプロトコルをどの時点で規制対象外へ移すかにあります。

▍韓国の制度空白が700兆ウォンの海外流出を生む構造

要約

本稿は、韓国のデジタル資産市場が依然として個人投資家による現物取引に偏る一方、世界では永久先物、オプション、ステーブルコイン決済、RWAのトークン化、予測市場などへ市場が拡張しており、その制度差が韓国投資家の海外流出を生んでいると分析しています。
Tiger ResearchとChainalysisによると、2021年から2026年までに韓国の取引所から海外へ移動した暗号資産は推計$530B、約700兆ウォンに達しました。資金は海外取引所で止まらず、Hyperliquidなどの分散型取引所、Polymarket、クリプトカードへ移動し、レバレッジ取引、予測市場、日常決済にまで使われています。
本稿の主張は、韓国投資家の需要が失われたのではなく、国内で満たせない需要が海外市場の取引量、手数料収益、顧客データ、商品開発力へ転換されているというものです。そのため、資本流出を抑えるには規制強化だけでなく、国内事業者が新しい商品を提供できる制度基盤と、すでに海外へ出た資金を戻しやすくする仕組みの両方が必要だとしています。

重要ポイント

海外流出額は2025年に約$120B、2026年には約$52Bと予測されています。絶対額だけを見ると減少していますが、韓国の主要3取引所であるUpbit、Bithumb、Coinoneの現物取引量に対する純流出比率は上昇しており、国内市場の縮小以上のペースで資本が海外へ移っていると分析されています。
海外取引所が得る経済的利益も大きく、韓国投資家が外国取引所へ支払った手数料は2025年だけで推計$3.5B、2026年前半でさらに$0.9Bに達しました。仮にこの取引の10%を韓国事業者へ戻すだけでも約$357M、25%なら約$893M、50%なら約$1.79Bの年間収益になると試算しています。
さらに重要なのは、海外事業者が手数料だけでなく、韓国ユーザーとの関係、取引データ、新商品の運営経験まで蓄積する点です。同じ需要が存在していても、それを新サービスへ展開できる規制環境の有無によって、国内外の事業者間で競争力の差が拡大していきます。

読みどころ

オンチェーン分析では、韓国関連と推定された約120,000ウォレットを追跡しています。2024年1月から2026年7月までに、Hyperliquid、Lighter、Variationalの3つの分散型取引所へ累計約$1.64Bが入金されました。2026年7月だけでも約1,200の韓国関連ウォレットがHyperliquidで$4.97Bの想定元本ベース取引量を生み出しています。
特に特徴的なのは、取引対象がクリプトだけではないことです。SK Hynix、Samsung Electronics、原油などを参照する永久先物も活発に取引されており、通常の取引時間外でも売買でき、高いレバレッジを使える点が需要を生んでいます。国内市場で提供されていない取引機能が、オンチェーン上で代替されている形です。
Polymarketでも、2024年1月から2026年7月までに約3,700の韓国関連ウォレットが累計約$438Mを取引しました。韓国の弾劾や大統領選挙に関する市場が一時的に大きな割合を占めましたが、その後もWorld Cup、KBO、LCK、天候などへ取引対象が広がっており、特定の政治イベントだけの需要ではないことが示されています。

示唆

本稿で最も重要なのは、海外へ出た資金が「投資して戻る」のではなく、そのまま海外経済圏で循環し始めている点です。ある韓国関連ウォレットでは、国内取引所から個人ウォレットへ資金を移し、HyperliquidとPolymarketで取引した後、その一部をether.fiのクリプトカードへ移して日常決済に利用していました。資本流出が投資から消費へまで広がっています。
そのため、韓国が必要としているのは個別商品をその都度許可することではなく、投資家保護やリスク管理の基準を事前に定め、その条件を満たす事業者が永久先物、トークン化資産、機関向けサービスなどへ事業を拡張できる制度設計だと本稿は主張しています。
同時に、海外資金の還流を妨げる摩擦も問題になります。Travel RuleやAML強化そのものは必要ですが、外国取引所や個人ウォレットから戻す際の確認基準が不明確だと、合法的な資金まで国内へ戻りにくくなります。今後の課税でも、複数の海外取引所やオンチェーンサービスを経由した資産について取得原価や取引履歴をどのように証明するかが明確でなければ、資金還流を抑制する可能性があります。
また、Thailandのように、認可された国内事業者での暗号資産取引について個人のキャピタルゲインを一定期間非課税にする政策を例に、税制を単なる徴税手段ではなく国内市場へ需要を誘導する政策手段として使う案も提示しています。
ただし、本分析の120,000ウォレットは韓国投資家全体を代表するものではなく、個人ウォレットやオンチェーンサービスを積極的に利用する層に偏っています。また、韓国との関連付けもオンチェーンデータやOSINTに基づく推定です。したがって、700兆ウォンという規模や利用行動は一定の推定誤差を含むものとして読む必要があります。
最終的に本稿は、韓国が失っているのは単なる取引手数料ではなく、新商品の市場、事業ノウハウ、顧客データ、企業成長機会そのものだと位置づけています。国内にすでに存在する需要を吸収できる制度を整えられるかが、韓国のデジタル資産市場が世界市場との差を縮められるかを左右するというのが中心的なメッセージです。

