【論考・前編】クリプトが主役ではない時代の需要設計|アテンションを参加へ変え、価値を誰に戻すか
2026年08月06日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提|クリプトが主役ではない時代に、何を作るのか
- クリプトは「主役」から「参加を支える基盤」へ
- Cobieの市場論から抽出する3つの視点
- アテンションは「取り戻す」のではなく、外部需要へ接続する
- 参加は、利用回数より「当事者性」で設計する
- 価値分配は、配布量より「貢献と受益の接続」で考える
- 前編総括|誰の関心を、どの参加へ変え、何を返すのか
- 参考文献
前提|クリプトが主役ではない時代に、何を作るのか
執筆時点のテクノロジー市場では、資金や人材、業界の関心がAIへ大きく傾いていますが、その一方でクリプトは、新しいチェーンやトークンを公開するだけで幅広い関心を集めることが難しくなりました。こうした状況を踏まえると、かつてDeFiやNFT、DAO、エアドロップなどが次々と新しい参加方法として注目された時期に比べると、クリプトであること自体が、ユーザーに資金と時間を投じさせる理由にはなりにくくなっていると言えます。
もっとも、現在の停滞をAIへの関心移動だけで説明するのも適切ではないと考えています。なぜなら、市場価格の下落に加えて、似たプロダクトの乱立や、報酬が止まると利用も止まる設計、一般参加者が成長の果実を受け取りにくい価値分配など、クリプト側にも見直すべき問題があるからです。だからこそ、今のフェーズで問うべきなのは、クリプトを再び話題の中心へ戻す方法ではなく、むしろクリプトが主役でなくても選ばれる事業をどう作るかではないでしょうか。
そうした問題提起を踏まえて本稿では、クリプト市場の熱狂と参加者の行動を長く観察してきたCobieの論考を低アテンション期の事業戦略へ応用し、「次の強気相場を待つのではなく、誰の関心を取り込み、どのような参加を生み、その成果を誰へ戻すべきか」について、前編・後編の二部構成で考えたいと思います。
クリプトは「主役」から「参加を支える基盤」へ
さて、先にも述べたように、現在のテクノロジー市場では、資金や人材、メディアの関心がAIへ大きく傾いています。しかも、AIへの関心は期待だけで支えられているわけではありません。ChatGPTやClaude Codeのように、文章作成やリサーチ、開発といった日々の作業を実際に変えるプロダクトが登場し、一般の利用者もその効果をすぐに体験できます。
それに対してクリプトは、技術そのものだけで広い関心を集めにくくなっているのが現状です。たとえば、新しいチェーンやトークン、ポイント施策を発表しても、以前の仕組みとの違いが伝わらなければ、ユーザーが資金や時間を投じる理由にはなりません。つまり、クリプト内部で新しい物語を作るだけでは、参加を生み出しにくい段階に入っています。
ただし、ここから「AIには使い道があり、クリプトにはない」と結論づけるのも適切ではありません。なぜなら、両者では利用者から見える役割が異なるからです。一例を挙げると、AIは文章作成やリサーチ、開発、画像生成など、利用者が効果を直接確認しやすいプロダクトを生み出しています。それに対してクリプトは、決済や市場形成、資産の所有、取引履歴の検証といった機能として、別のプロダクトやサービスへ組み込まれる場面が増えています。
そのため、現在起きているのは、クリプトがAIに置き換えられているという単純な変化というよりも、クリプト単体の話題性ではなく、参加や取引を支える仕組みとして価値を示す必要性が高まっていることだと捉えた方がよいでしょう。利用者がチェーン名やウォレットを強く意識しなくても、取引や支払い、所有の仕組みとして使われていれば、事業としての役割は成立します。
もっとも、裏側へ回れば自動的に需要が生まれるわけでもありません。クリプトを使う技術的な必然性があっても、誰が参加し、その参加によって何が良くなり、生まれた価値を誰が受け取るのかが曖昧なら、事業としては広がりません。
したがって、クリプトがAIから主役の座を奪い返せるかを考えても、事業上のインサイトはあまり得られないと筆者は考えています。つまり、見るべきなのは、他の産業で生まれる需要にクリプトを組み込んだとき「誰が参加できるようになり、誰が価値を作り、その成果が誰へ帰属するのかが変わるかどうか」です。その構造が変わらないのであれば、クリプトを採用する理由は限られますし、反対に、従来の事業では難しかった参加や所有、価値分配が可能になるのであれば、クリプトは表舞台に立たなくても、事業を成立させる仕組みとして残り得るでしょう。
Cobieの市場論から抽出する3つの視点
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