search-icon
academy-icon

ElixirとdeUSDの概要 USDeとの比較、Basis Trading型ステーブルコインの成長余地の検討

2024年08月08日
この記事を簡単にまとめると(AI要約)

目次

  • 前提
  • ElixirのdeUSDの概要
  • USDeとdeUSDの比較、デペグ・利回り低下シナリオの検討
  • USDeとdeUSD:Basis Trading型ステーブルコインの成長余地
  • 総括

前提

Basis Trading型のステーブルコインは、デリバティブ市場でデルタニュートラルポジションを担保に発行されます。このモデルの特徴は以下の通りです。
  • ポジションの価値で裏付けることでステーブルコインのペグを安定させる
  • Funding Rate(現物価格に対して先物価格を近づける目的でロング/ショートポジションに対して課される手数料)やBasis Spread(現物価格と先物価格の裁定取引)から得られる収益をステーカーに提供する
デルタニュートラルポジションを維持することで、価格変動リスクを最小限に抑え、ステーブルコインの価値を保ちます。収益はステーキングしたユーザーが得ることができます。
現状のトレンドでは、利回りを提供する仕組みを利用して他のDeFiプロトコルとのパートナーシップを結び発行量を伸ばしています。その代表例がEthenaのUSDeです。
Elixirは、分散型のオーダーブック取引所の取引を集約して流動性を向上させるモジュール型ブロックチェーンプロジェクトです。今回、その一環としてdeUSDのコンセプトが発表されました。
本レポートでは、以下の点にフォーカスして解説を行います。
  1. Elixirが開発するdeUSDの概要
  2. USDeとdeUSDの比較とそれぞれのデペグ、利回りが減少するシナリオの検討
  3. Basis Trading型ステーブルコインの成長余地
これらの点を確認することで、読者が両者の違いを理解し、今後の成長(あるいは縮小リスク)を予測する上で参考となる情報を提供することを目指します。
なお、執筆時点では本文中のdeUSDのステーキングによるプロトコル収益は未実装であり、ガバナンストークンELXのアロケーションに関わるポイントが配布されている状況であることに留意ください。
Elixir関連リンク

ElixirのdeUSDの概要

Elixirとは

Elixirは、分散型のオーダブックやデリバティブ取引所の流動性を強化するために構築されたモジュラー型のブロックチェーンであり、コンセンサスにDPoS(Delegated Proof of Stake)を採用したネットワークです。執筆現在では、13,000を超えるバリデーターが参加しており、デイリー取引量は1,200万ドルほどです。



Elixirは複数のDEX(Vertex、RabbitX、BlueFin、Orderlyなど)と接続し、データアグリゲータを通じて取引データを収集します。
バリデータネットワークによってそのデータを検証し、異なるDEXの流動性を橋渡しするような役割を果たします。この取引は、Elixirのバリデーターによって不正防止のために検証が行われます。



執筆現在では、今後dYdX、ApeX、Hyperliquid、Synthetix、SynFutures、Aevoなどと接続される予定になっています。

deUSDの概要

deUSDは、stETHとsDAIを担保にしてETHのショートポジションを取り、デルタニュートラルポジションを維持します。
deUSDは、Elixirエコシステム内で担保として優先的に使用され、Elixirと接続した取引所でネイティブに採用されます。長期ビジョンとしては、deUSDをクロスチェーン間での複数のDEXに渡る流動性とすることが目的です。おそらく、エコシステム内の基軸通貨のように機能させたいと思われます。
次に、deUSDのコンセプトの要となる過剰担保基金(OCF:over collateralization fund)について説明します。

過剰担保基金(OCF:over collateralization fund)

OCFは、deUSDの収益的裏付けの弾力性を担う中核的機能です。
具体的には、Funding Rateがマイナスになると、deUSDの担保はMakerDAOのsDAIに移行し、安定した利回りを得られるようになります。



このレポートは有料会員限定です。
HushHubリサーチの紹介 >
法人向けプラン >

※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。