Figureの米国IPOの意義と成長構造:RWA金融インフラ実装の現実解
2025年10月16日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- S-1(2025年8月)のサマリー
- 1. 概要:収益構造の全体像
- 2. 財務実績(2024年〜2025年上半期)
- 3. コスト構造・利益要因の分析
- 4. 顧客・市場指標
- 5. セグメント別の収益構成(S-1からの記載要約)
- 6. 業績の評価と展望
- Figure社のビジネスモデル概要
- 1. Consumer / Partner Lending(住宅エクイティ融資)
- 2. Capital Markets:Figure Connect & Democratized Prime
- 3. Registry Infrastructure:DART(Digital Asset Registration Technologies)
- 4. Digital Assets:Figure Markets & YLDS
- 5. Partner APIs:金融機関向けインフラ提供
- Figureエコシステムの全体像と成長ポテンシャル
- 総括
ブロックチェーンを用いたRWA(Real World Assets)トークン化と融資・証券化インフラを目指す企業Figure Technology Solutions(以下、Figure)は、2025年9月にナスダック市場へ新規上場を果たしました。
Google Finance(2025/10/15時点)
公開価格は1株25ドルに設定され、既存株主分を含め3,150万株のクラスA株式を売り出し、約7億8,750万ドルを調達しています。これは当初提示された価格レンジ(18~20ドル、その後20~22ドルに引き上げ)を上回る水準であり、公開価格ベースでの企業評価額は約53億ドル、上場初日の終値ベースでは時価総額が約66億ドルに達しました。
公開価格は1株25ドルに設定され、既存株主分を含め3,150万株のクラスA株式を売り出し、約7億8,750万ドルを調達しています。これは当初提示された価格レンジ(18~20ドル、その後20~22ドルに引き上げ)を上回る水準であり、公開価格ベースでの企業評価額は約53億ドル、上場初日の終値ベースでは時価総額が約66億ドルに達しました。
上場時のティッカーは「FIGR」で、公開直前には需要超過により発行株数・価格レンジが引き上げられるなど、投資家の関心は極めて強いものでした。
FigureはCoinbaseやCircleなどに続き上場企業となった暗号資産関連企業の一つです。2025年に入り米国では暗号資産に対する規制環境が徐々に好転し、大手投資家の参入も進みました。例えばヘッジファンド界の著名投資家スタンレー・ドラッケンミラー氏のファミリーオフィスがIPOで最大5,000万ドル分の株式購入意向を示していたことも報じられています。こうした背景も追い風となり、FigureのIPOは成功裏に完了しました。
以下の関連レポートでは、定点観測的に市場動向を俯瞰しており、これまでの動向を理解することに最適です。特にFigure社の業界的立ち位置への理解を深めることができるでしょう。
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こうした注目を集める背景には、Figureが単なるフィンテック企業ではなく、融資・証券化・デジタル資産をブロックチェーンで一体化した独自の事業モデルを構築している点があります。本レポートでは、ビジネスモデルと今後の展望について論じます。
S-1(2025年8月)のサマリー
ポイント
- 売上: $290M(2024)→ $191M(2025H1)
- 利益: –$12.8M → +$29.1M(黒字化)
- 収益源: 起源手数料、取引手数料、SaaS利用料、デジタル資産収益
- 成長軸: Figure Connect & DART
1. 概要:収益構造の全体像
Figureの収益モデルは、S-1によれば以下の4本柱で構成されています(Item 1. Business, “Revenue Model”節より):
-
Origination & Servicing Fees(ローン起源・サービス手数料)
- 自社または提携金融機関を通じたHELOCなどの貸出起源時に発生。
- またローンの管理・回収業務(servicing)に対して継続的な手数料を得る。
-
Capital Markets Fees(キャピタルマーケット取引手数料)
- Figure Connect上でのローン債権の販売・証券化・流通時に手数料収益を計上。
- 取引額に対して一定比率のプラットフォームフィーを徴収。
-
Technology & Infrastructure Revenue(技術提供収益)
- DART、Partner API、その他ホワイトラベル提供などB2B SaaS型の利用料。
- 継続課金モデルとしてリカーリング収益化している。
-
Investment Income & Token-related Activities(運用・デジタル資産関連収益)
- 自社保有ローンポートフォリオからの金利収入および、Figure MarketsやYLDS等に関連するトークン化資産運用益。
