BaseはなぜRobinhood Chainに先を越されたのか|始まった「金融機関によるL2競争」
2026年07月30日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- 前提
- Robinhood Chainが露呈させたBaseの「戦略と実態のズレ」
- Robinhood Chainは「チェーンを作ってから需要を探した」のではない
- 本当の競争は「Base対Robinhood Chain」ではない
- Jesseの「失敗宣言」は撤退ではなく組織再編だった
- BaseはなぜRobinhoodをあえて名指ししたのか
- 考察&総括|Baseが先を越されたのは「方向」ではなく「順番」だった
前提
2026年7月1日、RobinhoodがEthereumのレイヤー2(以下、L2)である「Robinhood Chain」のパブリックメインネットを開始しました。そしてその中心に置かれたのが、以下の関連レポートでも言及したように、株式の値動きに連動する「Stock Tokens」です。これは、120カ国以上のユーザーを対象にRobinhood Walletから24時間取引できるだけでなく、将来的には貸付市場への預け入れや、ほかの取引における担保としての利用も想定されています。
さらにRobinhoodは、DeFiレンディングの「Robinhood Earn」や、無期限先物、AIに取引を任せる「Agentic Accounts」も同時に発表しています。要するに今回の発表は、単に新しいL2を公開したという話にとどまらず、証券取引、DeFi、デリバティブ、AI取引を一つの金融基盤へまとめる構想を、具体的なプロダクトとして示した出来事でした。
一方で、その約2週間後にBaseを率いるJesse Pollakが、ソーシャルやクリエイターコイン(Creator Coins)への賭けが間違っていたと認めました。それに伴い、Base Appの主導権はCoinbase側へ戻され、今後はCobieとして知られるJordan Fishがアプリを率いることになりました。Jesse自身はBaseチェーンの開発へ軸足を移し、Baseを「世界の金融を支えるブロックチェーン」にすることへ集中する方針を示しました。なお、それに伴い、重点領域も取引、決済、AIエージェントへと明確に切り替わっています。
この二つの出来事を時系列で追うと、Robinhood Chainに先を越されたBaseが、慌てて軌道修正したようにも見えます。ただ、この説明だけでは、今回の動きの本質を捉えきれません。というのも、BaseはRobinhood Chainの登場以前から、世界の金融を支える基盤への転換を掲げていたからです。
それでも、Baseの実態や市場から見える姿は、ソーシャルやクリエイターコインに強く寄ったままでした。つまり、目指している方向と、実際のリソース配分やブランドの間にズレが生じていたのです。そんななかRobinhood Chainは、その曖昧さを誰の目にも分かる形で浮かび上がらせ、先送りされていた組織と事業の整理を一気に前へ進めました。
したがって、Robinhood ChainはBaseの進路を変えた「原因」というより、Baseが本来進むはずだった道を競合が先に示した「答え合わせ」だったと筆者は考えています。そうした前提を踏まえて本稿では、BaseがなぜRobinhood Chainに先を越されたのかを整理するとともに、その背景から見えてくる「金融機関によるL2競争」の実態について、筆者の私見を交えながら考察します。
Robinhood Chainが露呈させたBaseの「戦略と実態のズレ」
さて、2026年のBaseの戦略では、「Global Markets」「Payments and Stablecoins」「Builders」を三本柱に掲げ、株式、コモディティ、予測市場、現物取引、無期限先物などをBase上へ取り込む方針をすでに示していました。また、Base Appについても、幅広い資産を24時間取引できる場所へ発展させる構想が描かれていました(参考:Base 2026 Mission, Vision, and Strategy - Base)。
しかし、実際に市場から見えていたBaseの姿は、その戦略とは異なっていました。その理由の一つは、Farcaster、Zora、Mini Apps、クリエイターコイン、ミームコインなどの話題が先行し、金融インフラとしての位置づけは相対的に弱く映っていたからです。つまり、Baseに金融戦略がなかったのではなく、掲げていた戦略と、実際のリソース配分や市場から見えるブランドがかみ合っていなかったということです。
そして、そこへ登場したのがRobinhood Chainです。RobinhoodはStock Tokensに加え、分散型取引所、貸付、担保利用、無期限先物、AIによる取引までを一つの構想として提示しました。その結果、Baseが「Global Markets」という言葉で描いていた未来を、Robinhoodの方が先に具体的な金融サービスとして見せる形になりました。
したがって、Robinhood Chainの登場がBaseにとって痛かったのは、単にトークン化株式で先行されたからではなく、自分たちが目指すと宣言していた金融プラットフォームの完成像を、競合に先に示されたことが、Baseの戦略と実態のズレを決定的に浮かび上がらせたと言えます。
Robinhood Chainは「チェーンを作ってから需要を探した」のではない
前提として、多くのL1やL2は、まず技術基盤を立ち上げ、その後に開発者や流動性、ユーザーを呼び込む順番で成長してきました。これに対して、Robinhood Chainは出発点が大きく異なります。
というのも、Robinhoodはチェーンを立ち上げる以前から、約2,800万人の顧客基盤に加え、株式やETFを扱うサービス、法定通貨の入出金、本人確認、カストディ、ウォレット、取引画面を持っています。つまり、Robinhood Chainは、完成した技術の上で新たな需要を探すためのチェーンというより、すでに存在する顧客や金融商品をオンチェーンへ移すための基盤として設計されたと見る方が自然です。
そして、その象徴がStock Tokensです。Robinhood Assets(Jersey)Limitedが発行するこの商品は、参照する株式の値動きに連動するトークン化された債務証券です。そのため、保有者が参照先企業の法的な株主権や受益権を直接得る仕組みではなく、提供地域にも制限があります。
一方で、Stock TokensはERC-20として保有できるため、単に証券アプリ内で売買するだけの商品にはとどまりません。オンチェーンで取引し、貸付市場へ預け入れ、ほかの取引の担保として利用できる余地があります。金融商品をアプリの内側に閉じ込めず、DeFiや外部サービスへ接続できる点に、Robinhood Chainの狙いがあります。
もちろん、Stock Tokensの法的な位置づけや資産保全の仕組み、株主権との違いなど、検証すべき論点は残っています。ただし、商品の法的な完成度と、事業戦略としての分かりやすさは分けて考える必要があります。
Robinhoodは今回、証券会社が独自L2を持つことで、既存の金融商品を24時間取引、貸付、担保利用、AIによる取引へどのように広げられるのかを、具体的なサービスとして示しました。Baseにとって厳しかったのは、Robinhoodの構想が新しかったこと以上に、その目的が誰にでも理解できるほど明快だったことでしょう。
本当の競争は「Base対Robinhood Chain」ではない
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