▍一時的な優位性を最大活用する集中配分の考え方

要約

本稿は、投資や事業で大きな成果を生むには、自分が明確な「優位性」を持つ局面を見抜き、その機会が続いている間に資本や時間を集中させて最大限回収することが重要だと論じています。著者はこれを「max extracting」と表現しています。
冒頭では、17歳でTikTokのヘアコンテンツを運営し、ピーク時には月$4,500超のスポンサー収益を得ていた友人を例に挙げています。当時は同分野のクリエイターが少なく、新興ヘアブランドが広告費を積極的に投じていたため、約15,000フォロワーでも1本$120という高額案件を獲得できました。しかし競争相手が増え、ブランド側も成長すると交渉力は低下し、契約更新時には月$3,000から$1,000へ提示額が下がりました。
著者が問題視するのは収益低下そのものではなく、友人が過去の成功を自分自身の恒常的な価値だと認識し、市場環境から生まれた一時的な優位性だったことを理解できていない点です。優位性を持つこと以上に、「なぜ勝てているのか」「それがいつまで続くのか」を把握することが重要だとしています。

重要ポイント

著者は、優位性には「プロセス上の優位性」と「構造的な優位性」があると整理しています。前者は、高い期待値を持つ取引だけを選ぶ、他者が知らない効率的なエアドロップ獲得方法を見つけるなど、自分の知識や行動によって繰り返せるものです。
後者は、自分自身の能力よりも市場環境や参加者構成によって生まれます。ポーカーで世界10位の実力があっても上位5人と同卓すれば負ける可能性が高い一方、基本的なGTO(ゲーム理論最適戦略)しか知らなくても、弱い相手ばかりの卓を選べば勝ちやすくなります。TikTokの事例も、クリエイター不足という「卓選び」に近い構造的な優位性だったと説明しています。
そして、明確な非対称機会が存在する場合には、2番目、3番目のアイデアへ均等に資金を配分するのではなく、最も期待値の高い機会へ大きく配分すべきだと主張します。DruckenmillerやSorosの例を挙げ、「勝てる局面では通常以上に大きく張る」という集中配分を支持しています。

読みどころ

本稿の背景にあるのは、利益が均等に積み上がるのではなく、少数の機会から大半が生まれるという「べき乗則」の発想です。著者によれば、ポーカーでは上位20のスターティングハンドがプラスの期待値の88.6%、上位5ハンドだけで51.1%を生みます。
トレーディングについても同様で、生涯の損益曲線を決定するのは、多数の平均的な取引ではなく、明確な優位性を持てた数少ない局面だとしています。ポケットエースを引いたときに、変動性を恐れて降りるのではなく大きく勝負するのと同じ考え方です。
例として、2024〜2025年のSolanaのミームコイン市場も挙げられています。当時利益を上げていた参加者は、その環境が何年続くか分からなくても「今この市場には自分が稼げる条件がある」と認識していました。重要なのは永久に続く戦略を探すことではなく、現在の市場環境に存在する優位性を認識し、その有効期間中に活用することです。

示唆

本稿の最大の示唆は、「優位性は時間とともに消える」という点です。たとえば、1ポイントを$5で獲得でき、将来的な価値が$25相当と考えられるエアドロップ機会があっても、その裁定機会が知られれば参加者が増え、やがて利益は縮小します。自由市場では魅力的な機会ほど模倣され、優位性は徐々に削られていきます。
そのため必要なのは、優位性を発見するだけではなく、その源泉を特定し、有効期間を見積もり、存在する間に大きく配分し、消えた瞬間に認識を更新することです。TikTokの友人が月$1,000を「侮辱的」と拒否したのは、過去の月$3,000を基準に現在の市場価値を判断してしまった典型例とされています。
ただし、著者の「最大配分」という考え方は非常に攻撃的であり、優位性の判定を誤った場合には集中投資によって損失も拡大します。したがって実践上は、単に「自信があるから大きく張る」のではなく、なぜ優位性が存在するのか、何が起きれば消滅したと判断するのか、最大損失をどこまで許容できるのかまで定義する必要があります。
最終的に本稿は、長期的な成果を左右するのは常に高い稼働率を維持することではなく、「今は自分に有利な卓なのか」を見極める能力だと示しています。優位性がない時期は無理に勝負せず、明確な非対称機会が現れたときだけ大胆に資源を集中するという考え方です。

▍Hyperliquidを押し上げる3つの次期収益触媒

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