2. 財務実績(2024年〜2025年上半期)
営業実績概要
Form S-1の「Selected Consolidated Financial Data」によると:
出典:Form S-1/A (Amended Registration Statement, filed Aug 2025), “Selected Consolidated Financial Data” tableより筆者作成
これにより、Figureは2025年上半期に黒字化を達成しており、前年の赤字からの転換が明確に示されています。
3. コスト構造・利益要因の分析
S-1の「Management’s Discussion and Analysis (MD&A)」によると、収益性改善の主要因は以下の3点です。
-
AI・ブロックチェーンによるオペレーションコストの削減
- ローンあたりの起源コストが大幅低減。
- Servicing効率が向上し、販売・一般管理費比率が2024年の35%→2025上半期には27%へ低下。
-
プラットフォーム収益(Recurring Revenue)の増加
- Figure ConnectおよびDARTの利用増により、B2B収益が総収益の約45%を占めるまでに拡大。
- この比率は2023年の28%から上昇。
-
Figure Marketsの寄与開始
- 2024年Q4よりYLDSおよび暗号資産関連収益を一部計上開始。
- まだ全体に占める比率は10%未満だが、マージンが高く成長性があると記載。
4. 顧客・市場指標
出典:S-1/A「Business Overview」「Our Growth Metrics」節より筆者作成。
5. セグメント別の収益構成(S-1からの記載要約)
- Consumer Lending(個人融資関連): 約35–40%
- Capital Markets (Connect等): 約30–35%
- SaaS / Infrastructure (API, DART): 約20–25%
- Digital Assets (Markets, YLDS): 約5–10%
これにより、Figureの主軸がB2C貸出からB2Bインフラ提供にシフトしていることが明確です。
6. 業績の評価と展望
黒字転換は構造的改善によるもので、一過性ではない。また、B2Bリカーリング比率が急上昇しており、IPO後の安定収益源として注目に値する。
→ 成長ドライバーはトークン化資産市場の拡大とAPI利用収益。
→ 成長ドライバーはトークン化資産市場の拡大とAPI利用収益。
今後のリスク要因として、
(1) 金利上昇局面でのHELOC需要減、
(2) SECのデジタル証券関連規制変更、
(3) Provenanceブロックチェーンへの集中依存、
が挙げられています。
Figure社のビジネスモデル概要
Figureは2018年にSoFi共同創業者のマイク・キャグニー氏によって設立されたフィンテック企業であり、融資の起源から資金調達、証券化、二次市場取引までをブロックチェーン上で完結させるエンドツーエンドの金融プラットフォームを構築しています。
同社は伝統的な金融インフラを再設計し、住宅ローン・プライベートクレジット市場におけるトークン化と効率化の実装を先導しています。
1. Consumer / Partner Lending(住宅エクイティ融資)
Figureの出発点は、個人の住宅資産を担保としたHELOC(Home Equity Line of Credit)事業です。オンライン完結型のプロセスを特徴とし、申請から資金提供まで平均10日未満という業界最速水準を実現しています。
同社のプラットフォームを活用すれば、借り手はウェブ上で申請・審査・契約までを完結でき、書面・店舗・郵送を必要としません。
https://www.figure.com/home-equity-line/
Figureは自社ブランドの貸付に加え、金融機関やモーゲージバンク向けにホワイトラベル提供(Partner Lending)も行っています。提携先はFigureのシステムを自社名義で利用できるため、低コストかつ短期間でオンラインHELOC商品を立ち上げ可能です。
Figureは自社ブランドの貸付に加え、金融機関やモーゲージバンク向けにホワイトラベル提供(Partner Lending)も行っています。提携先はFigureのシステムを自社名義で利用できるため、低コストかつ短期間でオンラインHELOC商品を立ち上げ可能です。
このモデルはすでに170社超の金融機関に導入されており、rwa.xyzによれば累計HELOC発行額は160億ドルを突破しています(2025年9月時点)。プライベートクレジット市場におけるローン残高は、7割を超えています。
https://app.rwa.xyz/private-credit(2025/10/15時点)
2. Capital Markets:Figure Connect & Democratized Prime
Figureの中核をなすのが、Figure Connectと呼ばれるB2B2C型のキャピタルマーケット・プラットフォームです。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。