米WisdomTree社事例に見る「トークン化証券とKYC実装」の実例メモ ― オンチェーンKYC設計の一つの“具体例”として読む ―

2025年12月09日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 1. まずWTPIX(EPXC)とは何か(前提整理)
  • 2. WTPIXにおけるKYC実装の位置づけ(全体像)
  • 3. 実際に確認されたKYCフロー(オンチェーン挙動)
  • 4. これは特別な方式か、それとも“基本形”か
  • 5. 管理権限の扱いから見える運営スタンス
  • 6. ビジネス視点での読みどころ(総括)
本稿では、米WisdomTreeが提供するトークン化ファンド「WTPIX(EPXC)」を題材に、主に金融機関・Web3事業者がトークン化証券を設計・検討する際の実装例として、KYC(本人確認)と取引制御がオンチェーン上でどのように組み込まれているかを、実際のトランザクションに基づいて整理する。

1. まずWTPIX(EPXC)とは何か(前提整理)

図表1.WTPIX(EPXC)とは何か
WTPIX(オンチェーン上のトークン名:EPXC)は、米WisdomTreeが提供するオプション戦略付きの株式インカム型ファンドを、ブロックチェーン上でトークン化したデジタルファンドである。
中身としては、S&P500に対して定期的にプットオプション(下落時の保険)を売ってプレミアム収入を得る戦略を用い、相場が横ばい〜下落局面でも一定のインカム収益を狙う設計になっている。
従来であれば、
  • 証券口座を開設し
  • 投資信託またはETFとして購入する
必要があった商品を、WisdomTree Prime / WisdomTree Connect というウォレット型プラットフォームを通じて、オンチェーン上のトークンとして保有・移転できるようにしたものがWTPIX(EPXC)の位置づけである。
あくまで「中身は伝統的な投資戦略」であり、「流通と管理の形だけをブロックチェーンに載せてきた商品」と整理できる。
なお本商品は、米国の1940年投資会社法(いわゆる40 Act)に基づく規制下ファンドであり、KYCによる投資家管理や取引制御が制度上も前提条件となっている。
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