TRON(TRX)マーケットレポート【2025年 Q1・Q2】
2025年07月11日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- エグゼクティブ・サマリー
- TRXの価格動向と市場概況
- 価格動向
- 価格停滞背景
- プロジェクト概要
- 主なユースケース
- ネットワーク収益
- トークノミクス評価
- 技術的進展とロードマップ
- 技術進展
- ロードマップ
- 結論
エグゼクティブ・サマリー
- 2025年上半期、TRONネットワーク(TRX)はUSDTステーブルコインの決済プラットフォームとしての地位を一段と強固にしています。ネットワーク利用が高水準で推移する中、ネイティブトークンTRXは取引手数料焼却によるデフレ資産へとなり、ネットワーク収益は過去最高を記録しています。
- しかし、この堅実なオンチェーンファンダメンタルズとは裏腹に、TRXの市場価格パフォーマンスは暗号資産市場全体、および他主要L1チェーンのリターンを大きく下回りました。特に一部主要アルトコインが週次で40%以上急騰した局面でも、TRXは数%の上昇に留まるなど低調で、その要因として米国証券取引委員会(SEC)による訴訟という大きな規制上の不確実性が重くのしかかったと考えられます。
- 当該期間中に注目すべき進展は2点あり、第一に、2025年2月にSECと創設者ジャスティン・サン氏側が共同で法廷手続きを一時停止し和解交渉に入るよう求めたことで、第二に、7月上旬に発表された現実資産特化チェーンPlume Networkとの戦略的提携であり、TRON上でオムニチェーンRWA利回りプロトコル「SkyLink」をローンチするものです。
- 総じて、2025年上半期のTRONは堅調なオンチェーン収益と深刻な規制リスクという二律背反を抱えるチェーンという特性を強めています。その将来価値は、現在進行中のSECとの法的紛争の行方次第で大きく変動し得る点に留意する必要があります。
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TRXの価格動向と市場概況
価格動向
- TRXの2025年上半期の価格推移は、年初時点(0.27ドル前後)から期末時点(0.29ドル前後)への上昇率がおよそ+10%程度と推計され、市場全体の上昇局面に比べ控えめ
- 特に2025年4月~5月にかけ主要アルトコインが軒並み急騰する中でも、TRXは0.25〜0.28ドルのレンジで上値の重い展開が続き、5月には0.28ドルの水準で二度にわたり反落
- 2025年6月末時点では時価総額約250億ドル規模で世界第8位に位置付け、依然トップクラスの暗号資産としての地位は維持
価格停滞背景
- TRXの相対的なパフォーマンス低迷の背景として、市場参加者による規制面のリスク懸念が指摘されます。
- 2023年3月にSECがジャスティン・サン氏および関連企業を提訴して以来、TRXは「未登録証券」の疑いを抱えた状態となり、米国拠点の主要取引所から上場廃止のリスクが意識されてきました。
- 機関投資家によるTRXへのエクスポージャー拡大は限定的であり、強気相場時にも資金流入が他の有力アルトコインに比べて鈍かったと考えられます。
プロジェクト概要
TRONは2017年にジャスティン・サン氏によって設立され、2018年5月にメインネットをローンチしたレイヤー1ブロックチェーンです。
当初は分散型コンテンツ共有プラットフォームとして構想されましたが、現在では「分散型決済およびDAppプラットフォーム」として位置付けられてます。
コンセンサスアルゴリズムにDelegated Proof of Stake (DPoS) を採用し、ネットワーク上位27名のスーパー代表者(Super Representatives)がブロック生成と検証を担う形で高速なトランザクション処理を実現しています。
DPoSにより平均ブロックタイムは約3秒、高いスループット(数千TPS規模)が可能となっており、トランザクション手数料も非常に低廉(時に数セント程度、または無料)です。
TRONはEthereum仮想マシン互換のスマートコントラクト機能を備えており、Solidity言語で記述されたDAppが稼働可能です。
主なネイティブ資産であるTRXトークンはネットワーク手数料支払い、ガバナンス投票(ステーキング)などに利用される基軸通貨で、発行上限は無制限ですが後述のとおり現在は供給減少局面にあります。
TRX保有者はトークンを一定期間「フリーズ(ステーク)」することで帯域幅(Bandwidth)やエネルギー(Energy)といったリソースを獲得でき、それを消費することで手数料無料での取引送信やスマートコントラクト実行が可能です。
2023年以降はこうしたリソース管理を簡便化する「スマートアカウント」機能も導入され、モバイルウォレット等からエネルギーの他者への分配・委譲ができるよう技術改良が進みました。
主なユースケース
TRONは、分散型決済プラットフォームとしての機能を中心に、以下のようなユースケースを提供しています。
現在のTRONネットワークは、グローバルなステーブルコイン決済・送金プラットフォームとしての用途が際立っています。
特にテザー社の発行するUSD連動型ステーブルコインUSDTの主要流通基盤であり、2025年6月時点でUSDTの総供給の半数以上にあたる約800億ドル相当がTRON上で発行・流通しています。
これは同時点のEthereum上のUSDT供給量(約730億ドル)を上回る規模であり、TRONは世界最大のUSDTオンチェーン流通網となっています。このUSDT送金需要を支える形で、TRON上の1日あたりのUSDT決済額は平均190億ドル規模に達しており(2025年Q1時点)、新興国を中心に「仮想ドル決済ネットワーク」として機能している点が特徴です。
実際、ベネズエラやトルコ、ナイジェリア、アルゼンチンなど自国通貨の急激なインフレや信用不安に直面する国々では、モバイル端末からアクセスできるTRON版USDT(TRC-20 USDT)が事実上のライフラインとなっており、銀行口座を代替する国際送金・価値保存手段として広く活用されています。
一方で、スマートコントラクト対応チェーンとしてDeFi(分散型金融)領域やNFT/ゲーム領域のエコシステムの発展には、金額面では他のチェーンを優る面はあるものの、その多様性は限定的です。
https://defillama.com/chain/tron
代表的なDeFiアプリには貸付プロトコルのJustLendや分散型取引所SunSwap等があり、総TVL(ロック額)で数十億ドル規模の資金を集めています。
代表的なDeFiアプリには貸付プロトコルのJustLendや分散型取引所SunSwap等があり、総TVL(ロック額)で数十億ドル規模の資金を集めています。
現状においても、ネットワーク利用の大部分はTRXとUSDTを中心とした移転トランザクションが占めており、こうした決済インフラとしてのユースケースこそがTRONの強みであり差別化要因となっています。
TRXトークン自体の需要も、この膨大な決済取引を円滑化するための手数料支払い・ステーキング需要によって支えられている構図です。
ネットワーク収益
ネットワーク収益は過去最高を記録しています。
トークノミクス評価
TRXトークンは発行上限の定めが無いものの、総供給量は2025年6月時点で約947億枚となっており、近年は供給量がむしろ減少傾向にあります。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。