マイクロストラテジー(MSTR)2024年Q3 決算分析、株価のプレミアムは適正評価か過大評価か?
2024年11月09日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)
目次
- MSTR 2024年Q3決算概要
- ビットコイン保有戦略と資本計画
- 投資家の観点で見るMSTRのリスクとは
- MSTRの評価と懸念にまつわる現状整理、株価プレミアを正当化するロジック
- 総括
本レポートでは、2024年10月30日に発表されたマイクロストラテジー社(MicroStrategy)の2024年Q3決算をサマリー解説し、事業状況や投資リスクを概観します。
同社は、2024年 Q3の決算で、その独自の財務戦略とビットコインへの積極的な投資姿勢をさらに鮮明にしています。この四半期で、株式および債券の発行を通じて合計21億ドルを調達し、ビットコインの保有量を前期比で11%増加させました。
しかし、収益が市場予想を下回った影響で、決算発表後に株価は約5.9%下落しました。執筆現在は、大統領選の影響もあり、上昇トレンドに以降しています。
本レポートでは、投資家が注目するべき視点から、マイクロストラテジーの戦略とリスクについて解説します。
本レポートでは、投資家が注目するべき視点から、マイクロストラテジーの戦略とリスクについて解説します。
参考:MicroStrategy Announces Third Quarter 2024 Financial Results and Announces $42 Billion Capital Plan
Executive Summary
- マイクロストラテジー社は、今後3年間で総額420億ドル(株式210億ドル、固定利付証券210億ドル)を調達する「21/21プラン」を発表し、第3四半期にビットコイン保有量を11%増加させ、合計252,220 BTC(市場価値約160億ドル)に到達した。今後もBTC残高を増やしていく方針
- 「BTC Yield」は年初来で17.8%に達し、2025年から2027年の年間目標を6%から10%に設定。同社はビットコインを活用した金融商品や投資機会の開発、またAIを活用した企業向けアナリティクスソフトウェアの提供を進め、長期的な価値創造を目指す
- 総収益は前年同期比10.3%減の1億1,610万ドルとなり、ソフトウェア事業は苦戦している。サブスクリプションサービス収益は32.5%増加し、クラウドへの移行が成果を上げている
- デジタル資産の減損損失4億1,210万ドルにより、営業損失は前年同期の2,520万ドルから4億3,260万ドルに増加。ビットコイン価格の下落や市場のボラティリティが財務状況や株価に直接的な影響を与えるリスクが高まっている
- 同社の株価には保有ビットコイン量以上のプレミアムが付与されている現状。その正当性には議論があり、競合他社の台頭や市場の不確実性が懸念材料となる。投資家は、ビットコイン市場への高レバレッジ投資であることを認識し、慎重な評価とリスク管理が必要
MSTR 2024年Q3決算概要
ビットコイン保有戦略と資本計画
マイクロストラテジーは、2024年9月30日時点で合計252,220 BTCを保有し、その市場価値は約160億ドルに達しています。平均取得価格は1 BTCあたり39,266ドルです。同社はビットコインを「基本的な価値創造手段」と位置づけ、さらなる保有量の拡大を計画しています。
21/21プラン
特筆すべきは、「21/21プラン」と名付けられた資本計画です。
これは、3年間で総額420億ドルを調達し、そのうち210億ドルを株式発行、残りの210億ドルを固定利付証券で賄うというものです。この資金はビットコインの追加購入と「BTC Yield」の向上に充てられます。同社は、2025年から2027年にかけて年間BTC Yield目標を6%から10%に設定しており、これを長期的なビットコイン戦略の評価指標としています。
「BTC Yield」の意味合い
「BTC Yield」は、同社のビットコイン戦略の効果を測るKPIです。
2024年の年初来で17.8%の増加を記録しており、これはビットコイン保有量の増加と資金調達戦略の効果を示しています。この指標は、株主価値の増大を評価するためのものですが、従来の「利回り」とは異なり、株式発行による希薄化を考慮した増加率である点に注意が必要です。
BTCを収益源とする金融商品や投資機会の創出を目指す
さらに、同社はビットコインを活用した新たな収益源の創出にも取り組んでいます。
具体的なプロジェクトや商品はまだ公表されていませんが、ビットコインを基にした金融商品や投資機会の開発、そしてビットコインエコシステム全体での影響力拡大を目指しています。これにより、資本効率のさらなる改善を図ろうとしています。
また、AIを活用した企業向けアナリティクスソフトウェアの提供も進めており、ビットコイン保有とテクノロジーによって長期的な価値創造を目指すとしています。
資金調達と債務管理の動向
第3四半期には、マイクロストラテジーは積極的な資金調達を行いました。
ATM(At-The-Market)株式発行プログラムを通じて8,048,449株のクラスA普通株を発行し、11億ドルを調達しました。
また、2028年償還の0.625%転換社債を発行し、既存の6.125%シニア担保付き債券を5億ドル分償還しました。
ソフトウェア事業の現状と収益性
同社のソフトウェア事業は苦戦していますが、サブスクリプション収益に限っては改善が見られました。
Q3の総収益は1億1,610万ドルで、前年同期比で10.3%の減少となりました。プロダクトライセンスとサブスクリプションサービスの収益は13.6%減少、プロダクトサポート収益も8.7%減少しています。一方で、サブスクリプションサービスだけは32.5%の成長を見せており、クラウドへの移行が功を奏しています。
しかし、営業費用は前年同期比で301.6%も増加し、特にデジタル資産の減損損失が4億1,210万ドルと大きく影響しています。その結果、Q3の営業損失は4億3,260万ドルに達し、前年同期の2,520万ドルから大幅に悪化しています。
投資家の観点で見るMSTRのリスクとは
マイクロストラテジーへの投資を検討する際、最も重要なのは同社のビットコイン依存度の高さです。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。