ステーブルコイン・決済特化型レイヤー1ブロックチェーンTempoの狙い:決済大手StripeとクリプトVC Paradigmの共同プロジェクト
2025年10月31日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- Tempoの技術概要と設計思想- ガス手数料の予測可能性とステーブルコインAMMの組み込み
- 決済特化機能:ISO 20022対応・プライバシー設計・高可用性アーキテクチャ
- 初期バリデータ体制と分散化方針
 
- StripeおよびParadigmがTempoを立ち上げた狙いと役割- Stripe:ステーブルコイン実需の拡大に応じた戦略的転換
- Paradigm:暗号技術の社会実装を推進するインキュベーション
- 役割分担と組織構造:独立性を保った協働体制
 
- Tempoのユースケースと連携企業- 産業横断的なデザインパートナーとの協働
 
- ブロックチェーン基盤としてのTempoの競合優位性(他のレイヤー1との比較)- 1. 決済ニーズに特化したアーキテクチャ
- 2. ステーブルコイン特化とネイティブAMM
- 3. コンプライアンス対応とプライバシー設計
- 4. 主要企業との強固なエコシステム連携
 
- 投資家構成と出資の戦略的背景と今後の展望- フィンテックに精通した投資家陣の布陣
- 投資家の狙い──金融インフラの「次の標準」への賭け
- 今後の展望──規制対応と市場開拓の両立
 
- 総括
- 参考文献
フィンテック決済大手Stripeと暗号資産ファンドParadigmがインキュベートした決済特化型ブロックチェーン企業「Tempo」が、Thrive CapitalやGreenoaksが主導するシリーズAラウンドで5億ドル(評価額50億ドル)もの資金調達を実施しました。
このTempoは、主にステーブルコイン・決済に特化したレイヤー1ブロックチェーンです。Tempoネットワークの設計段階からOpenAI、Shopify、Visa、Anthropic、ドイツ銀行など複数の有力企業が参画しており、すでにこれらパートナー企業と連携したテストが進められているとのこと。
Tempoは、Ethereum互換の技術をベースにしながら、国際送金規格ISO 20022への対応、ステーブルコインでの手数料支払い、トランザクションの部分的秘匿など、既存金融システムとの橋渡しを意識した構成です。筆者は、使いやすく・信頼できる決済基盤の試みとして、最も現実的なアプローチの一つだろうと考えています。
なお、企業や事業体がブロックチェーン開発を進めている背景については、以下のレポートで考察しております。直接的ではないものの、Tempoに関してもこれらの文脈にあるプロジェクトであると筆者は理解しております。今回の動向を理解するうえで前提認識となるため、ご覧いただくことでより理解を深めることができます。
本レポートでは、その背景を2025年9月の発表から間もなく情報が少ないものの、公開されている情報に基いて、Tempoの技術概要、StripeとParadigmがTempoを立ち上げる狙い、ユースケースと連携企業、他の汎用L1との比較、出資背景と今後の展望について解説します。
Tempoの技術概要と設計思想
Tempoは、決済用途に最適化されたレイヤー1ブロックチェーンとして設計されています。EVM互換であり、Paradigmが開発したRust製Ethereumクライアント「Reth」を基に構築されています。これにより、Solidityなど既存のEVM開発環境をそのまま活用できる一方で、決済向けの独自機能を多数組み込んでいる点が特徴です。
Tempoは約10万TPSという高スループットを目標としており、これはVisaの主要カードネットワーク(理論上約8万TPS)に匹敵する、もしくはそれを上回る水準の高速決済をブロックチェーン上で実現することを意図しています。ただし、両者は単純な比較が困難なため、あくまで目安です。
全体像としては、以下のとおりです。
   
ガス手数料の予測可能性とステーブルコインAMMの組み込み
Tempoは、低コストで予測可能な手数料体系を備えた決済特化設計を採用しています。特筆すべき点は以下のとおりです。
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任意のステーブルコインでガス代を支払い可能
 ユーザーはUSDCやUSDTなど、保有するステーブルコインをそのままガス代に利用できるため、独自トークンを購入する必要がありません。
 
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プロトコルレベルの自動マーケットメイカー(AMM)
 ネットワークにAMMを組み込み、主要ステーブルコイン間のスワップをネイティブに実行可能としています。
 
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シームレスな通貨交換機能
 たとえば、送金者がUSDCのみ保有し受取側がUSDTで受け取りたい場合、Tempo上でUSDC→USDT変換が自動的に行われ、スムーズな決済が実現します(ガス手数料支払においても同様)。
 
こうした通貨交換をプロトコル層で実装しているブロックチェーンは稀であり、複数のステーブルコインが併存する現実環境における実務的利便性を高めています。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。

